技術の伝承こそ財産~首里城の再建に欠かせない宮大工の技術
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月6日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。首里城が火災のために焼失したニュースから、文化財再建のあり方について解説した。
沖縄北方担当大臣、首里城再建へ関係省庁に協力を要請
衛藤晟一沖縄北方担当大臣は5日、大規模な火災が発生した沖縄の首里城について再建に向けた関係省庁への協力を要請した。衛藤大臣は4日、火災発生から始めて首里城を視察、早期の再建を目指す考えを示している。
飯田)10月31日に発生した首里城の火災。正殿が全焼など、7つの建造物が焼失してしまいました。
佐々木)沖縄の問題は基地問題をはじめとして、さまざまな問題を常にタブー扱いされて来ました。今回の火事は不幸な出来事ですが、これをきっかけにもう少し、右左関係なしに盛り上がるような話になって欲しいと思います。首里城は1992年に復元されましたが、丁寧に昔の古文書を調べて、戦前の首里城を忠実に再現されています。コンクリートでつくるのではなく、昔の素材でつくり直すというあり方自体は、もっと見直してもいいのではないかと思います。結局、新しい建物だから文化財に指定されていなかったわけです。世界遺産も首里城のエリア一体で、首里城の建築物そのものではありませんでした。
文化財をつくり直す技術の価値をもっと評価するべき
佐々木)日本で昔から残っているものは法隆寺くらいしかなくて、大半は建て直しているではないですか。東大寺大仏殿だって何度も消失しているし、金閣寺も昭和になってから燃えたりしていて、あらゆるものをつくり直しているわけです。もちろん古い建物は大事なのだけれど、一方で古い建物をつくり直して、木造建築の技術を残すこと自体が重要なのではないかと思うのです。金剛組という、世界最古の6世紀にできた会社が現存していて、1400年近く続いた宮大工さんの会社なのですが、お寺などがみんなコンクリート造りになってしまったから仕事がなくなって、大手建設会社の傘下に入らざるを得なくなってしまいました。これから昔の建物を木造のままにつくり直すということを続けて行けば、もう1度宮大工さんが活躍する場所が出て来ます。実は建物自体よりも、つくり直す技術のほうが無形文化財としての価値が大きいのではないでしょうか。
飯田)伊勢神宮もそうですね。
佐々木)式年遷宮で20年ごとに建て直しています。そのために常に新品だから、文化財ではないのです。
飯田)なるほど。でも、20年サイクルというのが技術伝承にはいいのですね。
佐々木)だから未だに、古代の形そのままでつくり直されているのです。あの技術の素晴らしさを日本人はもっと見直すべきだし、そこにこそ伝承して行くものがあると思います。
再建に向けた課題
飯田)瓦職人がいないことや、檜の調達先がないという問題が指摘されています。
佐々木)前は台湾から持って来たのですよね。瓦も再建では赤くしたのだけれど、つくった後で戦前に米軍が撮影した写真を見たら黒かったという。
飯田)そういったいろいろな事実も、新たに出て来たわけですね。
佐々木)そういうものを丁寧に再現して、優秀な宮大工さんを投入してつくるということは素晴らしいことだと思います。
飯田)同時に、火災の原因の知見も盛り込んで、火事に強いものをつくって欲しいですね。
佐々木)文化財ではなかったから、文化財保護法に当たらないので、スプリンクラーを設置しなかったという次元で考えて欲しくないですね。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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