ペットと人の両方の防災士になる! 動物看護士を決意させた保護猫の存在

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【ペットと一緒に vol.136】

ペットと人の両方の防災士になる! 動物看護士を決意させた保護猫の存在

動物看護師の村井知美さんは、専業主婦としての日々から思いがけない復職を果たし、保護猫ボランティアとして活動するようにもなりました。さらに、発災時には人も動物も守れるようになりたいと、新たな学びをスタートして防災士などの資格も取得。知美さんのこれまでのストーリーと、ペットとの暮らしで重要な防災対策について聞きました。


獣医看護師の復職が転機に

娘さんの後押しで、村井知美さんが動物看護師として18年ぶりに復職をしたのは、2012年のことでした。

「夫の海外転勤に帯同したり、2人の娘の出産や子育てでかなりのブランクがあり、最新の獣医療について行けるか不安があったんです。でも、復職してよかったです。それから世界が一気に広がって行ったので」と、知美さんは振り返ります。

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勤務先での村井知美さん

保護猫の一時預かりボランティアも始めた知美さん。「娘たちは『100匹の猫の命をつなぐことを目指そう!』と言い、預かる猫には百人一首のすべての歌にちなんだ名前を付けることにしたんです」とのこと。

現在は55匹目の預かり猫のなおきくんがいるそうで、「滝の音は 絶えて久しくなりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ」という歌の「なほ聞」の部分が由来だそうです。

「1頭目は、『秋の田の かりほの庵の(以下省略)』から採って、かりほちゃんだったんですけど、だんだんと継ぎ接ぎみたいになって来ましたね」と、知美さんは笑います。

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記念すべき第一首目から名前を採用した、かりほちゃん


地域の動物推進員に

東京都中央区に住み、区内の動物病院で働き、中央区の猫の保護活動に携わったことがきっかけで、知美さんは中央区の“動物との共生推進員”の一員にもなりました。共生推進員の活動をとおして、知美さんは次第に“ペット災害対策”に関しても真剣に考えるようになったそうです。

中央区で開催されるペット同行避難訓練などにも参加するうち、自分の犬や猫だけでなく、愛犬や愛猫を連れて同行避難する区民の方々に手助けができるようになりたいと願うようになったんです。認定動物看護師という動物のプロであり、共生推進員でもある立場として、動物だけでなく、人と動物の両方を守れる存在でありたいですね」(知美さん)。

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推進員が保護した犬を、一時預かり先に届けるために迎えに行った知美さん

その思いが芽生え始めると同時に、知美さんは迷わず行動に移しました。
「ペット災害危機管理士の認定資格を取得しようと、学び始めたんです。4級取得からスタートして約半年後、2018年の年末には無事に1級も取得しました」。

さらに知美さんは、ペットではなく人間の防災士の資格まで取得したそうです。「ペットのことをつきつめて行くと、結局は人間にたどり着くので」と、知美さんは言います。

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ミルクボランティアで育てた預かり猫


発災時にペットを守るには

知美さんは、発災時にはまず「自助」がもっとも大切だと語ります。
「自分の命を守ることが、最優先です。飼い主さんの命があってこそ、愛犬や愛猫の命を守り抜くことができるのですから。そのために、防災対策は日頃から万全にしておいてください」とのこと。

人とペットの飲料や食料の備蓄はもちろんのこと、まずは家具の転倒防止を徹底しておくことが重要だと知美さんは語ります。

「過去の大地震のときには実際に、倒れた家具の下敷きになって犬や猫が命を落としています。留守番時に愛犬を入れているサークルの場所は、大丈夫ですか? 大きな家具の下敷きになる危険性があるならば、家具に転倒防止対策をしたり、サークルの上に屋根をつけたり、サークルそのものを安全な場所に移動するなりといった対策が必要です」。

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愛犬のウッディーちゃん(ヨークシャー・テリア)

避難所に避難する際は、飼い主さんの両手が使えるリュックタイプのペットキャリーがあれば便利だとも、知美さんは教えてくれました。また、愛犬を連れての旅行先などで被災する可能性もあることも想定しておいて欲しいと、知美さんは言います。

「土砂災害、津波、豪雨災害など、いつどこで愛犬と一緒に遭遇するかわかりません。旅先での避難所の確認をはじめ、迷子札を旅行中は装着し続けたり、常備薬があれば多めに持参するなどの対策は講じておきたいですね」。

知美さんはいま、以前勤務していた動物病院などで、ペットとの防災に関するセミナーなども開催しているそうです。

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保護猫活動はずっと続けると言う、知美さん


50歳を過ぎて新たなステージに

「50歳になったら、動物の看護師は引退しようと思っていました。共生推進員や、ボランティアにも生き甲斐を感じている毎日ですしね」と、知美さん。ところが現在は、大学病院の獣医療の現場で新たなスタートを切ったそうです。

「思いがけない転職でした(笑)。手術道具を整える、技術補佐員という職種です。動物たちを触ることはない仕事ですが、私たちのような存在がないと獣医外科はまわって行きません。なので、すごく誇りを持って働いています」と、知美さんは微笑みます。

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現在の預かり猫のなおきくんの子猫時代

少し疲れて帰宅をすると、10歳になる愛犬のウッディーちゃんが駆け寄って出迎えてくれるのだとか。
「本当に、愛犬や預かり猫たちはかわいいですよ~。我が家の動物たちの顔を見ると、心の底から癒されます」。

そう語る知美さんは今後も、家庭でも職場でも地域でも、多くの人々や動物たちをサポートしながら活躍の場を広げて行くことでしょう。

連載情報

ペットと一緒に

ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!

著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。

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