コロナ混乱のなか年金制度法改正案を通していいのか
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月30日放送)にジャーナリストの鈴木哲夫が出演。新型コロナウイルス感染拡大のなかで進む年金制度法改正案と政府の方針について解説した。
新型コロナウイルス感染のなか進む年金制度法改正
新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、国会で14日から審議入りしている年金制度法の改正案。今国会での成立を目指している政府の方針について、鈴木哲夫氏に訊く。
飯田)年金制度の改革、全世代型社会保障改革の一環だということですが、中身がどうなっているのか。
年金制度法改正案とは~政府は今国会で通す方針
鈴木)全世代型社会保障と聞くといい響きという気がしますが、全体としては社会保障にかかるお金を抑えて行こう、という方向性が裏に見えるのです。高齢者のお金を削って若い人に回すと言っているけれど、若い人だっていつかは高齢者になるのです。若い人が高齢者になったら厳しくなってしまうわけです。よく考えると、矛盾しているところがかなりあります。社会保障はこの国会の最大のテーマだと思っていたし、与野党の幹部もそう言っていました。ところが、コロナが起きたことで注目度が下がっています。そんななかで、実は3月頭に閣議決定をして、改正案は提案されているのです。与党の国会対策の幹部は「絶対にこの国会で通す」と言っています。
過去にも、特定秘密保護法で騒いでいる間に「社会保障プログラム法」が通過
鈴木)社会保障というと、どうしても国民ウケしない。2013年に「社会保障改革プログラム法」というものが国会を通過したのですが、このときは特定秘密保護法のことで毎日ものすごい騒ぎになっていて、メディアはほぼ全部それが中心でした。そのときにパッと強行採決で通したのが、この法律でした。これが何かというと、高齢者が医療費を負担するとか、国が介護の手を放して地方自治体に付け回ししてしまうというものです。地方自治体の負担や差が相当出て来る大きな問題だったのですが、騒ぎのなかで通してしまいました。政権の手法としてよくあることなのですが、今回もコロナで騒いでいるなか、通されてしまっていいのか。今回の改正案にはいくつかポイントがあるのですが、1つはパートタイムの人にも厚生年金を広げましょうという話です。そう聞くといい感じがするのだけれど、実は厚生年金の半分は企業が払うのです。
飯田)労使折半と。
鈴木)パートを雇っている企業は大きな企業ではありません。中小企業の負担がものすごく増えるという問題が1つあります。また、改正案でのもう1つのポイントは、年金の受給を75歳くらいまでに幅を広げるということです。「それぞれの100年ライフの生き方で選択できるように」と言っていますが、みんなが100歳まで生きるような健康なお年寄りばかりではありません。75歳までとなると、年金を貰えずに亡くなる人も増えるわけです。年金として出て行くお金を抑えられるという背景もあるかもしれないので、この話はしっかり議論しないといけません。コロナが落ち着いたときに、後で気が付いても遅いのです。実際に国会で提案されて議論が進んで行くのですから、要注意です。
経済の悪化を社会保障削減の大義名分にされてしまう
飯田)年金を含め、社会保障のお金をどうするのかという話が出発点で、こういうことになっていると思うのですが、一方で稼ぐ方の人たちになかなかお金が回らない。稼ぎ出す部分がどこまで強くなれるのか、全体の経済状況が影響して来ますよね。
鈴木)私もまったくそうだと思います。今後の景気がどうなるかは、いまはコロナでまったく見えません。大変なことになるでしょう。なるのだけれど、そうなると逆に年金や社会保障を厳しくして財源を抑えることが、ある意味で正当化されてしまうことにもなるわけです。
飯田)そうは言ってもお金がありません、ということですね。
鈴木)消費税もこれからどうするかという議論になると思いますが、もし税率を下げるというウルトラCの流れになると、ますます社会保障を削るという大義名分になってしまうわけです。コロナで景気がどうなるのか、社会保障がどうなるのか。何と言っても社会保障は、我々が生きて行く基本です。この法案の審議や考え方を注視して行かないと、後で気が付いたら前の社会保障プログラム法のようになってしまう、ということは避けたいですよね。
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