人は水族館に何を見に行くのか
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黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に、水族館プロデューサーの中村元が出演。水族館プロデューサーになった経緯について語った。
黒木)今週のゲストは水族館プロデューサーの中村元さんです。
鳥羽水族館に就職して、まずはアシカとアザラシの飼育から始められたのですね。どういうことをできるようにさせるのですか?
中村)芸というよりも、お客さんにこのアシカがどんなにスゴイのかを見せるということをやればいのだと考えていました。お客さんに受けてもらわないといけないので、出て行って、すぐにトレーナーの僕が転ぶという演出をしました。そうするとドッと受けるので、つかみはOKでアシカのことを見てくれるのです。
黒木)ご自分が道化師になって、動物を立たせるのですね。飼育を3年続けられて、そのあとはマーケティングや独自の発想を生かして、鳥羽水族館を人気のある水族館にしたということですね。
中村)昔の話ですけれどね。
黒木)何年くらいで人気が出たのですか?
中村)5年目には全国の動物園、水族館で初めての広報担当というものを作って、自分で担当者になって、やりました。
黒木)そういうことが好きだったのですね。
中村)テレビの番組を作るのと同じだと思います。テレビ番組を作るときに、どんなに役に立つ内容であっても、それをみんなが見てくれなかったら意味がないですよね。まずまずのネタでもたくさんの人が知ってくれたら、いろいろなことが伝わるという意味が出て来るではないですか。同じことを水族館でもしなくてはいけないと思っています。
黒木)手掛けられた水族館はやはり盛況ですか?
中村)だいたいそれまでの3倍以上、お客さんが入っています。いちばん多くて15倍にした水族館もあります。
黒木)中村さんのなかで、発想があるわけですよね。
中村)展示の見せ方をどうすれば、お客さんが食いつくか、メディアが食いつくかを考えます。
黒木)なかに入っているのは魚ですよね。それで水槽ですよね? 照明や順番、あとは内装とか。
中村)お客さんは水族館に何を見に行くのか? みなさんは魚を見に行くのだと思うでしょう? 水族館に来ている人のほとんどは、水中世界を楽しみに来ている人たちなのです。水中世界を「水塊」と呼んでいますが、水塊は水があるだけではダメです。魚がそこにいなくてはいけない。そして光だとか、浮遊感だとか水の動きなどが感じられると、お客さんは「ああ、ここに来たかったのだ」と思われるのです。そういう水族館を作って行くと、お客さんが来てくれます。
沖縄の美ら海(ちゅらうみ)水族館に行ったことはありますか?
黒木)はい。あそこはジンベエザメを見に行こうと思って行きました。
中村)でもジンベエザメの絵を描いて、どこに目が付いているか描けますか? フワっと浮いている姿が素敵なのですよね。海のなかでジンベエザメと逢ったのと同じような感動を得られる。ジンベエザメを見に行ったのだったら、絵を描いてくださいと言ったら、どこに目があるかも全部描けますよ。でも、目がどんなものであったかは覚えていないでしょう。みんなそうなのです。
中村元/水族館プロデューサー■1980年、成城大学卒業後、(株)鳥羽水族館に入社。アシカトレーナーから企画室長、新鳥羽水族館プロジェクトの責任者をへて、副館長に。
■2002年、鳥羽水族館副館長を退任、退職。新江ノ島水族館プロジェクトのアドバイザーに。2008年まで新江ノ島水族館、展示監督。
■現在、東京コミュニケーションアート専門学校教育顧問(ドルフィントレーナー学科講師)。
ENEOSプレゼンツ あさナビ
FM93AM1242 ニッポン放送 月-金 6:43-6:49