報道の世界、その裏側では何が起こっていたのか…
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【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第781回】
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。
今回は、2月21日から公開の『スキャンダル』をご紹介します。
ベテラン女性キャスターがオーナーを告発する!?
アメリカで視聴率NO.1を誇るテレビ局・FOXニュースで、2016年に実際に起きたスキャンダルの裏側を描いた映画『スキャンダル』。
FOXニュースの元人気キャスターが、“テレビ界の帝王”と呼ばれた権力者から受けたセクハラを告発したことを発端に、大物の提訴に揺れるテレビ界の様子と、その衝撃の全貌を暴いた野心作です。
FOXニュースの元・人気キャスター、グレッチェン・カールソンがクビを言い渡された。テレビ界で絶大な権力を握るCEOロジャー・エイルズの誘いを断ったことから、視聴率の低い番組枠に異動させられ、干された挙句の出来事だった。
グレッチェンはロジャーを相手取り、セクハラ裁判を起こし、局内は騒然となる。看板番組を背負う売れっ子キャスターのメーガン・ケリーは、自身の成功までの過程を振り返り、心中穏やかではなくなっていた。
一方、メインキャスターの座を貪欲に狙う若手キャスターのケイラ・ポスピシルは、ロジャーに直談判するチャンスを伺っていて…。
メーガン・ケリー役にシャーリーズ・セロン、グレッチェン・カールソン役にニコール・キッドマン、そしてケイラ・ポスピシル役にマーゴット・ロビーと、物語の核を握るキャスターをハリウッドを代表する大物女優たちが熱演。
なかでも、実在の人物を演じたシャーリーズ・セロンとニコール・キッドマンは、本人さながらの瓜二つなビジュアルで観客を驚かせます。
特殊メイクを担当したのは、第92回アカデミー賞において、メイクアップ&ヘアスタイリング賞に輝いたカズ・ヒロ(辻一弘)。彼にとっては『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』に続く、2度目のオスカー獲得となりました。
シャーリーズ・セロンをメーガン・ケリーに“変身”させるため、カズ・ヒロ氏が特にこだわったのは、何と鼻の穴。メーガン・ケリーの大きな鼻腔を再現するために、特殊メイクチームは顔全体の印象を大きく左右する鼻栓を制作。シャーリーズ・セロンの鼻内部の鋳型を取り、それをコンピュータに取り込み鼻栓をデザインしたとのこと。
さらにコンタクトレンズや鼻の下、下あご、両側のエラのピースを付けることで、メーガン・ケリーの家族でさえも思わず二度見してしまうほど酷似の特殊メイクが完成したのです。
…と、そんな話を聞いてしまうと、映画を観るときにシャーリーズ・セロンの鼻の穴にばかり注目してしまいそう?!
いやいや、トランプ政権とメディアとの関係性や、決して報道されることはないパワハラやセクハラの実態など、いままさに問題となっているトピックが見事に盛り込まれた、本年度必見の傑作となっています。
『スキャンダル』
2020年2月21日(金)からTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
監督:ジェイ・ローチ
脚本:チャールズ・ランドルフ
特殊メイク:カズ・ヒロ(辻一弘)
出演:シャーリーズ・セロン 、ニコール・キッドマン、マーゴット・ロビー 、ジョン・リスゴー、ケイト・マッキノン
©Lions Gate Entertainment Inc.
公式サイト https://gaga.ne.jp/scandal/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/