東京都医師会理事で順天堂大学総合診療科教授の小林弘幸氏が5月26日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。呼吸の量や質を上げる方法について解説した。
飯田浩司アナウンサー)コロナが重症化しやすい一例として、肺の機能が衰えていて、免疫力が低いときだと言われています。小林先生は肺を鍛えることを提唱していらっしゃいますが、具体的な方法としてはどうしたらいいですか?
小林)まず基礎知識として、「一回換気量」という言葉があります。これはぜひ皆さんにも覚えていただきたいです。要するに、一度の呼吸で取り込める酸素量のことです。安静時の一回換気量はおよそ500ml、おおむね400~600mlの間です。1回呼吸をすることによって、この量の空気が呼吸器のなかを出入りしています。ただ、一回換気量のうち150mlは、ガス交換が行われない「死腔量」というものです。ではどう鍛えるのかというと、一回換気量を増やせればいいのです。例えば500mlを1000mlにすれば、150mlを引いても850mlですよね。これを「肺胞」に届けることができます。そこがポイントになって来ると思いますね。
飯田)なるほど。では、量をたくさん吸えるようになるためには、どうすればいいですか?
小林)やはりまずはタバコですね。タバコをやめることが重要だと思います。
飯田)禁煙して、いまある肺胞を少しでも破壊させないようにするということですね。それ以外に何か、質のいい呼吸をするための方法はありますか?
小林)呼吸する場合は口呼吸ではなく、鼻呼吸が重要なのです。哺乳類で口呼吸をしているのは、実は人間だけです。人間は言葉を発することを覚えたので、どうしても口を開くことが多くなって、口呼吸を頻繁にするようになってしまったのです。そういう過程を踏まえて、なぜ口呼吸がよくないかというと、口呼吸の場合は冷たい空気が直接肺に入ってしまいますよね。鼻呼吸では、いったん鼻の粘膜を通るので温められます。それから肺胞まで届くので、肺胞へのダメージがとても少ないのです。
また、口呼吸すると乾燥してしまい、唾液量が急激に減るのです。唾液は何が重要かというと、いろいろな活動をしていますが、その1つに免疫機能があります。唾液量が減ると、免疫のいわゆる役人のような「IgA」というものがあるのですが、これが減ってしまいます。我々で言うと、ミサイル部隊がなくなってしまうようなものです。
飯田)最初の一撃が入らないということですね。
小林)そうです。鼻呼吸だと、唾液量がきちんとありますので、それが保たれます。しかし、口ばかり開けていると乾燥してしまって、どうしてもIgAが減ってしまい、免疫の関係からするとかなりの痛手です。他にも、口呼吸をしていると細菌に感染しやすくなり、繁殖しやすくなってしまうため、悪いことしかありません。そう考えると、やはり一度どこかで意識して、毎日3分でもいいので、鼻呼吸の訓練をやっておくといいのではないかと思います。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます