統計不正問題「統計とはそもそも何か」を議論すべき

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月7日放送)にジャーナリストの鈴木哲夫が出演。毎月勤労統計の不正問題について解説した。

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参議院予算委員会、統計不正問題などをめぐり与野党論戦

参議院予算委員会で昨日、毎月勤労統計の不正問題などを中心に集中審議が行われた。そのなかで野党側の「特別監察委員会が行った再調査は不十分なもの」という主張に対し、安倍総理は「更なる追加調査は必要無い」という認識を示した。

国民民主党・大塚耕平議員)いま監察委員会の委員長も秘書官から話を聞いていないということでありますので、平成27年検討会をめぐる状況についてもう1度再追加調査をすべきだと思いますがいかがでしょうか。

安倍総理大臣)当時の秘書官が問題意識を伝えた点につきましては、毎月勤労統計のサンプルによって大きく統計数値が変わることに対して、その理由を尋ねたり、あるいは専門家の意見を聞いてみてはどうか、とした当時の秘書官の対応はですね、私は至極当然のことではないかと思う次第でございます。

飯田)これについてはメールも頂いております。春日部市の主婦の方、「官邸は関与しているのでしょうか。これは会社で言うなら粉飾決算です。もし粉飾したら社長は退任です。どうなのでしょう、政権はしていないということを願いますが……」と頂きました。その辺りの官邸の関与を野党側は追及している状況ですよね。

鈴木)この問題について当初から僕は言っているのですが、どんどん矮小化されて行くのがいちばんまずいことだと思うのです。矮小化とはどういうことかと言うと、毎月勤労統計のデータを、計算方法を変えて不正に書き換えていたという問題に小さく特化しているでしょう。そうではなくて、これは政治における統計というものが如何に大事なものかということです。
戦後、吉田茂首相が「日本が戦争に突っ込んで行ったのは、統計がいい加減だったからだ」と言いました。その統計を基にアジアに進出し、あの戦争になってしまったのだと。だから本当にしっかりとした統計を作って、それを基に政治をやって行かなければいけないと言って、自分の内閣府に統計委員会というものまで作って有識者も入れて、一生懸命に統計をやったのですね。これが軽んじられているのではないか、という話なのですよ。

飯田)根幹はそこだと。

鈴木)しかもこの勤労統計以外にも、でたらめな統計がいっぱい出て来たではないですか。そういう意味では三権分立からいけば、行政の問題ですよ。安倍さんは総理で行政側にいるのだけれど、行政がやっていることは三権分立で国会が徹底的にチェックしなければいけないわけでしょう。だから国会に特別委員会みたいなものを作って、そこでしっかり関係者を呼んでこの問題にきっちりと片を付け、政治における統計は何かということを国会がやる。これが正しいやり方だと思うのです。
ところが政府のなかだけで主張させて、原因追及をやっている。案の定、1回目の調査はいい加減でした。それで再調査をさせました。そうではなくて、安倍さんのやるべきことは国会が徹底的に調べるのであれば政府として協力することです。それをまた再調査したら、委員長がちゃんと聞いていなかったなどの問題が出て来ています。政府のなかだけで再調査するのではなくて、国会のなかに委員会を作ってしっかりと対応をしないといけないと思います。与野党がせめぎ合うとか、官邸の関与があったという問題も大事ですが、そういうものもひっくるめて統計とは何かということを国会でやらなければいけないと思います。

合理化によって削られた統計部門の予算

飯田)何と言っても、問題は2004年から長きにわたっているということです。考えてみると、その辺りから政治改革というものもかなり叫ばれていたところで、予算も削られていた部分もあると。

鈴木)人員も削って、統計部門は部分によっては外注するとかね。昔は統計のプロを雇ってやったりしていたのだけれど、おっしゃるように合理化でそういう人を外して行ったり、体制の問題もありました。しかしお金が無くても統計部門は外してはいけないのではないか、ということになります。

飯田)それを采配するのが政治の決断なわけですよね。

鈴木)そういうことも合わせて、そもそも統計とは何かというところから明らかにして、再発防止のためにどうするのか。総務省に統計部門がありますが、例えば総務省ではなく吉田茂さんのように内閣府、総理直轄にするべきなのかとか。

飯田)かつては総理府と呼ばれました。

鈴木)組織的になかなか難しいところはありますが、総務省の統計委員会にそれなりの権威を持たせる仕組みを作るとか、それをやらないとだめだと思います。

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政治 衆院予算委員会に参考人招致され、答弁を行う毎月勤労統計調査問題の特別監察委員会・樋口美雄委員長=2019年2月4日 写真提供:産経新聞社

地方自治体へ同じような統計依頼が多い問題

飯田)地方の行政をやっている公務員の方に聞くと、「飯田さん、これには似たような統計が多いのですよ」と言っています。調査の依頼がいっぱい来ると。この毎月勤労統計も市町村まで下りて来て調査をするわけですが、経産省からも似たようなものが来て、厚労省、総務省からも来るのです。同じデータだから使い回せばいいのに、使い回すと法律違反だと言う。

鈴木)実は地方自治体も苦労しているのですよ。毎月勤労統計調査だって、これは実際には東京都がやるものですよね。

飯田)実働としてはそうですよね。

鈴木)東京都にしてみると、これだけなら良いのですが、おっしゃるようにあれもこれもって、地方自治体を舐めているのかと。

飯田)下請けじゃねえ! という話ですよね。

鈴木)東京都の職員に取材をしたら、さっきの話と同じことを言っていましたよ。でも統計が本当に大事ならばそれは面倒くさいとは言えないし、それなりの体制を取らなければいけない。そういう基本的な認識を1回みんなで共有してから解決に向かうのではないかと思うのですが、どうでしょうか。

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