欧・米・中・日 次世代自動車開発競争 それぞれのアプローチ

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「報道部畑中デスクの独り言」(第184回)

ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、次世代自動車開発競争における世界各国のアプローチの違いについて---

画像を見る(全6枚) Web上で行われた自動車工業4団体の緊急会見(2020年4月10日撮影)

新型コロナウイルス感染症をめぐる緊急事態宣言は、経済にも甚大な影響を与えています。自動車業界でも国内の工場が軒並み稼働停止に追い込まれており、メーカーによっては従業員の一時帰休に発展しています。

自動車工業4団体は4月10日、緊急に記者会見。この日は東京都の小池百合子知事が休業要請などについて会見しましたが、そのほぼ“真裏”となりました。

ウェブサイトによる会見で日本自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)は、業界を挙げて工場でのマスクの生産や、軽症者の療養のため各社が持つ寮や保養施設の提供、患者移送用の車両の提供などに乗り出すと表明しました。

また、「経済を回し続け、雇用を守って行くことが医療崩壊を食い止める大きな力になる。春(感染終息)を迎えたときに、経済をいち早く復活させる原動力にして行きたい」と述べ、そのときに備え、業界に“互助会ファンド”を創設する考えも示しました。

一方、現状については「ボクシングで言えば“クリンチ”の状態」と危機感を示し、業界にとっての“致命傷”は「要素技術と人材を失うこと」とも述べました。これは感染拡大のなかでも静かに進む、次世代自動車をめぐる競争への危機感でもあります。

世界最大の部品メーカー、ボッシュ 自動運転技術に力を入れる(2018年 人とくるまのテクノロジー展から)

以前、小欄でお伝えしましたが、トヨタ自動車が静岡県裾野市の東富士工場の跡地に展開する街づくり事業で、NTTと約2000億円の相互出資をすることで合意しました。

とりわけプラットフォームの世界標準をめぐり、アメリカや中国などとのし烈な競争に打ち勝つための方策とみられます。プラットフォームとは「周囲より高い場所、台地」のような存在を指しますが、それが転じていつしか「基盤」や「土台」を意味するものになりました。

自動車でも骨格にあたる部分はプラットフォームと呼ばれますが、今回のプラットフォームは、その自動車をも包含する社会基盤のことを指します。

プラットフォームをめぐる競争はグローバルに展開されており、各国のメーカーは国境を越えた連携を組んでいます。一方、これは国や地域の覇権争いという側面もあり、そうした視点で見ると、それぞれのアプローチに違いがあるのが興味深いところです。

コンチネンタルのブース スマホを使った自動運転技術に尽力(2018年 人とくるまのテクノロジー展から)

アメリカの自動車業界は長らくGM・フォード・クライスラーの「ビッグ3」の時代が続きましたが、リーマン・ショックのあおりを受けて、GMは2009年、連邦破産法第11章の適用を申請し、経営破たんしました。フォードも傘下にあった日本のマツダの株を放出するなどの苦境に陥りました。

クライスラーはそれ以前に、ドイツのダイムラーと合併するも破局。2009年にはGMに先立ち経営破たん、その後はイタリアのフィアットと合併してFCAとなります。FCAはさらにフランスのPSA(プジョー・シトロエン)とも合流し、米仏伊3ヵ国をまたいだグループをつくり上げました。

ビッグ3はその後、さまざまな形で再建を果たしますが、国内産業の主役はGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)に代表されるIT企業に交代。次世代自動車開発も、こうしたIT企業が主導する形になっています。また、自動車そのものも電気自動車のテスラなど、新興勢力が着々と力をつけています。

中国もBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)という新興IT企業が先行。自動車業界は海外勢との合弁という形でノウハウを蓄積する一方、BYDなどの国内企業が乱立している状態です。いずれ国内での巨大勢力構築に向けて再編が行われるでしょう。

ZFのブース ドイツのメガサプライヤーの一角を占める(2018年 人とくるまのテクノロジー展から)

一方のヨーロッパ。厳しい環境規制が電動化を強力に促進するなか、こと自動運転やコネクテッドの分野では、メガサプライヤーと呼ばれる部品メーカーが完成車メーカーとわたり合っているのが特徴です。

完成車メーカーはVW・ダイムラー・BMWのドイツ勢、前述のPSA、FCAにルノー・日産・三菱自動車連合…フランス勢とイタリア勢は他国のメーカーとタッグを組みます。

一方、プラットフォームづくりを担っているのは、ボッシュやコンチネンタル、ZFといったメガサプライヤー。ボッシュは燃料噴射装置や横滑り防止装置、コンチネンタルはタイヤ、ZFはパワーステアリングや自動変速機という、いまの自動車に欠かすことのできない技術に定評がありますが、近年はIT技術を持つ企業を買収するなどして、完成車メーカーと協業を行う関係をつくり上げています。

それはもはや「下請け」ではなく、業界のキャスティングボートを握るような存在です。モノづくりの技術を結集、自動車発祥の地であるプライドを感じます。

アイシングループはトヨタ系の自動運転技術を支える(2019年 東京モーターショーから)

さて、日本はどうでしょうか。急成長するベンチャー企業が少なく、GAFAのような規模を誇るIT企業はソフトバンクぐらいでしょうか。

ただ、この会社は「群戦略」と言われるように投資の側面もあります。ヤフーとLINEが経営統合したことは先の小欄でもお伝えした通りですが、規模や時価総額ではまだまだGAFAなどに及ばないのが現状です。

では部品メーカーは? デンソーやアイシングループが海外のメガサプライヤーと対峙する存在ですが、ともにトヨタ系列。日本の自動車産業は「ケイレツ」の名のもと、いわゆる「擦り合わせ」によって技術を高めて来た歴史があります。となると、やはり日本はトヨタを核としたオールジャパン体制が構築されて行くのでしょうか?

日立オートモティブのブース 日本勢も合従連衡の動き(2018年 人とくるまのテクノロジー展から)

一方で、日立オートモティブが昨年(2019年)、ホンダ系のケーヒン、ショーワ、日信工業との合併を発表するなど、事業統合の動きも活発です。この会社は以前、日産系だったユニシアジェックスを完全子会社化しています。

こうした事業再編が進むなかでのトヨタとNTTの資本提携は、日本の産業構造、そして世界の勢力図の今後を占うニュースとして注目されたわけです。

アメリカのフロンティア精神、自動車発祥の地としてのヨーロッパのプライド、「眠れる獅子」から目覚めて急成長の中国、そして日本……それぞれの個性のもと、覇権を握るのははたしてどこなのか、これからも目が離せません。(了)

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