【ライター望月の駅弁膝栗毛】
標高881mの小淵沢から、清里~野辺山間にある標高1375mのJR鉄道最高地点へ、約500mの高低差を力強く登って行く小海線の列車。
国鉄時代はC56形蒸気機関車が引っ張る客車列車が走り、JR初期には、新宿始発の電車をディーゼル機関車でけん引した「葉ッピーきよさと」なる臨時列車も走りました。
いまでは、JR発足後に登場した車両が、全線で活躍しています。
なかでも、小海線だけで見られるのが、「こうみ」の愛称があるキハE200形気動車。
この車両は、平成19(2007)年に登場したディーゼルエンジンでつくった電気とバッテリーに溜めた電気でモーターを回して走る、世界初の営業運転用ハイブリッド車両です。
この技術を発展させ、東日本エリアでは「リゾートしらかみ」や「海里」などの観光列車や、東北本線・仙石線を直通する仙石東北ラインでも、ハイブリッド車両が活躍しています。
(参考)JR東日本ホームページ
鉄道でも「ハイブリッド車両」が進化するように、駅弁もまた進化を遂げています。
今年(2020年)春、小淵沢駅弁「丸政」の新作「高原野菜とからあげの弁当」(1100円)が、小淵沢駅での予約限定で登場、大型連休にはドライブスルー販売も行われました。
おなじみ、発売50年を迎えた「高原野菜とカツの弁当」の色違いパッケージとなっていて、半世紀前から野菜と鶏肉の“ハイブリッド”だった“カツ弁”の姉妹品という位置づけです。
【おしながき】
・白飯
・鶏肉のからあげ レモン
・生野菜(レタス・セロリ・きゅうり・ミニトマト・カリフラワー・しめじ・コーン・山ごぼう・蕨)
・スパゲティ―
・茎さつま
・りんご
ふたを開けた瞬間、ハッと目を奪われるのが、インパクトある2個の大きな「からあげ」!
しかも「高原野菜とからあげの弁当」は、弁当の受け取り時間に合わせて、鶏肉を揚げているので、いざ手に取ると、揚げ立ての温もりが感じられます。
思い切りガブリといけば、カリカリッとした歯触りのあとに、ジュワっと広がる鶏肉の旨味!
消費期限は3時間ですので、買い求めたら早めにいただくことをお薦めします。
「丸政」によると、開発に当たって、弁当に合う「からあげ」をとことん追求したとのこと。
従来から丸政の駅弁・駅そば向けにつくられていた「山賊焼」とは一線を画し、にんにくを使わず、醤油をベースにじっくり付けられた下味が活きています。
高原野菜のフレッシュ感と相まって、ガッツリなのに、心地いい後味が嬉しいもの。
なお受け取り1時間前までの要予約、午前10時販売開始、最終受付は午後4時です。
八ヶ岳山麓で思いっきり体を動かして、高原の自然散策を楽しんだ後は、小淵沢始発の普通列車高尾行に乗り込み、ボックスシートに1人身を委ね、のんびり東京へ戻ります。
この夏は、列車の窓が開いているので、高原の風を肌に感じながらの駅弁タイム。
そういえば、この1ヵ月ほどで唐揚げ駅弁を紹介するのは、東京・横浜に続いて3回目。
じつは「唐揚げ」駅弁、この夏はヒートアップ中と言ってもいいかも知れません。
お隣・長坂から乗り込んできた部活帰りの高校生たちが、大きなからあげを頬張る私に、恨めしそうな視線を送ってくるのを感じました。
そりゃ、食べ盛りの10代の若者がこの特大からあげを見たら、腹が減ってしょうがない!
でも、ふるさとに、こんなに美味しい駅弁をつくってくれる駅弁屋さんがあるのは、キミたちにとっても、きっと大きな誇りですよね!
普通列車の旅は、停まる1駅ごとに、新たなショートドラマが生まれていく感じ。
そんなドラマを楽しみながらいただく駅弁は、より一層、美味しく感じられるのです。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/