愛犬の老いに苦悩して、グリーフケアのセミナーで新たな発見

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【ペットと一緒に vol.134】

愛犬の老いに苦悩して、グリーフケアのセミナーで新たな発見
筆者は愛犬の老いて行く姿を見つめていると、最近切ない気持ちになります。なぜこんな気持ちになってしまうのかや、自分と愛犬のために何かできることはないかと、グリーフケアのセミナーに参加して客観視してみることに。そこで感じた気持ちの変化をお伝えします。


桜の季節が切なくなるのは

筆者は最近、桜が咲く頃になると少し切ない気持ちになります。愛犬のリンリンが、またひとつ歳を重ねてしまう。あと何年、一緒にいられるかな……、と。

次の4月初めに14歳になるリンリンは、この1~2年でめっきり老いてしまった気がします。以前は散歩に行くと、元気が良すぎて筆者を引っ張ることもあったのに、最近は筆者のあとをチョビチョビとついて来る感じです。あまりに歩みが遅いので、筆者の7歳の娘は「チョビちゃん」などという別名で散歩中に呼んでいるほど。

もともと短脚のテリアのせいか、ホップ&ステップという雰囲気で歩くので、道行く人に「がんばれ~!」と声をかけられたりもします。飼い主としては、うれしい反面、愛犬の老いを目の当たりにしてしまうのも事実。

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ノーリッチ・テリアの13歳のリンリン

以前は散歩途中でロングリードにしてボール遊びをしたのに、最近はそれほどボール遊びに対する意欲を見せません。自宅でも、あまりおもちゃで遊ばなくなり、寝てばかりいるようになりました。

それではいけないと、脳トレのためにトレーニングを兼ねて遊ぶようにしていますが、以前より動きが鈍くなったリンリンを見ていると、かわいいなと思う反面、どうしても「リンリンはあとどれくらい元気でいてくれるかな」と考えてしまうのです。

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日向ぼっこが好きなリンリン そろそろトリミングが必要……


グリーフケアのセミナーに参加

筆者は愛犬の老いといずれ訪れる別れへの不安や恐怖を抱えていることに、自分でも気づいていました。そんなとき、獣医師の阿部美奈子氏による「グリーフケア セミナー」(2019年2月24日、東京都新宿区のアニコムホールディングスにて)が開催されると知って参加しました。

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グリーフケアセミナーのチラシの写真も印象的

“グリーフ”を直訳すると“悲嘆”ですが、阿部先生によると、グリーフとは身近に存在する喪失体験による心情だそうです。自分にとって大切なものを失ったときや、失うかもしれないと想像したときに発生する、心と体のごく自然な反応なのだとか。たとえば、愛犬の変化を感じて切なくなるとか、不安な気持ちになるとか、後悔や自責の念を抱くとか、孤独感にさいなまれるといった情緒反応です。

そう考えると、筆者はリンリンのことを考えてすでに“グリーフ”を抱えていたのです。愛犬に見られるようになった“老い”という変化が日々色濃く感じられるようになり、不安を抱いていたのです。最初の愛犬を12歳で心臓病で失ったときの悲しみを思い出し、またあのときのような苦しみが迫っているのではないかとも感じていました。

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12歳で旅立った筆者の最初の愛犬

自分自身のなかにあるグリーフの存在に気づくことが、実はとても重要だと言います。実際に筆者は「そうか。喪失を予期するからペットの生前にもグリーフはあって、私はグリーフ状態なんだ。じゃあまず、現状を受け止めてみよう」と思え、少し気持ちが楽になりました。自分のことを客観視ができて認めるだけで、不思議な安堵感に包まれたのです。


リンリンの目線で考えてみると……

あたり前に続けて来た平和な日常が変化すると感じただけでも、グリーフは誰にでも自然に生まれる。さらに、阿部先生によって、グリーフはペットにも発生していると知った筆者は、ふとリンリン目線に立つことを思いつきました。

思い起こせば、筆者は最近「あ~、リンリン。ママが玄関のドアを開けた音が聞こえてないから迎えに来てくれなかったんだね……」、「前はもっとボールで遊んだのにね、もう疲れちゃったの?」というような語りかけが多くなっていました。

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愛犬リンリンと娘犬のミィミィの写真をアレンジ

こんな後ろ向きで、ため息交じりの筆者を目の前に、リンリンはどう感じたでしょうか? 擬人化してセリフにすると、きっと「ママ……。アタチのせいでなんか浮かない顔になってる。ごめんね」などと、切ない気持ちになっているに違いありません。少なくとも、楽しい気分にはなれないはずです。もしかすると、すぐにボール遊びをやめてしまう理由も、筆者のこのような雰囲気のせいだったかもしれません。

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ゆっくり歩くリンリン

犬は飼い主のテンションに影響されやすい動物です。筆者がリンリンを老犬扱いするがために、リンリンもこれまでのようなパワーや無邪気さを発揮できなくなっていたとも考えられます。

これから、あと何年間リンリンと一緒に過ごせるかはわかりません。でも、リンリンを不安な気持ちにさせないために、そしてテリアキャラクターと呼ばれるような本来の快活さを自由に表現できるように、筆者自身も笑顔で愛犬たちに接して行こうと思います。

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数年前の桜とリンリンの写真をインスタで加工

桜の咲く頃はお出かけ日和が続きます。筆者にとっての長女とも言えるリンリンの14歳の誕生日には、リンリンの娘犬のミィミィ(筆者の次女)と、筆者の7歳の娘(3女)の3姉妹が桜に包まれている写真を撮影したいと思います。

13年前、オーストラリアでリンリンに出会えたことに感謝しながら。それがきっと、筆者と愛犬たちとのグリーフケアになるに違いありません。

連載情報

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ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!

著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。

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