子宮頸がんワクチンはなぜ積極的勧奨が中止されたか
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月19日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。子宮頸がんワクチンの積極的勧奨の中止で死者が1万人増えるというニュースについて解説した。
子宮頸がんワクチン~接種勧奨中止で死者1万人増
北海道大学などの研究グループは18日、日本での子宮頸がんワクチンの「積極的勧奨」の中止が続いて接種率が1%未満にとどまった場合、70%に維持された場合と比べて、今後50年で死者が1万人前後多いという研究結果を発表した。積極的勧奨の再開を期待するとしている。
飯田)子宮頸がんは女性の子宮頸部にできるがんのことで、発生にはヒトパピローマウイルス(HPV)と呼ばれるものが関わり、性行為を介して感染することが知られています。特に若い20代~40代の世代で罹患の増加が著しい。
佐々木)WHOもワクチン接種をしないことによる危険性を、再三指摘しています。もちろん、一部副作用を起こす人がいるのは確かです。一方でワクチンを勧奨しない結果、死者がたくさん出ているのも事実です。
2013年に起きた相次ぐ副作用の結果から「積極的勧奨」を中止
佐々木)なぜこんなことになったのかというと、2013年にワクチン接種後、東京都内の女子中学生に副反応が出て、体のしびれなどで入院しました。その後は復学しましたが、割り算ができないなど心理的な障害が起きているという記事が出て、これが大きな契機となって一気にワクチン問題…「ワクチンはけしからん」ということにつながりました。これは日本の典型的なゼロリスク思考で、何かの対策を取ればどこかでマイナスの効果が出るとします。しかしマイナス効果があるからといって、対策をすべてやめてしまうと、もっとマイナスの効果が出ます。マイナスを全部なくすことはできません。
メディアは常に「誰が悪いか」しか選ばない
佐々木)例えば産科崩壊という有名な話がありました。産婦人科で医療過誤があり、人が亡くなったことを批判して大報道した結果、その地域に産婦人科がなくなってしまったという問題が過去に起きました。医療過誤は常に、何%かの確率で起きます。それを過剰に批判しすぎるとみんなが委縮してしまって、真っ当な医療さえもできなくなってしまいます。そこはバランスを考えなければなりませんが、日本のメディアはそう考えません。新型コロナウイルスの問題でもそうですが、何かが起きた場合、それにはいろいろな原因があります。人災の問題であっても、問題を解決するためには、その構造を改修するという方向に行かなければならないのに、日本のメディアは常に悪人を見つける方向に行きます。今回のコロナウイルスでも誰が悪いのか、厚生労働省なのか安倍政権なのかということをやっています。それでは問題は解決しない。こういう問題が起きないようにするには、どうすればいいのかを考えなければなりません。
飯田)今度は子宮頸がんワクチンを打たないリスクというのも、同じところに並べて考えなければなりません。
佐々木)1万人の死者が出るのと数人の死者が出る可能性、もちろんどちらも大変なことですが、社会としてどちらかを選択しなければいけません。
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