「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。
6月の日本を彩る「あじさい」の花。我が家の庭で、あるいは名所へ足を運んで、花を愛でる……梅雨時の鬱陶しい季節ですが、パッと華やかな気分になりますね。東京近郊では古都・鎌倉が有名ですが、コロナ禍における密集を避けるため、週末の拝観を行わない古寺もあります。そんなときだから、やっぱり「駅弁」! なかには花のように、盛り付けにこだわった駅弁もあります。今回はあじさいにちなんだ、彩り華やかな駅弁に注目しました。
東海道本線の大船と三浦半島・久里浜の間を結ぶ横須賀線。列車は東海道本線から東京を経由して、総武本線・外房線・内房線・成田線方面へ直通しています。東京から鎌倉・逗子までは約1時間の旅。東京~大船間は、東海道線の小田原・熱海方面行の列車と比べて、若干空いているのが嬉しいですね。去年(2020年)の冬にデビューしたE235系電車に出逢う機会も、ずいぶんと多くなりました。
線路が円覚寺の境内を横切る北鎌倉で横須賀線の列車を下り、神社仏閣を巡りながら、ぶらぶらと歩くのは、鎌倉散策の定番。三方を山に囲まれた鎌倉の中心部へは切通(きりどおし)を通らないと入ることができません。「銭洗弁天」と書かれた案内板に導かれて鎌倉七切通の1つ、国の史跡に指定された亀ヶ谷坂(かめがやつざか)へ。とくに鎌倉側は急坂で、亀が坂を登れなかったことが坂の名の由来になったとの言い伝えもあります。
(参考)鎌倉観光公式ガイドほか
そんな6月の鎌倉散策気分を駅弁で楽しむなら「あじさいちらし」(1000円)。大船を拠点に駅弁を製造する「大船軒」が、長年手掛けている駅弁です。近年は季節販売だったり、2年ほどお休みした時期もありましたが、1年前の令和2(2020)年6月1日から現在の形で通年販売されています。大船駅はもちろん、東京駅や新宿駅でも販売がありますので、東京にいながらでも鎌倉の旅気分が味わえます。
【おしながき】
・あじさいちらし(酢飯、錦糸玉子、海老酢漬け、帆立煮、穴子煮、いくら醤油漬け、おぼろ、トラウトサーモン燻製、びんちょうまぐろ燻製、椎茸煮、小鯛酢漬け)
・鯵の押寿し(2カン)
・醤油
・ガリ
大船軒によると、地元の皆さんからの復活を希望する声に応える形でリニューアル発売に至ったという「あじさいちらし」。酢飯の上にえび・ほたて・あなご・いくら・サーモン・まぐろ・鯛のたっぷりの海鮮と、おぼろ・錦糸玉子が彩りよく載って、梅雨時の憂鬱な気分を、パッと華やかにしてくれます。これに大船軒伝統の「鯵の押寿し」が2カン入って、飽きがこない構成になったのも嬉しいところ。やっぱり、駅弁は地元に支えられる存在ですね!
北鎌倉のあじさい寺として知られる明月院ですが、昨今の事情を鑑みて、6月の土・日は「閉門」と案内されています。ご近所の皆さんは、平日にゆったりと鑑賞できそうですね。その意味ではみんなで一緒に働き、一緒に休むという生活様式も、コロナ後の時代には合わないのかも。密にならないということは、他の人に流されず、自分の頭で考え、自分に合った働き方、そして休み方を、自分自身で作っていくことなのかも知れません。
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連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/