「食品ロス」をなくすため “牛乳は手前から取りましょう”
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黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(7月5日放送)に食品ロス問題ジャーナリストの井出留美が出演。日本における「食品ロス」の問題について語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。7月5日(月)~7月9日(金)のゲストは食品ロス問題ジャーナリストの井出留美。1日目は、食品ロスを減らすために消費者がするべきことについて---
黒木)「食品ロス」という言葉はよく聞きますが、井手さんはその問題を扱うジャーナリストということです。食品ロスに関心を持つようになったきっかけは何だったのですか?
井出)最初は2008年です。当時、食品メーカーの広報室長を務めていて、はじめてフードバンクというものに関わりました。まだ食べられるのだけれど、缶詰の缶が凹んでしまって売り物にはならない。そのようなものを必要な方に届けるという活動にまず関心を持ちました。私は3月11日が誕生日なのですが、そのあとに東日本大震災が起こりました。そこで、たくさんの人が食べ物を求めているのに、理不尽な理由で無駄になっているのを見たのです。
黒木)どのような現場だったのでしょうか?
井出)避難所の人数に食べ物が少し足りなく、平等ではないから配らないとか。
黒木)そのようなことがあったのですね。
井出)あるいは、同じ食品なのだけれど、メーカーが違うために平等ではないから配らないとか。はじめてのことで大変だったのだとは思いますが、「融通が効かないな」と思いました。
黒木)そこで井出さんが設立されたのが「office3.11」ということなのですか?
井出)そうですね。私の誕生日という意味もありますし、自分の働き方を変えた転機になった日ということでもあります。
黒木)食品ロス問題のジャーナリストというのは、どのような活動をなさっているのでしょうか?
井出)生産者さんや食品メーカー、スーパーやコンビニなど、いろいろな方に取材をして記事として発信をしたり、本を書いて出版しています。講演や講義もします。
黒木)2019年に執行された「食品ロス削減推進法」の成立にも協力なさったそうですが、わかりやすく教えていただけますか?
井出)これは「すべての人が食品ロスを減らす責任がありますよ」ということを謳ったものです。10年以上前に「食品リサイクル法」というものができましたが、これは食品メーカーやスーパーなど、食品に関わる事業者だけが対象でした。今度のものは消費者の方も農家の方にも責任があるということで、すべての立場の人に「食品ロスを減らす責任がある」という法律です。
黒木)消費者にも責任があるということですが、家庭から出る食品ロスが多いそうですね。
井出)全体の半分近くが家庭から出ています。それに加えて、私がよくスーパーで目にするのは、牛乳などを新しい日付のものを選ぼうと、奥から取る方が多いのです。そうすると、手前の期限が迫ったものが残ってしまいます。残ってしまったものは家庭ゴミと同じように焼却処分しなくてはなりません。その焼却処分には私たちが市区町村に納めている税金が使われているのです。生ゴミは水分が80%以上あります。水を燃やすことは大変ではないですか。コストもかかるしエネルギーもかかるし、環境も汚してしまう。ですので、「すぐに食べるものは、手前から取ろう」ということを呼びかけています。
黒木)はじめて聞きました。
井出)そうなのです。私も「見切り販売」という、値引きしているものは買うのですが、同じ値段で賞味期限が違うものだと、やはりみんな新しいものから取るのですよね。
黒木)奥から取りたくなりますよね。私もその口でした。なるほど、手前から取って行きましょうということなのですね。それが消費者にもできる食品ロスをなくす1つの手段ということですか?
井出)その1歩だと思います。1歩だけでも、みんなでやれば、大きな力になると思います。
井出留美(いで・るみ)/ 食品ロス問題ジャーナリスト
■株式会社office 3.11代表取締役。
■奈良女子大学食物学科卒。博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。
■ライオン、青年海外協力隊を経て、日本ケロッグ広報室長などを歴任。
■東日本大震災での食料支援で食料廃棄に衝撃を受け、自らの誕生日であり、東日本大震災の発生日でもある3月11日を冠した「(株)office3.11」を設立。食品ロスの問題を訴え、2019年施行の「食品ロス削減推進法」成立に協力。
■政府・企業・国際機関・研究機関のリーダーによる世界的連合Champions12.3メンバー。
■食品ロスを全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして、第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門、Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018、令和2年度 食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞を受賞。
■著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』『捨てられる食べものたち 食品ロス問題がわかる本』など。
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毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳