書道の「硯」を作る「製硯師(せいけんし)」という仕事

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黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に、製硯師の青柳貴史が出演。「製硯師」の仕事について語った。

書道の「硯」を作る「製硯師(せいけんし)」という仕事
黒木)今週のゲストは硯を扱うプロフェッショナル、製硯師の青柳貴史さんです。製硯師、硯を作る人。製硯師という肩書は一般的ではないですよね。

青柳)一般的な硯職人さんは分業制で成り立っています。各砕石地、硯が取れる産地に、居を構えている。

黒木)まず石を採掘して、そしてそれを切って?

青柳)そして掘って。磨いて、それを硯にするという分業制で成り立っているのが硯職人さんの仕事になるのですが、僕の製硯師という肩書は、父が付けてくれました。それまでは「硯のお兄さん」と呼ばれていました。

黒木)硯のお兄さん、何か柔らかい感じですね。

青柳)製硯家業というものは僕で4代目になりますが、「製硯師」という肩書がついたのは僕からになります。製硯師は「一体どんな仕事をしているの?」と言いますと、先程のような分業制ではなく、一貫してすべてのことをやってしまいます。

黒木)砕石からですか?

青柳)砕石の前の段階からです。

黒木)砕石の前と言うと?

青柳)どこに石があるのかという山の調査、その硯に適した石を探しに各地に行きます。

黒木)黒ければ何でも良いわけではないのですね。

青柳)皆さん黒い石だとお思いでしょうが、この黒さは化粧仕上げして黒くなっているのです。硯というものは定義として「墨を擦り下ろすことができる石でできている道具」なのです。
硯に向いている石は、墨をよく噛んでくれないといけないので、墨との適合性があります。優れた石は地球が作った自然物で、墨を擦る部分に鋒鋩という細かいギザギザがあるのです。真っ平に見えますが。

黒木)ここに持って来ていただいた硯がありますが、原石みたいな形で、私が知っているお習字の四角い長方形の硯とはまったく違いますね。このデザインもやっていらっしゃるのですよね。

青柳)そうですね、デザインも。

黒木)ご自分で探して、これが硯に適するのではないかということで見つけて。

青柳)世界各地に探しに行きます。本場の中国もそうですし、最近ではノルウェーにも行きます。硯に適した石というものは、未知数なところもあります。「こんなところから生まれるのではないか」という場所に焦点を当てて調査をしに行く、そしてそこから石を掘り出す。それを加工して硯に仕上げるという、硯の製作全般を一貫してまず行います。浅草の僕の工房から様々な産地に赴いて、そこの石を使うわけです。
技術者であることも製硯師には求められます。美術館に入っているような文化財の硯の修復の依頼などもあります。400年前に作られた硯だったら、400年前の江戸時代の職人さんが、どのようにこれを作ったのかということを調査して、似たようにお直しする。一言でまとめてしまうと、何でもできる硯のプロフェッショナルということでしょうか。

書道の「硯」を作る「製硯師(せいけんし)」という仕事
青柳貴史/製硯師

■大学在学中に、病床に伏せていた祖父より「教えるから硯を彫れ」と言われ製硯師の道に進む事を決心、21歳で大学を中退して父親に弟子入り。
■1939年創業の書道用具専門店「宝研堂」4代目となる。“製硯の貴公子”と呼ばれ世界的にも認められる製硯師。祖父、青栁保男氏は中国で修行をして現地伝来の彫りを学び、父、彰男氏は雄勝(宮城県石巻市の雄勝硯は伝統工芸)に丁稚奉公をし、和硯の彫りも学んだ。
■製硯師として以外にも、大東文化大学文学部 書道学科非常勤講師といった教育者としての一面もあり、また定期的に自身の硯で個展をひらいている。
■オーダーメイドの硯製作だけではなく、修理・復元まで全てを手掛けている。そのため山に自ら採石に行くこともあり、どんな石が採れるのか知りたい、その石の特性を理解したいという硯への強いこだわりがある。
■硯づくりのなかで曲げてはいけないと思う精神は、山々や自然の表情を殺さないつくりを徹底すること。自分たちが石に刃物を入れるとき、自然に対する敬意を忘れないようにしている。
■2018年2月に著書『製硯師』を出版。

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