ポップな笑いに満ちた、異色のナチス映画
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【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第763回】
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。
今回は、1月17日から公開の『ジョジョ・ラビット』をご紹介します。
いかなる困難のなかにあっても、人生は希望と喜びに満ちている!
第二次世界大戦下のドイツ。立派な兵士になることを夢見て、青少年集団「ヒトラーユーゲント」に入団した10歳のジョジョだったが、訓練では失敗ばかり。それでも空想上の友だちであるアドルフ・ヒトラー総統に励まされながら、奮闘する毎日を送っていた。
ある日、母ロージーと2人で暮らす家の片隅に、ジョジョは小さな隠し部屋を発見する。しかもそのなかには、見知らぬ美少女の姿が。彼女は、ユダヤ人のエルサ。母親がこっそりと匿っていたのだ。
これまでユダヤ人は“最大の敵”であるとか“下等な生物”とも教えられて来たジョジョは、パニック状態に。しかし同じ屋根の下で過ごすうちに、聡明でユーモアにあふれたエルサに次第に惹かれて行き…。
世界中から注目を集める「第92回アカデミー賞」では、作品賞、助演女優賞(スカーレット・ヨハンソン)の主要2部門をはじめ、脚色賞、編集賞、美術賞、衣装デザイン賞と、見事6部門にノミネート。“大本命の1本”として話題騒然の『ジョジョ・ラビット』が、オスカー発表を前に、日本でも公開となりました。
監督・脚本を手がけるだけでなく、ジョジョの空想上の友人アドルフ・ヒトラー役まで演じたのは、タイカ・ワイティティ。『マイティ・ソー バトルロイヤル』では、アクションとユーモアを絶妙に織り交ぜたストーリーテリングで熱狂的な人気を獲得。いまもっとも勢いのあるクリエイターのひとりです。
ナチスを題材にした作品でありながら、淡い恋物語を絡めたポップなテイストは意外性に満ちており、さすがワイティティ監督! といったところ。
ジョジョ役には、これが映画初出演となるローマン・グリフィン・デイビス。ユダヤ人少女を自宅に匿い、ナチスという腐敗した権力に抗うジョジョの母親ロージー役は、スカーレット・ヨハンソン。
そしてジョジョの人生を大きく変えるユダヤ人少女エルサを演じたのは、ニュージーランド出身の若手女優トーマシン・マッケンジー。魅力的なキャラクターにチャーミングなキャスト陣が扮しています。
重いテーマを軽快に描きながらも、戦争の悲惨さや残酷さが伝わって来る1作。相手を知ろうとしないことや周囲の主張を盲目的に受け入れてしまうことが、“世界の歪み”を生み出す一因ではないか…。そんなことに改めて気づかされる人も多いのではないでしょうか。
タイカ・ワイティティ監督独自の平和へのメッセージを、受け止めて。
『ジョジョ・ラビット』
2020年1月17日(金)から全国ロードショー
監督・脚本・製作・出演:タイカ・ワイティティ
出演:ローマン・グリフィン・デイビス、トーマシン・マッケンジー、レベル・ウィルソン、スティーブン・マーチャント、アルフィー・アレン、サム・ロックウェル、スカーレット・ヨハンソン
(C)2019 Twentieth Century Fox Film Corporation and TSG Entertainment Finance LLC
公式サイト http://www.foxmovies-jp.com/jojorabbit/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/