【ライター望月の駅弁膝栗毛】
東京・品川といわきを結ぶ、常磐線特急「ひたち」。
水戸・日立方面のビジネスで利用する方が多い列車ですが、福島・浜通り地方を代表する温泉地の1つ「いわき湯本温泉」へのアクセスにも重宝な列車です。
上野から2時間あまり、最寄り駅の湯本にも、毎時1本の特急「ひたち」全列車が停車。
足湯があるホームに降り立てば、フワッと温泉らしい硫黄系の香りが漂います。
いわき湯本温泉の温泉街にある「温泉神社」。
この神社の記録が平安時代の延長5(927)年に残されていることから、既に1000年以上の歴史があると考えられており、戦国時代の各領主も湯治に訪れていたと言います。
明治以降、この地で石炭の採掘が始まったことで、湯量減少を招いた時期もありましたが、炭鉱閉山後の昭和50年代以降、新源泉が開発され、豊かな湯量に恵まれています。
(参考)いわき湯本温泉旅館協同組合ホームページ
いわき湯本温泉と言えば「スパリゾートハワイアンズ」が有名ですが、じつは庶民的な公衆浴場(日帰り温泉)も魅力的です。
特に江戸時代末期の建築様式を再現した純和風の建物が目を引く「さはこの湯公衆浴場」は、大人300円と良心的な利用料金で、地元のみなさんの憩いの場になっています。
もちろん、温泉はかけ流しです。
「さはこの湯」のお風呂にも注がれている湯本温泉の源泉からは、58.3℃、ph8.0、成分総計1838mg/kgの含硫黄―ナトリウムー塩化物・硫酸塩泉が、毎分5270ℓ湧出しています。
軽めの硫黄系の香りを感じながら浸かる塩系の温泉は、よく温まり、冬場に有難いもの。
加えてこの時期、いわき湯本温泉のお宿では、脂がのった冬の魚介系の食事も楽しめます。
せっかくなら、のんびりと泊まって、温泉を満喫したいですよね!
さて、いわきの郷土料理として知られるのが、「うにの貝焼き」です。
ホッキ貝の殻に生うにを山盛りにして、炭火で焼いて仕上げると言います。
そんな貝焼きを使ったいわき駅弁といえば、「うに貝焼き弁当」(1000円)。
「小名浜美食ホテル(アクアマリンパークウェアハウス)」の製造で、貝がらを彷彿とさせる、扇形の容器が特徴です。
(参考)いわき市ホームページほか
【おしながき】
・うに飯
・煮物(帆立・人参・椎茸)
・ガリ
ふたを開けると、一面のうにの貝焼きに、磯の香りが漂ってくるかのよう。
その下のたっぷりのうに飯は、うにの出汁で炊き上げていると言います。
おかずに帆立や野菜の煮物が付いて、ガリでアクセントを付けながらいただいていきます。
以前、ご紹介した「うにの貝焼き食べくらべ弁当」(現在はパッケージ変更)は、ご飯が酢飯なのに対して、コチラはご飯でも、うにの風味がたっぷり楽しめるのがいいですね。
いわき市内には、この秋の台風や大雨で、大きな被害を受けてしまった地域もあります。
一方、いわきは、“東北の湘南”とも云われ、冬も比較的温暖な気候が魅力です。
その上、ハワイをテーマにした温泉テーマパークがありますから、これからの時期も旬!
冬は「いわき湯本温泉」を拠点に温泉でじっくりと温まって、食を楽しみながら、福島・浜通り地方をぐるっと巡ってみてはいかがでしょうか。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/