ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月21日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。ダイヤモンド・プリンセスの乗客だった日本人の80歳代の男女2人がウイルスに感染し死亡したニュースについて解説した。
新型肺炎でクルーズ船乗客の80代の男女が死亡
厚生労働省は20日、新型コロナウイルスの集団感染が起きているクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客だった日本人の80歳代の男女2人が、ウイルスに感染し死亡したと発表した。亡くなったのは東京都に住む84歳の女性と、神奈川県に住む87歳の男性で、いずれも入院先で20日の朝、死亡が確認されたということだ。死因は2人とも新型コロナウイルスによる肺炎と見られていて、ダイヤモンド・プリンセス号の乗客が新型肺炎で亡くなったのは初めてとなる。
飯田)クルーズ船から搬送された病院で亡くなりました。
宮家)ご冥福をお祈りいたします。
飯田)クルーズ船のなかでの対応はどうだったのかということが言われています。
自分はやらないのに批判することは誰でもできる~厳しい条件のなかでの苦渋の選択だった
宮家)私がこれを見ていて思ったことは、結果がこういう形になっているのですから、批判があるのは当然だと思います。しかし、あえて言いたいことが1つあります。それはアメリカンフットボールの言葉なのですけれど、「マンデーモーニング・クォーターバック」という言葉があります。普通、アメリカのフットボールの試合は日曜日の夜に開催されます。翌朝、振り返って…マンデーモーニングですよね。クォーターバックはボールをパスする人で、ゲームの中心になる人です。マンデーモーニング・クォーターバックというのは、「昨日のあれがダメだったのだ、あの人がダメだったのだ」と、自分はやらないのに批判をする人のことです。それはそれでゲームですし、フットボールの話ならいいのです。しかし、今回はできるだけフェアに考えなくてはいけないと思います。「それでは、マンデーモーニング・クォーターバックさん、あのときあなたがあの客船の中にいたら、あなたの言う通りできたのですか?」と言いたい。乗客を船から下ろすと言ったって、当時は検査ができなかった。検査できないのに下ろしても同じことでしょう。それに彼らの隔離場所をどこにするのかなど、いろいろな物理的限界があったと思います。それでいて検疫自体はは2週間やらなくてはいけないとなれば、あれは苦渋の選択だったのだと思いますよ。
飯田)受け入れ施設を探そうにも、ホテル三日月で200人に満たなかったけれどもあった。その15倍です。
行政と政治は違う~政治はあくまで結果が伴わなければいけない
宮家)しかも、どういう人たちかわからない3,700人がいる。それをすべて検査し隔離するのはあの時点では無理だとなりますよね。いろいろな考え方がありますが、私は行政と政治は違うのだと思っています。行政は法律通りやればいいのです。「2週間隔離。できることはやるけれど、できないことは仕方ない」。そして専門家は一生懸命やりました。検疫の担当の方は、徹夜で本当によくやったと思います。しかし、行政だけではダメなのです。行政的に正しくても、政治というものがあって、政治は結果責任だから、どんなに一生懸命やろうが、結果が出なければダメだということになるのです。そう考えると、どのような形で何をするべきだったのかということは、簡単に批判できるものではない。一方では正しい批判をきちんと受け止め、次回は絶対にこのようなことが起きないようにしなければならない。この2つをやって、はじめて意味があるのだと思います。
非常事態では違うやり方もあっただろうが、悪者探しをしてはいけない
宮家)単なる批判で終わってしまうのなら、あまり意味がないと思います。もちろん関係者の方、お医者さんが中心にやられたのかもしれないですが、そうしたら当然、専門家だからきっちりとやらなくてはいけないと思うかもしれない。しかしこのような非常事態では、もしかしたらもう少し緩く、柔軟に、臨機応変に、場合によっては法令すれすれまでのことも含め、いろいろなことを考えなくてはいけない、ということもあり得たかもしれない。それが本当に現場の専門家の人たちだけにできるのか、いろいろ問題があると思います。
飯田)事態は進行している最中です。ここで悪者探しが始まると、いちばん痛むのは現場です。それだけは避けなくてはいけません。
番組情報
忙しい現代人の朝に最適な情報をお送りするニュース情報番組。多彩なコメンテーターと朝から熱いディスカッション!ニュースに対するあなたのご意見(リスナーズオピニオン)をお待ちしています。