【ライター望月の駅弁膝栗毛】
透き通った東伊豆の海に沿って、グリーンストライプの「踊り子」号が、大きなモーターの音を響かせながら、伊豆急下田へ向け、下って行きます。
「駅弁膝栗毛」には何度も登場している185系電車は、昭和56(1981)年のデビュー。
首都圏ではいま、最も「駅弁」が似合う車両と言ってもいいかも知れません。
それというのも、かつての駅弁販売の肝だった、「窓が開く」という特色があるからです。
この夏は、換気のために、窓が開いた185系「踊り子」をよく見かけました。
私も先日乗車した際、前列の4人組の方が、座席を回して宴席を始めたので、思わず、185系電車の窓を開けました。
その昔、「特急なのに窓が開く」と云われたこともあった185系電車ですが、40年目にして「窓が開いてよかった!」と初めて感じることができました。
「踊り子」号の窓を開けたら、潮の香りが車内でも感じられました。
生命の起源は海にあるとも云われるからか、どこか懐かしさを感じて、癒される海の匂い。
海辺の鉄道旅は、自然と海の幸が恋しくなります。
伊豆急下田・伊豆高原駅などで「伊豆急物産」が販売している伊豆急行線の駅弁にも、この地域では定番の「あじずし」(1130円)があります。
【おしながき】
・あじずし
・しそ巻き
・わさび漬け
・ガリ
あじ8カン、しそ2カン、小田原・熱海の名物駅弁へのオマージュが感じられる「あじずし」。
駅弁らしく酢が効いて、ごまが混ぜ込まれた酢飯も風味豊かです。
現在、「踊り子」には車内販売がなく、カフェテリア(ヌードルバー)が連結されている「サフィール踊り子」も、弁当の車内販売はありません。
下田、伊豆高原などから、「踊り子」に乗り込む際は、ぜひとも駅弁を押さえたいものです。
185系電車も、既に一部の列車に投入されているE257系電車への置き換えが進みます。
列車内の換気は十分に行われていますが、車内での大声による会話や座席を回転しての宴席は、不安を覚える方も多いでしょうから、コロナ禍収束後に取っておきたいところ。
その分、車窓に広がる景色をよく眺めて、駅弁をじっくり味わいながら、2020年のいましかできない鉄道旅を楽しみたいものです。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/