コロナ禍の会話でわかった—「怖い」と思われる人の話し方の特徴

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フリーアナウンサーの柿崎元子による、メディアとコミュニケーションを中心とするコラム「メディアリテラシー」。今回は、なかなか見直すことがない“自分の話し方”について---

ニッポン放送「メディアリテラシー」

話し方がキツイ理由

「柿崎さんってちょっとキツイというか怖い感じがするけど、実際はそうでもないね」と言われることがあります。

キツイと言われる要素として、あまり笑わないとか、無口だとか、話の内容が面白くない、などの理由がイメージされます。しかし、実際には言葉のキャッチボールをし、普通に笑いながら会話は進みますので、話してみたら結構楽しかったということではないかと感じています。

私自身が認識しているキツイと思われる要素は、語調が強い、ストレートな言葉使い、結論から言う……などの話し方です。このような傾向は「男性っぽい」と言われる私のイメージをつくっているような気がしています。周りに存在する人だと上司、父親、先生などが当てはまるかも知れません。

とは言え、これらの人全員が怖いわけではありません。ではどんな点に違いがあり、「怖い人」になってしまうのでしょうか。

大好きなテーマパークへ

大阪に住む高校生の姪っ子は、以前から私に「一緒にテーマパークへ行こう」と言っていました。もともと仲良しの私たちは東京で買い物などをしていましたが、今回は何か欲しいものがあるようです。とにかく「チケットは自分が用意するので連絡する」と言っていました。

高校生ぐらいですと、インターネットを駆使して人気のテーマパークのチケットを手に入れることは容易なようです。かくして私はゴールデンウィークに姪っ子と泊りがけで遊びに行く計画を立てました。私自身とても楽しみでした。

しかし、緊急事態宣言が発令され、テーマパークは休業要請の対象になりました。私は急いで彼女に電話しました。

「ちょっと、聞いたよね? 休業だって。おかしくない? おかしいでしょ? 来週なのに、急すぎるよね。ホテルだってキャンセル料がかかるし、ひどいよね。何を考えているのかな……新幹線はどうする?」

写真撮影:柿崎元子

「おばちゃん怖いんだけど……」

彼女は状況をよく理解していなかったようで、電話の向こうでおびえた声で呟きました。

「おばちゃん、何か怖いんだけど……」

可愛がっている姪っ子からのショックな一言でした。私の口調はなぜ怖くなってしまったのでしょうか。ここからポイントを見て行きましょう。

私は、まん延防止等重点措置は飲食業への時短要請と解釈していました。テーマパークは屋外で、人数制限がされていましたので、当てはまらないと思ったのです。

考えが甘いと言われればそれまでなのですが、チケットが取れたと嬉しそうに話す姪っ子に、先を予想して辞めようと言い出すことはできませんでした。旅行を辞めなければならないと感じた私は言葉をまくしたて、強い語調となっていました。

なかでも最も特徴的だったのは、言葉の短さです。「休業だ」「おかしい」「ひどい」と、ものすごいスピードで言ったようです。彼女が悪いわけではないのに、私はイライラをぶつけるように非難してしまったのでした。

電話は相手の反応が見えにくく、しかも立て続けに言葉を発してしまうと、そこに合いの手を入れる隙間さえありません。高校生を相手に、何とお恥ずかしい状況なのでしょうか。短く立て続けに言葉をぶつけること。これは大きな失敗でした。

ニッポン放送「メディアリテラシー」

ビジネスで重要な断定形

そして、もうひとつのポイントは断定です。これがキツイ印象に追い打ちをかける形になりました。

「聞いたよね」や「急すぎるよね」「ひどいよね」という「~よね」は、相手の意見を聞いているのではなく、同意をさせようとする形です。もはや詰め寄ると言っていいでしょう。

そして、「おかしいでしょ」「何を考えているのかな」は疑問形ですが、ほとんど断定の意味で使っています。これでは姪っ子が攻められているようでかわいそうです。

日本人はどちらかというと、言いたいことはやんわり伝え、「察して欲しい」を好む民族です。よい関係性を保つために、会話では断定することを避けます。命令や指示していると捉えられないようにしています。

では、ビジネスの場面に置き換えてみましょう。「おそらくそういう形になると思います」「多分大丈夫だと思います」などと使って、物事が進むでしょうか? 報告や相談の際にこのように答えては、信用をなくしてしまいます。

メディアのインタビューに答えるときも、「一般的にはそのように考えられていると思います」と発言したら、「あなたはどう思うのですか?」と記者に問い返されます。「弊社の方針です」「ご指摘の通りです」と言うべきなのです。

計画や予想であっても、可能な限り断定して言うことが求められるのです。若者が使う「~的な」「~みたいな」「~風」などがダメな理由は、ビジネスでは通用しないからかも知れません。

ニッポン放送「メディアリテラシー」

相手の気持ちに寄り添って話す

「それは違うのではないでしょうか」「~決定が遅いと言われていますよね。総理、どうお考えですか?」など、メディアの質問は糾弾する形になりがちです。語調によってはけんかを売っているように聞こえます。

私はインタビュアーとしての経験が長く、多くの要人に取材して来ました。そのため知らず知らずのうちに、あいまいさを避ける話し方になってしまい、自分でもそのクセに気付いていませんでした。このように考えると、ビジネスとプライベートでは話し方が大きく違うことがわかります。

プライベートで大切なことは、相手の気持ちに寄り添って話すこと、感情に働きかけるような言葉を使うことが求められるのです。姪っ子には「とても残念なお知らせを聞いたんだけど」と前置きしたり、「気持ちは同じだよ」と共感する対応をすれば、怖い人にならないで済んだでしょう。

コロナ禍で人とのコミュニケーションも少なくなってしまいました。言葉の使い方で殺伐とした生活になるのは避けたいものです。また、効率的で誤解を与えないような話し方を追求するあまり、相手の心に働きかけることを忘れてはいけません。

今回は私の失敗談をお話しすることで、皆さんにも気づきがあればと思っています。数ヵ月後にワクチンが行きわたり、また対面での会話の場面が増えたときは、楽しいコミュニケーションになることを願っています。(了)

連載情報

柿崎元子のメディアリテラシー

1万人にインタビューした話し方のプロがコミュニケーションのポイントを発信

著者:柿崎元子フリーアナウンサー
テレビ東京、NHKでキャスターを務めたあと、通信社ブルームバーグで企業経営者を中心にのべ1万人にインタビューした実績を持つ。また30年のアナウンサーの経験から、人によって話し方の苦手意識にはある種の法則があることを発見し、伝え方に悩む人向けにパーソナルレッスンやコンサルティングを行なっている。ニッポン放送では週1のニュースデスクを担当。明治学院大学社会学部講師、東京工芸大学芸術学部講師。早稲田大学大学院ファイナンス研究科修士
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