習近平氏の来日~日本へ来るも地獄、来ないのも地獄である理由
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月28日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。中国の外交トップである楊潔篪共産党政治局員の来日について解説した。
中国の外交官が安倍総理らと会談へ~焦点は習近平氏の訪日か
外務省は27日、中国外交トップの楊潔篪共産党政治局員が、28日~29日にかけての日程で来日すると発表した。北村国家安全保障局長と東京都内のホテルで会談し、4月上旬に予定している習近平国家主席の国賓での来日について協議するとみられている。また楊氏は安倍総理を表敬訪問し、茂木外務大臣との会談も予定している。
飯田)中国では武漢だけでなく、新型コロナウイルスが拡散しています。
このタイミングで習近平主席の来日は日本にはいいチャンス
宮家)国内でも、キャンセルしろという声がないわけでもない。でも私は、これは逆にいいチャンスだと思っています。習近平さんは中国国内でも非常に苦しいし、国際的にも苦しい立場です。日本に国賓として来るという話が動いていて、しかも日中間で第5番目の文書を作るとか作らないとか言っている。当然、天皇陛下にもお会いする。私が安倍総理ならば、いままで言いたかったけれど言えなかったことまで全部中国に言います。「香港を何とかしろ、ウイグルを何とかしろ。人権を守れ、情報公開をしろ、何だあのコロナウイルスは」と。そういうことを言いたい放題に言います。すると、向こうは「うーっ」となるわけです。「陛下と食事したいのでしょう。だったらちゃんとやれ」となるので、圧倒的にこちらが有利なのです。嫌なら来なくていいよと。そのなかで、楊潔篪さんが来ます。そして日本の国家安全保障局長と会う、これは普通のことですけれどね。こういうときに、いま申し上げたようなことをギリギリとやって、少しでも譲歩させる、政策変更をさせるというのがあるべき姿だと思います。そうであれば、こちらからキャンセルする必要はまったくないと思います。
日中経済パートナーシップ協議などの会議が延期~事務的なレベルでの積み上げが困難に
宮家)ただし、このニュースのなかで気になるのは、来日の準備の一環として両国政府が今月(2月)下旬に予定していた、日中経済パートナーシップ協議などの一連の会議が延期されたことです。協議ができないというのは、文言が詰まらないということです。そうすると、いますぐに中止や延期ということにはならないかもしれないけれども、では中国が望んでいる文書の作成はどうするのかと。パートナーシップ協議ができなければ文言が詰められないですからね。ドタバタで詰めることは不可能ではないけれど、中身のないものになってしまう。そういうことを考えると、事務レベルの作業の積み上げは難しくなるのではないかと思います。
飯田)中国という国は、中身がスカスカの状態でも来るとなったら来るのか、それとも中身が詰まっていなければ延期にするのですか?
習近平国家主席にとっては日本に来るも地獄、来ないのも地獄
宮家)それは習近平さんに聞いてほしいのですが、私が彼だったら自分の政治的立場、もしくはリーダーとしての権威や中国の面子が侵されないのであれば、来たいでしょうね。来ることによって何らかのメリットがあれば、なおさらでしょう。けれど、メリットを感じなくなる可能性もある。「何でこの時期に行って、こんな中身のない協議をするのか。中国で人がたくさん死んでいるのに」という批判が中国国内で出かねない。今の中国ではそんなことは簡単には起きないけれども。そんなことを書いたらすぐに削除されてしまいますからね。でも、みんな内心はそう思っているかも知れません。習近平さんにとっては、来るも地獄、来ないも地獄でしょうね。
飯田)日本としては、ここでガンガン攻めて「尖閣にも来るな」とか。
宮家)お手並み拝見ですよ。もっとも中国が「わかりました。尖閣には行きません」などと言うわけはない。しかし、こちらも言いたいことは言うべきです。
飯田)文言も詰まらず、メリットも感じなくなったら、中国から降りますか?
日本側に断って欲しい習近平氏
宮家)ここが難しいところで、彼が自分からやめると言ったら、あれだけ宣伝しておいて面子丸潰れではないですか。だから日本側に断ってほしいのです。でも、こちらが断る必要はないわけです。だから今回の協議では、「どっちが先に言い出す? どうする? 同時に言う?」という話になっていないことを祈りますよ。ただ、すべての可能性を考えなければならない時期ですから、そういうことも含めて率直な意見交換をした方がいいと思います。
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