新型コロナによるメディア取材環境の変化と課題

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「報道部畑中デスクの独り言」(第185回)

ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、新型コロナウイルス感染症への対策で変化する取材環境について---

日商会見 2020年4月13日には会議室からイベント用のホールに移された

新型コロナウイルス感染症をめぐる緊急事態宣言の発令から、1週間が過ぎました。

以前もお伝えしましたが、メディアの取材環境はさらに変化が加速しています。ニッポン放送報道部でも、いわゆる「3密」を避けるため、勤務体制の見直しなど、さまざまな方策を講じています。

取材先でもさまざまな変化が起きています。国会では参議院が先週4月10日の本会議から、議席の間隔をあける措置をスタートしました。参議院によりますと、初めてのケースだということです。

議場の席数は460ありますが、参議院の議員定数は245、議員と議員の間がほぼひと席ずつあく計算になります。扇状の議席は通常、両端と後ろが空席になっていますが、間隔があくことでまんべんなく議員が広がる形となりました。

また、議席には「氏名標」という黒い棒状の名札があって、議員は通常、これを起こして座ります。しかし、今回は間隔をあけることで席がずれて来るため、これを倒したままにし、代わりに「氏名札」と呼ばれる名前が書かれた縦長の厚紙が席に置かれ、議員が座りました。

出席の際にはその厚紙を裏返します。押しボタンによる採決も席がずれて来ることから使用せず、起立による採決となりました。もちろん全員がマスク着用。議員からは「広々としていた」という声がある一方、多くがいつもとは違う席に座るため、戸惑う姿もありました。

通常の日本商工会議所の記者会見(2020年2月20日)

一方、衆議院は定数に対して席に余裕がないため、採決のときを除いて、本会議場から席を離れることが認められました。感染防止のため、国会の“景色”も変わって来ています。

メディアが参加する記者会見も様変わりしています。私が足を運ぶ省庁や経済団体の会見も、多くが通常の会見室や会議室からひと回り広い、講堂やホールに変更になりました。会見が終わってからのいわゆる「囲み取材」についても、会見者と記者の間に“規制線”が敷かれるなど、一定の距離をとって行っています。

囲み取材そのものを見合わせるケースも出ています。使用するマイクも終了後、アルコールによる消毒を施しています。さらに、会場を変更しない場合は、「1社1名」「代表取材」のような形も取られるようになりました。

今週4月13日に開かれた日本商工会議所の記者会見も、会議室からホールでの開催に。三村明夫会頭は緊急事態宣言の発令後、関係者に商工会議所に来ないように言われ、自宅では「断・捨・離」……掃除に勤しんだそうです。

そして「この1ヵ月間が大事な時期。7~8割(の外出自粛)はハードルが高いが、実現に努力すればダメージは小さい」と、改めて外出自粛を呼びかけました。しかし、中小企業のテレワークは業種によって難しいという認識も示しています。

議論になっている休業補償については「算定が難しい」とした上で、国が自治体向けに創設する1兆円の臨時交付金を、中小企業支援に活用することに期待を示しました。

2020年4月10日にWeb中継で行われた自動車工業4団体の記者会見(日本自動車工業会・豊田章男会長)

インターネットによる記者会見も増えて来ました。前回お伝えした自動車工業4団体の会見も、Webによる中継でした。

日本自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)をはじめとする4団体のトップは、それぞれ別の場所を中継でつなぐ形がとられ、記者はアプリを使って質問に参加。接続に時間がかかるなどの不具合はあったものの、質問時には記者の顔も映し出され、一定のコミュニケーションは担保されていたと思います。

政界、経済界、医学界……キーパーソン同士の会談なども一堂に会さず、それぞれをテレビ会議システムでつないで行う形が定着しつつあります。ただ、これは一堂に会することで1ヵ所だった取材が、複数にまたがることを意味しており、この辺の対応はメディアにとって悩みどころと言えます。

このように取材にはいろいろな方法がありますが、原則はやはり「フェイス・トゥ・フェイス」。場の雰囲気を伝えるのはもちろんのこと、ニュースの背景を探るために関係者に話を聞くことも少なくないため、現場に足を運ぶことは欠かせません。そういう意味で、今回の一連の措置は異例のことと言えます。

しかし、この緊急時、いま何よりも務めなければならない「3密の回避」はメディアも例外ではありません。もはや、誰が感染してもおかしくないという危機感を共有しながら、当事者同士がさまざまな知恵と工夫を絞り出しています。そして、マスク着用、うがい、手洗い、消毒……基本に忠実に、細心の注意を払って行かなくてはならないことは言うまでもありません。(了)

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