【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第994回】
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。
今回は、現在公開中の『ファーザー』と『プロジェクトV』をご紹介します。
映画館で観たい!『ファーザー』~アンソニー・ホプキンスが“認知症の世界”を体感させる名演技を披露
先日発表された「第93回アカデミー賞」で、主演男優賞(アンソニー・ホプキンス)と脚色賞の2冠を獲得した映画『ファーザー』。
本作は、老いによる喪失と親子の絆を、“認知症の父”の視点から映し出した、感動の人間ドラマ。
新型コロナウイルス拡大による緊急事態宣言延長で、公開延期も検討されましたが、「いち早くスクリーンで観たい!」という映画ファンの声に後押しされて、予定通りの劇場公開が実現しました。
『ファーザー』のあらすじ
ロンドンで一人暮らしをする81歳のアンソニー。記憶が薄れ始めていたが、娘のアンが手配する介護人を拒否していた。
そんなある日、アンソニーはアンから、新しい恋人とパリで暮らすと告げられ、ショックを受ける。しかしアンソニーの自宅に現れた男は、アンと結婚して10年以上になると主張。そしてアンソニーにはもう1人の娘・ルーシーがいるはずだが、その姿はない。
現実と幻想の境界が崩れて行くなか、アンソニーはある“真実”にたどり着く……。
『ファーザー』のみどころ
主演を務めたのは、史上最高齢となる83歳で『羊たちの沈黙』以来2度目のオスカー受賞となった名優アンソニー・ホプキンス。
自身と同じ名を持つアンソニー役を演じるにあたって、彼は自分の父親が入院していたときの様子を参考にしたとのこと。「自分の父を演じた」と語るその演技は、繊細かつスリリング。
お気に入りの腕時計がいつもの場所に見当たらない。自分ひとりで暮らしているはずの家のなかに、見知らぬ男がいる……。
記憶と時間が曖昧になり、次から次へと突きつけられる現実に困惑するその様子に、私たち観客も、まるで彼が棲む“迷宮”に入り込んでしまったかのような錯覚に陥ってしまいます。
そして、アンソニー・ホプキンスと互角に渡り合うもうひとりの名優、アン役のオリヴィア・コールマンの存在感も見逃せません。
今年度アカデミー賞では「サプライズ受賞」とも呼ばれている、アンソニー・ホプキンスの主演男優賞受賞。前哨戦では43歳の若さで逝去したチャドウィック・ボーズマンの受賞が有望視されていましたが、本作を観れば、誰もがアンソニー・ホプキンスの受賞に納得することでしょう。
下馬評をも覆すほど、名優の最高レベルの実力が発揮された作品。それが、『ファーザー』。この至高の映画体験を、スクリーンで是非。
コチラも映画館で観たい!『プロジェクトV』~新たなアクションに挑み続ける、ジャッキー・チェン最新作
香港が誇る世界的アクションスター、ジャッキー・チェン最新作。VIPの警護を任務とする特殊護衛部隊“ヴァンガード”の活躍を描いた、アクション・エンターテインメント。
銃撃戦、肉弾戦、カーチェイスとめくるめくアクションシーンの連続に、手に汗握ること間違いなし。みんなが大好きな“オールタイムアクションレジェンド”ジャッキー・チェンが、ここにいる!
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『ファーザー』
2021年5月14日(金)から全国ロードショー
<スタッフ>
監督・脚本:フロリアン・ゼレール
脚本:クリストファー・ハンプトン
撮影:ベン・スミサード
編集:ヨルゴス・ランプリノス
美術:ピーター・フランシス
<キャスト>
アンソニー・ホプキンス、オリヴィア・コールマン、マーク・ゲイティス、イモージェン・プーツ、ルーファス・シーウェル、オリヴィア・ウィリアムズ
原題:THE FATHER
宣伝:ロンングライド
配給:ショウゲート
(C)NEW ZEALAND TRUST CORPORATION AS TRUSTEE FOR ELAROF CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION TRADEMARK FATHER LIMITED F COMME FILM CINE-@ ORANGE STUDIO 2020
公式サイト https://thefather.jp/
『プロジェクトV』
大ヒット公開中
脚本・監督・プロデューサー・アクション監督:スタンリー・トン
出演:ジャッキー・チェン、ヤン・ヤン、アレン、ムチミヤ、シュ・ルオハン、ジュー・ジャンティン、ジャクソン・ルー
原題:急先鋒 英題:Vanguard
配給:ツイン
(C)2020 SHANGHAI LIX ENTERTAINMENT CO.LTD ALLRIGHTS RESRVED
公式サイト https://projectv.jp/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/