ニッポン放送「ザ・フォーカス」(3月5日放送)に元外務省主任分析官・作家の佐藤優が出演。新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正案成立に向けた動きについて解説した。
特措法改正案、3月13日にも成立
自民党の森山国会対策委員長と、立憲民主党の安住国対委員長が5日、新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けた新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正案について、12日に衆議院を通過させることで合意した。翌日の13日にも成立する見通し。
森田)5日も新たに横浜市に住む男性会社員の感染が確認されました。人工呼吸器を装着しており、重症ということです。また、滋賀県では大津市に住む60代男性の感染が確認されました。滋賀県内での感染確認は初めてで、これで近畿地方の2府4県のすべてで感染が確認されました。北海道札幌市では新たに感染者が1人確認され、北海道内の感染者は83人に上っています。新潟市でも市内在住の70代女性、大阪府在住で実家が京都府内にある30代の男性も新たに新型コロナウイルスに感染ということで、各地での感染がおさまっているとは言えません。こうしたなか、自民党の森山国会対策委員長と立憲民主党の安住国会対策委員長が会談しました。新型コロナウイルス感染拡大防止に向け、新型インフルエンザ等対策特別措置法を改正するということで、11日に衆議院の内閣委員会で審議をして12日に衆議院本会議で採決、通過させようということで、政府は10日に閣議決定をして改正案を国会に提出するようです。与党としては13日の金曜日に成立へ向けて調整を急ぐということですが、改正法が施行されると緊急事態の宣言を出せるということですね。
佐藤)緊急事態の宣言を出すと、都道府県知事が外出の自粛やイベントの利用制限を要請することができるようになります。
森田)2年間の時限措置ということですが、もう少し早くできなかったのかという気がします。
佐藤)ただ、その種のことは言っても始まらないので、少しでも早くやった方がいいことと、いまやらなければいけないのは与野党の政治休戦です。「桜を見る会」や「検事総長人事」の追求をやめる必要はないのですが、新型コロナウイルスの問題の見通しがつくまでは脇に置いて、早く政治休戦すべきです。3.11のとき、当時の野党だった自民党と公明党が政治休戦をして、与党だった民主党への攻撃をやめて震災復興、福島第一原発事故の封じ込めに全力を挙げて協力しました。与野党ともに歩み寄って、政治休戦をする。今回の特措法改正がその第一歩なのではないかと思うのです。その点で、いい動きだなとも思います。
森田)公明党の北側中央幹事会長は5日の記者会見で「緊急事態を宣言するのであれば、与野党の事前調整が必要だ」ということで野党への説明が必要だということも言っているようですね。
佐藤)本来は議員立法でやればいいのですよ。与野党で共同提出して。野党は共同提出にすると自分たちも責任を負わないといけないから、政府の提出ということで攻撃できるカードを持っておきたいというのが透けて見えます。こういうのはすごく嫌な感じがします。こういうときには政争をやめて欲しいです。
初動の見通しが甘かったのは専門家の不足
森田)萩生田文部科学大臣は5日の参議院予算委員会で、全国一律の小中高校などに対する休校要請について「今朝の時点で99%の学校が休校状態を維持している」ということを明らかにしています。一部休校しない学校もあるようです。
佐藤)休校しない方が子どもたちを守れるという学校長と教育委員会の判断が地域によってはありますから、それはそれでいいと思うのですよ。ただ、これは全国一律で休校するということを総理大臣が直接言わないと、踏み込めないですからね。やむを得なかったと思うのです。特に、初動で2週間程度で封じ込められるという見通しを政府が発表したのですが、明らかに甘かったと思います。これは政府が悪いというよりも、日本に公衆衛生の国際級のプロがあまりいないことによります。政府がことを小さくしようとしたということよりも、率直に言って我々のいまの能力の問題なのです。そこで「2週間以内に封じ込められない」と言ったら国民は大パニックになりますよね。その状況で、できるところのいちばん厳しいやり方でやると、逆のベクトルを打ったということだったと思うのです。
森田)公衆衛生の世界的な権威がいて、的確なアドバイスがあれば対応が違ったということもあるのですね。
佐藤)しかし、これは言ってもどうしようもありません。日本のなかで長い間本格的に深刻な感染症がなかったら、専門家は育ちません。初動の遅れなどのいろいろな批判がありますが、それは終わってから時間をかけて冷静に検証すればいいと思います。いまはとにかく封じ込めることです。
習近平国家主席の国賓来日を延期~延期の日程は見通し立たず
森田耕次解説委員)新型コロナウイルスについては、4月に予定されていた中国の習近平国家主席の国賓としての日本訪問が延期されることになりました。菅官房長官が5日の夕方の記者会見で発表したものです。
菅官房長官)双方は現下の最大の課題である新型ウイルス感染症の拡大防止を最優先する必要があり、また、習主席の国賓訪日を十分な成果が上がるものとするためには、両者でしっかりと準備を行う必要があるということで一致しました。このような観点から、習主席の国賓訪日については双方の都合のよい時期に行うことになりました。
森田)日中両政府は新型コロナウイルスの感染拡大が広がるなか、当面は収束に向けた国内対応を優先すべきだという判断になったということです。今回実現すれば、2008年5月の胡錦濤氏以来12年ぶりの中国国家主席の国賓としての来日でした。当初から先送りの見方が広がっていましたが、正式に発表ということです。
佐藤)想定の範囲内です。この状況を考えるのであれば、賢明な判断ではないでしょうか。
森田)今後はどういう状況になるかわかりませんが、当初は秋以降になるのではないかと言われていました。これは、外務省内ではもう日程を最初から調整し直しということになるのでしょうか。
佐藤)そうなります。しかも、新型コロナウイルスがどの段階で収束するのかは、まったく見通しが立っていませんからね。この状況では決められません。
番組情報
錚々たるコメンテーター陣がその日に起きたニュースを解説。佐藤優、河合雅司、野村修也、山本秀也らが日替わりで登場して、当日のニュースをわかりやすく、時には激しく伝えます。
パーソナリティは、ニッポン放送報道部解説委員の森田耕次。帰宅時の情報収集にうってつけの番組です。