新型コロナウイルスへの不安表す株価の下落~東日本大震災並みの下押しの可能性も

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ニッポン放送「ザ・フォーカス」(2月25日放送)に中央大学法科大学院教授・弁護士の野村修也が出演。日経平均株価の大幅下落について解説した。

新型コロナウイルスへの不安表す株価の下落~東日本大震災並みの下押しの可能性も

日経平均株価 新型肺炎感染拡大で世界経済への影響懸念で一時1,000を越える大幅下落~ 取引開始直後、1,000円以上急落した日経平均株価を示す株価ボード=2月25日午前、東京都中央区 写真提供:産経新聞社

日経平均株価が大幅に続落~4ヵ月ぶりの安値

連休明け25日の東京株式市場は、新型コロナウイルスの感染拡大で世界景気が悪化することへの懸念が強まり、日経平均株価は急落した。日本政府の対応への批判も広がり、下げ幅は一時1000円を超え、終値は先週末と比べて781円33銭安の2万2605円41銭。2019年10月以来、およそ4ヵ月ぶりの安値となった。

森田耕次解説委員)中国が発生源の新型肺炎がイタリアやイランでも拡大して、世界経済へ深刻な影響を及ぼしかねないとの見方が市場に広がりました。日経平均株価の下げ幅は一時1000円を超え、およそ4ヵ月ぶりの安値。不況や国際的な危機に強い国債や金に投資資金が流れたと見られております。株安、経済的な影響について経団連の中西会長は25日の記者会見で次のように述べています。

中西会長)株式の相場はこういうことにものすごく敏感だなということを改めて再認識したというのが正直なところで、ここまで下がるのは予想を超えた下落だと感じています。これも、これからのウイルスの広がり具合によるだろうと思っています。あまり下がったことにリアクションを取っても何ともならないことなので、落ち着いて見るしかないと思っています。

森田)一方、菅官房長官は25日の記者会見では経済への波及懸念が強まっていることについて「すでに緊急対応策をまとめたところだが、さらに状況に応じて躊躇なく対策を講じていく」と述べています。一方で、「日本経済が緩やかな回復基調にあるという認識は変わっていない」との分析もしています。ただ、24日に番組に出ていただいた第一生命経済研究所主席エコノミストの永濱利廣さんは「この自粛風評被害が拡大すると名目GDPを2兆9000億円程度押し下げる可能性がある。東日本大震災並みの経済的な下押しになる」とおっしゃっていたのですが、野村さんはどのようにご覧になっているでしょうか。

野村)1つはアメリカの株高がややバブルだった部分があって、今回のことをきっかけに調整が入っている面はあると思っています。FRBが何とかしてくれるだろうという頼みの綱もなくなって、そこでアメリカの株価が少し下がると、世界の株は連動していますから日本の株がこういう形になるのは確かです。今回いちばん気になるのは、実体経済に対する不安感が足を引っ張っているということです。国際情勢が戦争などによって不安感が出てきて売るということであれば、お金の動きが需給バランスを崩して株価に影響している面も出てくるのですが、今回みんなが見ているのはウイルスの影響で企業活動が縮小することへの不安感が本当の意味での株安を招いている可能性があるので、厳しいと思います。

新型コロナウイルスへの不安表す株価の下落~東日本大震災並みの下押しの可能性も

新型コロナウイルス感染症対策本部で発言する安倍晋三首相(中央)=2020年1月30日午後、国会内 写真提供:産経新聞社

今後の経済への不安が表れている

森田)中国経由のサプライチェーンと言われる国際的な部品の調達・供給網も断たれるような状況、インバウンドと呼ばれる日本への観光客も減って、観光、輸送、小売りなどの業界からも悲痛な声が漏れてきています。さらにこれからイベントが中止になって外出も控えられてくると、個人消費がどんどん冷え込むのではないかという不安があります。

野村)株は基本的に連想ゲームのような形になっていて、将来起こることをいま織り込んでいるわけですよね。そのなかで、例えば自動車について生産規模が縮小せざるを得ない、工場が閉鎖するのではという話があります。さらに、iPhoneのようなものについて、アップル社が先行き不安だということを示しているわけです。こういうことは、部品を提供している国々にとってみると、大きな企業に連なっているさまざまな企業が大きく影響を受けることになります。そこにどうやって対策を打っていくのか。ここで日本経済を破綻させるわけにはいきませんから、経済政策としては何らかの大規模なテコ入れをしなければいけないということですよね。

新型コロナウイルスへの不安表す株価の下落~東日本大震災並みの下押しの可能性も

新型肺炎の流行を受け大阪市中央区の観光地周辺ではマスクを付けた観光客の姿が目立った=2020年2月2日午前、大阪市中央区 写真提供:産経新聞社

学校の休校など検討を要請~日常生活にも影響広がる

森田)生活面では、学校などの対応です。25日、萩生田文部科学大臣は同じ市町村の学校で感染が拡大した場合には、患者がいない学校でも休校や学級閉鎖の検討を要請するということで、25日中に都道府県の教育委員会に伝達したようです。

野村)とにかく、学校は危ないのです。集団行動ですから、密着したところでいろいろな活動をします。学校をどうするかということはとても重要です。イベントであれば、自分から参加しないという選択肢があります。しかし、学校は義務教育なので行かなければいけないということになっています。閉鎖してもらわないと、子どもたちは行かざるを得ないわけです。そこは行政、教育委員会の判断ですから、比較的広域で閉じた方がいいと思います。

森田)しかし、ちょうど卒業式や入学式のシーズンに被ってしまっているのですよね。

野村)東日本大震災のときには、卒業式をやらなかった大学が多いのです。いまは「あのときには入学式、卒業式がなかったね」ということが思い出話になっているところもあるので、やらなければいけないという気持ちはわかるのですが、とにかく人命第一。あるいはウイルスが拡散することを防止することを第一に考えるべきだと思います。

森田)国土交通省はテレワークや時差出勤の呼びかけを全国の鉄道会社にし始めたようです。

野村)私の周りには「1人テレワークでサボりたいな」と言っている人がけっこういます。でも、テレワークを実施するためには、そのシステムがちゃんとある会社じゃなければできません。

森田)セキュリティの問題もありますからね。

野村)いろいろあるので、情報を持ち出すのも難しいのです。その辺りの準備が整っているところはテレワークを推奨して欲しいと思います。

番組情報

ザ・フォーカス

火曜〜木曜 18:00-21:20

番組HP

錚々たるコメンテーター陣がその日に起きたニュースを解説。佐藤優、河合雅司、野村修也、山本秀也らが日替わりで登場して、当日のニュースをわかりやすく、時には激しく伝えます。
パーソナリティは、ニッポン放送報道部解説委員の森田耕次。帰宅時の情報収集にうってつけの番組です。

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