現地取材からひも解く~香港市民の真意
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ニッポン放送「飯田浩司の OK! Cozy up!」(12月9日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。混乱する香港問題について、香港在住邦人への取材を交えて解説した。
香港デモ再燃か~香港市民の真意、考え方を探る
政府への抗議活動が本格化してから9日で半年を迎えた香港で、8日に大規模なデモが行われた。80万人と主催者からは発表されたが、このデモの参加者、市民の方々は本音ではどう考えているのか、その一端を現地で研究されている方に聞き取り取材した模様をリポートする。
香港市民はこの混乱をどう見ているのか
飯田)香港では、11月の流れだけでも大学の占拠が2ヵ所、山側の中文大と都心部にある理工大で占拠があった。いずれも鎮圧されて、理工大では1000人を超える逮捕者が出ています。その後に区議会選挙が行われて、民主派が大勝利を挙げましたが、それからどうなったかということを取材して来ました。いまだ閉鎖されたままの駅、中文大の最寄り駅ですが、まだ爪痕は残っていました。私自身、現地で知りたかったのは、香港市民のみなさんがこの半年間のデモをどう見ているのかということです。その辺りを抗議者や学生、若者などの広範囲にインタビューをして一連のデモを見続けて来た、中文大学で比較人類学を研究されている、石井大智さんに聞きました。この方はご自身が中文大学で研究されていて、自分の住んでいるところで学生の占拠があったわけです。その中文大、或いは理工大で包囲されているなか、学生たちに話を聞き、催涙弾から辛くも逃れたという強者でもあります。まず伺ったのは、市民の方々はどう見ているのか。その様子がこちらです。
香港政府の対応の遅れや政治力のなさが混乱を生んでいる
石井)香港はメディアの影響で、考え方の幅が非常に広く、何をもって一般市民とするのかが非常に難しい。暴力的な行為に関しては反対の人が多いのですが、その原因を抗議者に求めるのではなく、香港政府に求める人が多いのが現状です。
飯田)自分たちの要求を吸い上げるシステムがない。一方、路上で活動をすると、警察官がいきなり催涙ガスを発砲して来るというところですか?
石井)香港政府が早めに民意を汲むような対応をしていれば、このようなことにはならなかったわけです。香港政府の対応の遅れや政治力のなさが、このような混乱につながっていると考える人は多いと思います。
飯田)メディアのなかのテレビやネットとは切り分けて、新聞のなかでのデモの記事というのはどうですか?
石井)香港の新聞は、中国と資本関係を持った新聞社が多いので、支持している会社と支持していない会社であれば、程度によりますけれど、デモを支持していない会社が多いように私は思います。
飯田)テレビはどうですか?
石井)香港はテレビ局の数が多くありませんが、いちばんよく観られているテレビ局はいわゆる親中派と呼ばれていて、抗議者にとって不利な場面のみを放映していると、非難する声も聞きます。
香港メディアは中国本土に資本を握られている
飯田)世代によってメディアとの触れ方が違い、それが意見の違いにもなっているということがあります。新聞やテレビはどちらかと言えば、親中派の方が多いということもあるようですね。
須田)メディアは資本を握られていますからね。中国本土、共産党の顔色を窺ってしまう。その辺りが対応の遅れになっているのではないでしょうか。
香港の親中派はビジネスで本国とつながっているだけ~北京を裏切る可能性も
飯田)どこまで北京からの影響が直接的にあったのかということも聞いてみました。こちらです。
石井)いまの北京は、やはり香港のことを理解していなくて、同時に香港にもさまざまなセクターがあります。香港の親中派は、北京の親中派と必ずしも一緒ではないですし、香港の親中派寄りの議員と言われる人たちは、北京の親中派や愛国者と言われる人たちとはまったく違う種類の人たちです。やはり香港の文脈で理解しないと、いまの香港はわからないのではないかと考えています。
飯田)ビジネス的な面で言うと、つながりが深いと言われています。そこで仲よくしなくてはいけない人がいるということですか?
石井)そうですね。経済的利益によって結びついているので、愛国心や愛党心がベースにあるわけではないのですね。そうなると、自分たちの経済的利益が侵害されたときに、簡単に北京を裏切る可能性もあるのではないかと私は考えています。それがもしかすると立法会選挙や、行政長官の選挙に影響を及ぼすのではないかとも考えられます。
飯田)親中派と一言で言っても、中国本土にいる人たちは一党独裁を前提としていて、愛党心と愛国心が完全に重なり合っているのです。しかし、香港の人たちは基本的にビジネスでの結びつきなので、何が何でも愛国愛党ということではない。一皮剥けばひっくり返ることもあるかもしれないということです。
須田)自分自身の経済的利益について、中国本土の人たちは体制のなかでの経済的利益の訴求ということになるけれども、香港の人たちはそれを超えています。その辺の優先順位が違うのですよ。
デモが長期化して行政長官選などにも影響が及んだとき、北京がどう出るのか
飯田)今後の落としどころがあるとすれば、どういうことになるのかも聞きました。
石井)最低でも独立調査委員会を設置しないことには、抗議者が収まらないのではないかなと思っています。ただ、それさえも実現はかなり厳しいと思います。
飯田)そうすると、どこまで我慢できるかということでもあるし、まったく光がないわけではないけれど、そこに至るまでの道はかなり狭い。
石井)そうですね。ただ、逆にこのことによってデモや抗議活動が長期化すれば、最終的には完全普通選挙ではない立法会や、行政長官選にも何らかの影響を及ぼすと思われます。そこまで影響が及んだときに、北京がどういうアクションを取るのか、香港政府がどういうアクションを取るのかに、我々は注目すべきではないかと思っております。
飯田)かつて言われていた天安門事件というところからは、少し遠のいたということですか?
石井)そうですね。
飯田)最低でも独立調査委員会を作って、というところですが、警察の内部事情や昔からの黒社会とのつながりも出て来てしまうとまずいので、警察がかなり抵抗するだろうと言われています。
須田)あとはインターネットの影響ですね。デモ隊に対する過激な暴力の行使や、デモ隊に参加していない一般市民に対する暴力。これらの責任を追及し始めると、収まりがつかなくなるのではないかなと思います。それを市民はみんな見ていますから。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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