アメリカの財政赤字が350兆円~この状態が続くとインフレに
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月4日放送)に元内閣官房参与で前駐スイス大使、現TMI総合法律事務所顧問の本田悦朗が出演。アメリカの財政赤字が過去最大の350兆円になるというニュースについて解説した。
この状態を続けるとインフレに~GDP比でフラットにさせる経済運営が必要
アメリカ議会予算局(CBO)は9月2日、2019年10月~2020年9月までの2020会計年度の連邦財政赤字が、過去最大の3兆3000億ドル(約350兆円)になるとの予測を明らかにした。2020年度の財政赤字はGDP比16%の見通しで、19年度実績の4.6%から拡大し、第二次大戦以来の大きさとなる。
飯田)コロナ対策でお金を使った、ということだそうです。
本田)350兆円という数字そのものを問題にしても、あまり意味がないのです。財政は持続性があるかどうかということがよく議論になりますが、それを判定する方法は1つではないのです。最も重要なのは、これまで累積した財政赤字をGDPで割った値、つまりGDP経済規模に比較して、これまで累積した赤字がどれくらい大きいのか、この数字がいちばん大事だと思います。それで見ると、2020年度は98.2%、そして2021年度はここにある350兆という数字ですが、104.4%と増えているのですね。ですから、実はよくないのです。この状態を未来永劫続けると、必ずインフレになります。いまはコロナで経済活動を止めていますから、特殊な状況にあるということを我々は理解しなくてはいけません。ただ将来を見通すと、一刻も早く対GDP比でどうなるかということを、少なくともフラット、あるいはゆっくりと収束させる、落として行くという経済運営が必要だと思います。これまでは上がって来たのですから。
財政赤字をGDPで割り、フラットであれば問題ない
本田)日本においては、デフレ時代に累積債務をGDPで割った値が上がって来たのですが、アベノミクスで少なくともフラットにしました。最近は若干落として、収束しかかっていました。そのときにコロナが来てしまったのは、非常に残念だと思います。
飯田)よく国家財政を家計に例えて、だから借金はいけないのだ、すぐにでも0にしなくてはいけないのだと言う人がいますが、少しずつでも下がっていればそれでいいと。フラットでもいいということなのですね。
マクロ経済はミクロの積み重なりではない~国家の財政運営は会社経営とは次元が違う
本田)はい。例えば、金利が1%としますね。ところが経済成長率が3%とすると、毎年2%ずつ改善するのです。GDPに比例する分だけ、税収が上がります。金利に比例する分だけ利払いがあります。しかし、税収の増え方の方が、利払いの増え方よりも多いのですから、放っておいても財政は改善するのです。ですから、皆さんに申し上げたいのは、「1人あたりの借金は」と言い始める人がいたら、その人は何もわかっていないと思っていただいてけっこうです。「1人あたりで800万円の借金があります」と言った瞬間に、「では1人あたり800万円の資産もある」のではないかと。借金というものは、その裏側で必ず誰かが資産を持っているはずなのです。国債は政府の借金ですが、国民の資産でもあるのです。同時なのです。ですから、表と裏の両方で判断しないと、すべて「1人あたりの」と換算してしまうのは、完全にマクロ経済学をわかっていない人の理論です。
飯田)確かに、我々も住宅ローンを組みます。借金は何千万とあるかも知れませんが、同じだけ家を持っている、資産があるということですよね。
本田)そういうことです。
飯田)国家財政においても同じだと。
本田)つまりマクロ経済というのは、ミクロの積み重なりではないのです。マクロ経済はマクロ経済の原理で動いているのです。それをわからないものだから、特に会社の経営者の方に多いのですが、会社の経営者はミクロの専門家です。会社の運営は難しいので、いろいろな財務状況や、マーケティングなどを考えて経営されます。しかし、国家財政の運営はまったく次元が違うのです。ですから、政府の関係審議会に、企業経営者として成功された人が入って来ると、入って来ること自体は否定しませんが、間違ったことを言う可能性は非常に高い。実際に間違っています。往々にして、間違った提言をされていることが多いです。
飯田)大体は、借金を返した方がいいと言う。企業経営者は借金があると不安だということでしょうか。
本田)そうですね。企業はリストラできます。それから、債務削減もできます。しかし国家はリストラできません。国家、政府は日本国民全員の面倒を見なくてはいけないのです。財政赤字が多いから日本国民をやめろ、なんて絶対に言えませんから。
飯田)それは棄民政策になってしまいますものね。絶対にやってはいけないことです。
本田)ええ。マクロ政策は難しいのです。日本全体をケアしなくてはいけない。根本的に違うのです。
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