ワクチンだけですべてが防げるわけではない~新型コロナ
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月21日放送)にジャーナリストの有本香が出演。新型コロナの感染状況について、また国内における新型コロナワクチンの状況について、新型コロナウイルス感染症対策分科会のメンバーで川崎市健康安全研究所所長・岡部信彦を電話ゲストに迎えて解説した。
新型コロナのワクチン確保に向け、弁護士チーム発足へ
加藤厚生労働大臣は7月20日、新型コロナウイルス感染を予防するワクチンの確保に向け、弁護士を入れたチームを発足させ、イギリスのアストラゼネカを含む製薬会社3~4社と交渉する考えを示した。
飯田)海外で研究されているワクチンを、日本へ持って来るという動きです。
有本)これは、弁護士チームというと誤解があるかも知れませんが、弁護士を入れたチームということです。7月の初めに日本がEU諸国と共同で購入する、あるいはアメリカやオーストラリアと共同で購入する枠組みをつくるという話がありました。ただし、一部の国に偏らないように、その国の人口の20%分というような上限を決めて、買い取るということを言っているのです。一方では、イギリス政府が、アメリカやドイツ、フランスの会社が合同でつくっているものを購入するという合意書を締結しています。
飯田)9000万回分だそうです。
有本)このように、抜け駆けはありなのです。だから、弁護士も大事ですが、どこか大手商社と組んでやった方がいいのではないかという気がします。役人ベースでやることは難しいと思います。なかなかそこまできれいな世界ではありません。気になるのは、国内での開発はどうなっているのでしょうか?
飯田)21日の朝刊は日経が1面で伝えていますが、塩野義製薬が、新型コロナのワクチン生産体制を従来計画の3倍、年間3000万人以上分に生産量を増やすということです。ここで、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会のメンバーで、川崎市健康安全研究所所長の岡部信彦さんと電話がつながっております。岡部先生、おはようございます。
岡部)おはようございます。
重症患者を出さない~みんなで少しずつ抑える
飯田)感染が拡大しているように見えて来る局面で、人によっては「第2波だ」と言う人もいますけれど、先生ご自身はどうご覧になっていますか?
岡部)第2波であるということは、後になってわかることです。前回からの流行の続きなのか、それとも新しく来ているものなのかは、いろいろな言い方があります。私は第2波だろうが、第3波だろうが、感染を拡大しないようにするということが、いちばん大切だと思います。
飯田)そのために、何ができるのかということ。やはり、基本が中心ですか?
岡部)ある一定数の患者さんは出てしまうのですけれども、そのなかから重症になる方を抑えられるものならば、できるだけ少なくした方がいいわけです。病院などの医療体制がしっかりしているのと同時に、多くの方が不便ではない程度の一定の注意や我慢をして、「みんなで少しずつ抑えましょう」ということが基本的な考え方です。
緊急事態宣言を出すことは考えなくてもいい
飯田)緊急事態宣言を出すまでに至っていないと政府は繰り返していますが、医療体制としては、いまのところは十分な体制が取られていると理解してよろしいでしょうか?
岡部)3月末から4月初めのころにかけて、いろいろなことが起きたわけですけれども、そのころに比べれば、新型コロナに対してどのようなことをすればいいのか、重症の患者さんはどこに行ってもらうか、軽症の患者さんもいまのところ入院だけでなく、ホテルを利用するということになっています。それから感染していない方々も、当時に比べれば、3密を避けるなどの予防の仕方がわかって来ているので、前と同じ状況で緊急事態宣言を出すということは、考えなくてもいいと思います。
感染予防をしつつ、できることを探すことが大切
飯田)現状の理解がベースにあった上で、今回、「Go To キャンペーン」が取り沙汰されています。マスコミの報道を見ると、これによって全国に感染が拡大してしまうと言う人もいます。感染拡大防止の観点から見て、人の移動そのものが悪いというわけではないという理解でよろしいですか?
岡部)感染者の拡大防止ということを全面に出すなら、動かない方がいいです。しかし、それでは社会が成り立たないというもう1つの考え方から、どこを我慢して、どこを動かせるのかということです。「あれもダメ、これもダメ」と言うだけではなく、「これはいいだろう」とか、「この辺まではやってもいいのではないか」というようにすればいいのではないでしょうか。自由気ままにというわけには行かないので、一定の注意が必要ですが、このような考え方で、できることを探して行くということが必要だと思います。
体調が悪い場合は旅行に行かない
飯田)日々の数字が出て来て、いちいち心が動かされてしまいます。1日の感染者数や、重症者数、感染経路が不明な方の数などがあります。これは、どこに注目したらよいですか?
岡部)「増えた、減った」ということを見るのではなく、点でなく線で結んで、全体的にどのように増えているかということを見るべきです。いまの状況も、少しずつ増えているのですが、急に増えているという状況ではないということと、東京で言うならば、少し平べったくなっているような形なので、そこは落ち着いて見た方がいいです。ただ、増えていること自体はよろしくないですし、人が動くと感染が拡がる可能性は高くなります。自由気ままに動き出すと、今度は患者さんがいないところで増えてしまうことになります。受け入れる側も、ただダメと言うだけではなく、「これとこれを抑えて、なるべく感染が拡がらないように」とする。旅行へ行く人においていちばん大切なのは、具合が悪くても無理して行くということを避けていただければ、ずいぶん違うと思います。繰り返しますが、まったくゼロというわけにも行かないし、見えないところもあるので、そこを注意しながら、ということになると思います。
ワクチンだけですべて防げるわけではない~日々の基本的な予防が大切
有本)世界中でワクチンの確保ということが話題になっています。政府は来年(2021年)の初めくらいには確保できると言っているのですが、先生は現場の感覚も含め、いつごろだとお考えになっていますか?
岡部)私はワクチンの方にもこれまで携わって来ましたが、つくること自体は、それほど時間はかかりません。しかし、多くの人に使って大丈夫なものなのか、効果が30%くらいでも使った方がいいのか、そういうことを判断するには時間が必要です。ですから、一般の方々が「ワクチン、ワクチン」と言っていても、私たちは慎重に評価して行かなければいけません。
飯田)そこに期待はあるけれども、日々の手洗いや3密を避けるという基本の励行と、医療体制の整備という2本柱になりますか?
岡部)もちろん、ワクチンや薬はあった方がいいのだけれども、完成するまでは何もできないということではなく、それまでにできることや注意すべきことをしていただいて、「ワクチンが来るからいい」ということにはならない方がいいと思います。ワクチンが仮にあったとしても、ワクチンだけですべてを防ぐことができるわけではありません。インフルエンザの流行のときに、ワクチン摂取だけすればいいのではなく、手洗いやマスクを付けるという対策があるように、基本的な注意はいずれにせよ、必要だと思います。
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