「ダイヤモンド・プリンセス」を入国させた政府の大きなミスとは
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月26日放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。新型コロナウイルス対策の基本方針を政府が発表したニュースについて解説した。
新型コロナウイルスの感染拡大対策、政府が基本方針を決定
安倍総理)政府においても本日から率先して取り組みを開始しましたが、企業や団体におかれては、時差出勤やテレワークについて強力に推進いただくようお願いいたします。
政府は25日、新型コロナウイルス対策の基本方針を発表した。現状については「一部地域に小規模な集団感染が把握されている状態」と分析。患者の増加スピードを可能な限り抑え、重症者の発生を最小限に食い止めるとしている。
飯田)政府の基本方針が25日に出されました。
高橋)最初に新型コロナウイルスの話題が出されたのは、1月20日くらいですかね。そのときに隔離が必要だと強調しました。
1月28日に即日に隔離するべきだった
飯田)1ヵ月以上、時間軸がずれていますね。
高橋)ずれています。いちばん重要なのは、人の移動を制限することです。私はこれを言ったつもりでした。そのあとに、感染症の指定の隔離を1月28日にやったのですが、即日施行しなければいけませんでした。10日間の猶予を持ったのです。あのように猶予を持たせると、防ぐことができないのです。日本の水際はQICという言い方をします。海外から帰るときにどこを通過したかを見ればいいのですが、いちばん最初はQなのです。Qは検疫です。
飯田)いまだとサーモグラフィで、マットの上を通過してくださいねというところ。
高橋)次がI、イミグレーションで入国審査です。そして最後がC、カスタマーで税関です。「輸入品があったら税金を払ってください」と言うところです。海外から入って来るときはQICで、日本から出て行くときはCIQで、逆です。
飯田)流れが逆になるから。
検疫で止めなければ水際で防ぐことはできない~1月28日にやっていればクルーズ船は入国できず、香港でとまっていたはず
高橋)QICにおいて、Qは厚生省の管轄です。動物は農水省ですが。Iは法務省、Cは財務省という、3つの省庁でやります。この順番が重要で、QをきちんとしないとIとCができません。Qで入って来てしまうと、Iのところで止めるのは大変です。
飯田)そうですよね。Iの部分はパスポートに誤りがないか、その人がリストに入っていないかなどを調べるものであって、目の前の人の健康状態までは入国の法務官は調べませんよね。
高橋)調べません。だからQのところをきちんとやるべきで、1月28日の指定感染症であれば、本来なら1類にします。1類にすると、隔離しなければいけないので入れません。1月28日の閣議決定のときに大きなミスがあったということです。間があったからQのところが緩かった。10日間の猶予のために、Iは10日間は何もないと思って、クルーズ船を入れてしまったのです。1月28日にきちんとやっていたら、クルーズ船は入国ではねられるはずでした。クルーズ船自体はイギリス船籍なので、国際法で考えると所管はイギリスになるため国外になります。
1月28日に指定感染症の閣議決定をしなかったのは大きなミス
飯田)特に、公の海にいる間は。
高橋)基本は国外になります。香港から出たでしょう、だからイギリスと香港で話し合って、たぶん香港にとまっていたはずです。日本人が多いという話がありますが、日本のチャーター船で日本人だけ救出する。これが普通です。
飯田)1月28日の時点で指定が決まっていれば、沖縄にも入って来ませんよね。
高橋)「香港でとめよう」という話になって、日本人のためにチャーター船を出します。それで日本人だけ連れて帰ります。指定の閣議決定のところを間違えたので、みんな入って来てしまいました。あれは大ミスですよね。今回も日本国内で、862人とマスコミは報道していますが、クルーズ船は本来なら国外扱いです。
飯田)そうですよね、WHOも。
高橋)ですから日本は171人というのが正確な数字です。ただ日本で862人と報道するから、そのまま海外も報道しています。だから入れてしまったのがミスですね。報道してしまう気持ちはわかりますが、本来は違う話です。
感染研に届いた検査キットについての質問に答えられなかった加藤厚労大臣
飯田)あとは、検査キットの容量の話です。海外からもキットが送られて来ているという話があって、昨日(25日)の衆議院予算委員会の分科会のなかで、このようなやり取りがありました。
西村議員)海外から日本に検査キットが届けられた、それも感染研に届けられたという情報があります。この事実関係について教えてください。
脇田)中国大使館を通しまして、中国から検査キットを受け取りました。
西村議員)いまそれはどういう状況になっていますか?
脇田)性能試験を実施して、その結果を厚生労働省に報告したというところです。
西村議員)大臣、その結果を受け取ってどうされますか?
飯田)ここで答弁が立ち往生して、速記が止まったということです。ちなみに質問していたのは立憲民主党の西村智奈美議員で、答えていたのが国立感染症研究所所長の脇田さんです。感染研にキットが届き、脇田さんがその性能試験を行い、厚生労働省に報告した。その後、厚労省がどうしたのかを聞くと答弁が止まり、キットが届いただけで検査としては完結しない、試薬などの話もあるというような答弁がありました。
検査キットが届いたからすぐに検査ができるというものではない~秘書官が大臣に最初にレクチャーすべき案件
高橋)それを大臣が答弁できないのは問題です。検査キットが届いたから、すべてできると思う人がいますが、キットというのは料理で言う材料のようなものです。それをどう調理するかは別の話です。いろいろな国で簡単にできるものがあると言いますが、そんなことはありません。そういう話がテレビでよく出ますけれど、「それは違いますよ」といちばん最初に秘書官がレクチャーすべき案件です。
飯田)「キットだけ届いてもダメです」と。
高橋)はっきり言わなければダメでしょう。だから厚労省のトップレベルの秘書官でも混乱しているのでしょうね。大混乱していますよ。
飯田)秘書官のところには、いろいろな部署から上がって来る情報が集められるのですよね。
高橋)来るのですけれど、それを取捨選択して、いちばん質問が出やすいものから大臣にレクチャーして行きます。私が見る限り、検査キットの話は優先度が高いです。これでみんな「できるのでは?」と思いますが、それだけで検査は完結しません。テレビではその説明がないから、簡単にできるとみんな思ってしまうのです。
飯田)そういうイメージが広まっている。
高橋)「材料だけあっても料理はできないでしょう?」というような比喩を使います。そういう言い方をして、大臣にわからせてあげないといけないのだけれど、ここで答弁できなかったということは、だいぶ混乱しています。こういうときに大臣は意思決定をきちんとできませんよ。頭がパンパンになってしまっているのでしょう。
飯田)しかし、この状態で司令塔は厚生労働省。これはどうなのでしょうか、官邸で「俺がやる」というようなことは、制度的に難しいのですか?
高橋)今回の基本方針のときに、中国のある省では「日本からの流入者を入れない」という話になっています。山東省のある市ですが、逆でしょう。それなら日本も全部、入国禁止だとするべきです。オリンピックを考えたら、そうした方がいいです。これは政治判断でやるということも可能です。それにしても、検査キットの話を大臣ができないとは驚きました。
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