フィンセン文書~マネーロンダリング摘発の困難さ
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月23日放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。金融機関がアメリカ財務省に疑わしい取引の報告として提出している「フィンセン文書」について解説した。
フィンセン文書
世界の大手金融機関が総額2兆ドルもの不正資金のマネーロンダリングを野放しにしていたことが、アメリカ当局から流出した「フィンセン文書」で明らかになった。フィンセン文書とは、金融機関が疑わしい取引の報告として、アメリカ財務省の金融犯罪取締ネットワーク局に提出しているファイルのことを指す。
飯田)このアメリカ財務省に提出されているファイルですが、2500件以上あるうち、2100件が不審な行動を報告したもので、それが“BuzzFeed News”に出ました。それを世界のメディアが引用して報道しています。
高橋)以前、パナマ文書やパラダイス文書なども出ました。その後は報道がありませんが、20年間くらいの間に報告があったということです。報告があれば当然、アメリカの財務省は調べます。しかし、調べても何も出ないことがあります。それをマスコミが時間が経ってから後追いしても、何も出ない可能性が高いです。すでに過去のものであり、古い話なので、民間の報道会社がやったところでよくわかりません。
飯田)高度な金融のマネーロンダリングの仕組みだとか……。
同様の疑義がある案件はたくさんある~捜査しても解明することは難しい
高橋)報告があったときに、アメリカの財務省は調べたのですが、うまく行かなかったから表に出ていないわけです。同様の疑義がある話はたくさんあります。それが当たるか当たらないかは、捜査当局でも難しいのです。
飯田)イギリスのとある住所に、何百も登記がされているとか。
高橋)当然調べたと思います。要するに、よくわからないからそのままなのです。実際に調べてもわからなかった、ということだと思います。報告があって、アメリカ財務省のチームが何もしていなかったということはないと思います。報告のうちの何割かは調べているはずです。でもわからなかったのですよ。そういうことはあります。私も税務署長をしていたときに、たくさん来ました。調べてもわかりませんでした。
飯田)最後の尻尾がつかめない、ということがあるのですね。
高橋)マスコミは怪しいということだけを報道して終わりますが、それでどうなるかと言うと、結局わかりません。
飯田)怪しいと報じることと……。
高橋)実際に摘発することはまったく違います。
飯田)もっと緻密に積み上げないと。
高橋)反証をくらってしまったらアウトでしょう。ただ怪しいという報告が来ているだけで、その結果、何かの犯罪を立証できることは少ないと思います。
飯田)資料が膨大なだけに、いまなお断片的に報じられています。
高橋)解析だけで時間がかかるので、ますます過去の話になってしまい、わからなくなると思いますよ。マスコミの人には申し訳ないですが、なかなか難しい。これで新しい事実を見つけたら、大したものだと思います。パナマ文書のときと同じでしょう。
飯田)いろいろなものが出たけれども。
高橋)「だからどうなったの?」という話です。
マネーロンダリング対策~2000年代から法律が整備
飯田)マネーロンダリングそのものは、国際的には2000年代に入ってから規制が厳しくなっています。
高橋)2000年代にテロなどがあったので、法律も整備されて、報告義務があります。嫌疑があったら報告が行くと思いますが、立件することは難しいです。
飯田)マネーロンダリングそのものを取り締まろうとしていて、同時多発テロもあり、それがテロの温床になるということで世界的にやり始めました。例の組織的犯罪処罰法の改正案は、共謀罪だと言って日本国内では揉めましたが、本来はマネーロンダリング対策に関するものなのですね。
高橋)マネーロンダリングと言うと難しいですが、不適切な人から預金口座を受け入れてはいけない、というレベルの話です。言ってみれば当たり前のことで、変な人の預金口座を受けたら使われてしまうということです。最近は暗号通貨で資金決済ができるでしょう。金融機関以外も多くなっています。
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