ニッポン放送「飯田浩司の OK! Cozy up!」(2月8日放送)に外交ジャーナリストの手嶋龍一が出演。北方領土問題について解説した。
安倍総理が北方領土に対して「不法占拠」という表現を使わず
「北方領土の日」の昨日(2月7日)、北方領土返還要求全国大会が都内で開かれた。安倍総理は北方領土問題の解決を含む日露平和条約締結交渉に意欲を表明する一方で、これまで盛り込んでいた「不法占拠」などの表現は使わず、ロシア側への配慮が色濃い大会となった。
飯田)これは本当に関心の高いテーマで、メールも沢山頂いています。杉並区の“あかね”さん、28歳の方から、「ロシアは北方領土を自国と信じています。日本は4島を返して欲しいという立場ですが、解決するのでしょうか。手嶋さんに質問です」とのことです。
手嶋)先月、根室にいらっしゃる元島民のご家族とお話をしましたが、「国後・択捉は返って来るのか」と聞かれました。いま歯舞・色丹については日本に引き渡される可能性はあると思いますが、現状では国後・択捉をロシアが日本にすぐ引き渡す可能性は非常に少ないと、正直に申し上げました。
そうしたなかで、安倍政権は明らかに去年と様変わりをした柔軟な優しい表現で、2月7日の北方領土の日に臨んだということになります。僕はあっと思ったのですが、読売新聞や朝日新聞のこの日の朝刊一面に、北方領土の日ということでコピーが掲載されていました。「あなたの関心が解決の後押しに。もう一度考えてみませんか、北方領土のこと」とありました。「返してくれ」とは書いていませんよね。
飯田)そうですね。
手嶋)これは明らかに政府広報ですから、政府の柔軟な姿勢と言いますか、ロシアを刺激したくない意図がありありと伺えます。一面でこの政府広報を掲載しなかったのは、産経新聞だけでした。産経新聞では一面ではなく、社会面に載っていました。産経新聞はこの柔軟路線については違和感があって、多分社内で議論があったのだと思います。
産経新聞は従来から4島一括返還という大原則に大変忠実な論調を張って来た。このように、国内に強行論はあるのですが、これが今後の交渉にどのような影響を与えるのでしょうか。
一連の大事な交渉の前に、日本側の当局者とやり取りをしました。元島民の皆さんも含めて、2島をまず返してもらい、国後・択捉については継続協議という方向について、もう少し熱心に説得してみてはどうですかと言うと、交渉当事者からすれば、国内に大変厳しい4島一括返還という強行論があるのも、ときに役立つことがあるのだと言っていました。確かに交渉事ですから、ロシア側も強硬論があってデモもある。交渉は大抵中間のところで折り合います。今回、日本側は強行論を少し畳んで「北方領土のことを考えればいい」ということで、「返還」の言葉は無い。ロシア側がこれを見たら、日本は返してもらわなくても良いのかと、引き渡しは主権を伴うかどうかはわからない、というところもあって「ああ柔軟なのか」となり、交渉の中心線がロシア側に寄ってしまう側面もあります。そのため「ロシア側を刺激しなくて良い」という安倍政権の決断が果たして吉と出るのか凶と出るのか、ここはちょっと疑問ですね。
飯田)日本人の感覚からすると刺激しないとか、穏便に済ますことで相手も譲歩してくれるだろうと思ってしまうのですが、ロシアはどうですか?
手嶋)ロシアはそんなに甘い国ではありません。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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