コロナ禍でも自宅でできる「最新のがん検査」  その画期的なシステム

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日本対がん協会によると、2020年の5つのがん検診(胃・肺・大腸・乳・子宮頸)の受診者数は前年比30.5%減。コロナ禍で受診控えが増加しているとみられ、検診の遅れが進行がんに発展するケースも懸念されている。

そんな中、いま注目を集めているのが「HIROTSUバイオサイエンス」が開発した最新のがん検査サービス『N-NOSE(エヌノーズ)』。たった1滴の尿で全身のがんリスクを判定できる画期的な検査方法で、自宅に居ながら気軽に検査を行うことができるサービスだ。

7月17日配信のポッドキャスト番組「OK!Cozyup!週末増刊号」(ニッポン放送 Podcast Station ほか)では、開発者のHIROTSUバイオサイエンス社長・理学博士の広津崇亮氏をゲストに迎え、新行市佳アナウンサーが、最新のがんの検査方法『N-NOSE』に迫った。

株式会社HIROTSUバイオサイエンス代表取締役 広津 崇亮

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新行:コロナ禍の影響もあり、去年はがん検診の受診者が少なくなったと聴きます。もともと日本のがん検診の受診者は、他の国に比べて少ないそうですね?

広津:そうなんです。日本には国が推奨している5大がん検査がありますが、受診率は3~4割ほどで何十年も変わっていません。諸外国は5大がん検査の場合、8割ほどの受診率があるので、日本は受診率が低いまま推移しているのが実情です。

新行:受診率が低い理由は何でしょうか?

広津:日本の場合、検査費用が高いといったこともないのですが、なぜか皆さん行かない。面倒だとか、痛いとか、いろんな理由はあるのですが、それは諸外国も同じなので、日本だけが低い理由は考えても難しい。わからないところです。

新行:そんな中、がんの早期発見・早期治療に繋げようと「HIROTSUバイオサイエンス」が開発されたのが、『N-NOSE』という新しいがん検査の方法。この検査には「線虫」という小さな虫が関係しているそうですね?

広津:線虫は、地球上のどこにでもいる線のようなヒョロヒョロした生き物の総称。土の中や海、どこにでもいる生き物で、地球上の全生物の重さのうち15%を占めると言われています。中でも1 ミリ程度の大きさのシーエレガンスという種類は嗅覚が優れていて、「N-NOSE」ではその優れた嗅覚を利用して健康な人の尿とがん患者の尿を嗅ぎ分けることで検査を行います。

N-NOSEのがん検査

N-NOSEのがん検査

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【N-NOSEのがん検査(1)】
条件を整えた上で1滴の尿と嗅覚に優れた線虫を同じシャーレに置くと、高い精度で線虫ががん患者の尿には近づき、そうでない場合は遠ざかる反応を見せる。N-NOSEでは、その線虫の動きを解析し、がんのリスクを評価する。

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新行:線虫が(尿に含まれる)がんの匂いを嗅ぎ分けるということですか?

広津:シーエレガンスという種類はとても嗅覚が優れています。1つの指標としては、匂い分子を感知する嗅覚受容体の種類が、人間だと400種類、犬だと800種類ほどあると言われているのに対して、この線虫は1200種類もあるのです。

新行:線虫の嗅覚が「がん検査」に役立つという発見はどこから?

広津:もともとの発想はがん探知犬です。以前から嗅覚が優れている犬は、がん患者の検体と健常者の検体を高精度で見分けられるという論文がたくさんありました。ただ、犬を扱うのは難しく、すぐに飽きてしまって探知をしてくれないとか、1日に5検体くらいしかやってくれないという話がありました。そうなると、犬の数がたくさんいないとできませんし、飼育や訓練にもお金がかかるので、検査費用が高くなってしまいます。そこで犬と同じくらいの嗅覚を持っている線虫を使えば出来るのではと思い付きました。

新行:画期的な発見ですよね?

広津:私は線虫の嗅覚をずっと研究してきた研究者なので、嗅覚が優れていることをよく知っていました。しかし、それを世の中に役立てようという発想にはなっていなくて、研究のための生き物だと思っていました。周りのみんなもそうでした。

広津:そんな時にがん探知犬の話を聴いて、世の中に役立つんじゃないかと思い立って、すぐに実験を始めました。1年ほどで「これはいける」とわかりました。

新行:線虫を使った「N-NOSE」のがん検査では、何種類のがんが分かるんですか?

広津:いま証明が終わっているのは15種類です。

新行:そんなに!

広津:ほぼ全身ということになりますが、この15種類に入っていないがん種についても研究が続いているので、これからもっともっと広がっていく可能性があります。
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【N-NOSEのがん検査(2)】
現在、線虫が反応することが分かっているがん種は15種類。胃、大腸、肺、乳、膵臓、肝臓、前立腺、子宮、食道、胆嚢、胆管、腎臓、膀胱、卵巣、口腔・咽頭。

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新行:ほとんど全身のがんを探知できるってことですね!

広津:そうですね。そういう結果になっています。

新行:まず「N-NOSE」で検査をして、がんのリスクがあるかないかを知った上で、その後、病院で細かくがん検診を受けることもできるんですね。

広津:そうですね。これまでのがん検査は、がん種ごとの検査を別々に受けに行く発想でした。そのため、全身網羅的に検査を受けるには何度も病院に通う必要がありました。しかし「N-NOSE」の場合は、一度、尿を提出するだけで15種類のがんのリスクがわかります。まず「N-NOSE」でがんのリスクがあるかどうかを調べて、リスクが高いとなった場合には、がん種ごとの検査を受けに行くと言う流れがあってもいいと思います。

新行:先に一度大きな網にかけて、そこからどんどん絞っていくという感じですね。

広津:その方が効率がいいと思います。

新行:私自身、乳がんや子宮頸がんに関しては定期的に検査を受けていますが、ほかのがん検査を受けたことがあるかと振り返ってみると、確かに受けたことがなかったんですよね。

広津:がん種によってはがん検査がないがん種もあったりします。例えば膵臓がんや肝臓がん。これは死因のワースト5に入っているんですが、肝臓がんや膵臓がんの検査というのは、世の中で皆さんに受けて下さいと言っているがん検査にはないんです。そういったがんは見逃されてしまいますね。

新行:症状が出た時に病院に行ったら、もう進行していたということもありますよね。

広津:特にすい臓がんの場合は見つけるのがすごく難しくて、見つけたタイミングで大体ステージ4になっていて、そのあとの処置ができないことがあります。そのため早期発見の必要があるんですが、早期のすい臓がんに反応するがん検査はありませんでした。しかしN-NOSEでは、早期のすい臓がんに反応することがわかり、近々論文が発表される予定になっています。「N-NOSE」には全身のがんリスクをスクリーニングする意味もありますが、それだけでなく、早期すい臓がんを見つけるがん検査になりえる可能性もあります。

新行:早い段階でリスクを見つけることで、その後の対策や処置も変わってきますよね。

広津:まず、体の負担があります。末期になればなるほど、抗がん剤を使うなど、大変になりますが、早期だと内視鏡でとるといった方法で済むわけですよね。たった1日で。そして金額的なことも大きいです。末期でがんが見つかるのと早期で見つかるのでは10倍くらい違うと言われていますので、早期発見の方が金銭的にもとても楽になります。やはり早期発見するべきなんですよね。

出典:「がん登録・統計」(国立がん研究センター)

出典:「がん登録・統計」(国立がん研究センター)

新行:「N-NOSE」の検査を受けるには、どうすればいいんですか?

広津:いくつかの方法があります。医療機関で受ける方もいますし、会社単位で受けられるような場合もあります。また最近始まったサービスとしては個人の方がネットで予約して簡単に受けられる方法もあります。

新行:自分でネットで申し込んで、自分で検査を受けることができる、自宅で検査をできるということですか?

広津:「N-NOSE」の大きな特徴は尿で検査ができるということ。これまで最も簡便と言われている検体は血液でしたが、血液を自宅で採取するのは難しいですよね。尿だったら誰でも採れますので、「N-NOSE」は自宅でできるのが大きな特徴です。

新行:なるほど。

広津:ネットで申し込みをすると、N-NOSEの検査キットが家に送られてきます。そのキットを使って採尿していただき、尿(検体)を「N-NOSEステーション」に持ってきていただくか、もしくは今、『N-NOSE at home』という新サービスを全国展開しているのですが、これを利用すると検体(尿)集荷に来てもらえるので、とても便利です。

N-NOSE at home

N-NOSE at home

新行:検査結果がでるまでには、どれくらいの時間がかかるんですか?

広津:今、大体1か月くらいです。随分早く結果が出るようになってきているんですが、すぐに結果がでないことにも理由があります。「N-NOSE」ではシャーレの中で線虫が尿に近付いていくか、行かないのかという方法を使ってがんのリスクを調べるんですが、実は1つの検体、1枚のシャーレに対して、何十回と検査を繰り返しているんです。

新行:そうなんですね。

広津:またシャーレ1枚に対して37の工程があるので、膨大な工程を経て結果を出しています。ですから結果が出るまでには時間がかかってしまうんですが、検査の精度を維持するためにはどうしても必要な時間なんです。

新行:検査にかかる費用は おいくらでしょうか??

広津:税抜きだと、検査代だけだと9800円です。そこにキット代とか送料も入りますので、税込12,500円ですね(※「N-NOSE at home」利用の場合は、別途集荷料金がかかります)。

新行:今まで何人くらいの方が実際に検査を受けているんですか?

広津:実用化してから1年半、本格的に実用化して半年ほどが経ちますが、これまで約10万人の方が検査をされています。

新行:検査を受けているのはどれくらいの年齢層の方が多いですか?

広津:多いのは40代・50代ですね。

新行:やはり、がんのリスクを意識する年齢という感じですね。

広津:そうですね。もともとそういった方々に検査を受けて欲しかったんですね。従来のがん検査は60代、70代の方がよく受診されていたんですが、40代・50代で仕事が忙しくて、なかなかがん検査に行かない方たちに「尿を提出するだけで受けられますよ」ということを伝えたかったので、そういう意味では受けて欲しいと思っている方々が受けていることが多いですね。

新行:まさに狙い通りということですね。

広津:そうですね。

新行:実際に検査を受けられた方、N-NOSEを使ってみた方、どんな感想が寄せられましたか?

広津:尿を提出するだけで全身のがんのリスクが低いと言われる「安心感が嬉しい」という感謝の言葉をいただくことが多いです。これまで我々はがんが見つかることに注力していたんですが、実は1回の検査で全身網羅的にリスクを調べるがん検査はほかにはなかったんですね。ですから「安心感が嬉しい」というのは予想外の感想でしたし、1度の尿の提出で全身のがんリスクが検査できる「N-NOSE」だからこその感想だったと思います。

新行:なるほど。

広津:また、「N-NOSE」の検査を受けている方がすごく増えてきているので、「早期がんが見つかりました」「ありがとうございました」という方がかなり増えてきています。例えば、乳がんの方で日頃から気を付けていて、毎年マンモグラフィを受けている方がいました。マンモグラフィでは陰性と言われたけれど、N-NOSEで高リスクと言われたので病院で精密検査を受けると、早期の乳がんが発見されたそうです。

新行:それは嬉しい声ですね。

広津:発見できなければ末期になっていたかもしれないので、「早期に見つけられて良かった」という感謝の言葉をいただくことが増えています。

新行:そう考えると、あらためて線虫ってすごいですね。

広津:検査は機械でやるものというイメージですが、やはり生物の能力ってすごいんです。特に微量のものを他のものに邪魔されずに検知する生物の嗅覚は、機械には真似できません。

新行:線虫の嗅覚を利用して、1滴の尿で15種類のがんのリスクを検査できる『N-NOSE』。この夏、全国各地で自宅に居るだけで検査を受けられるようになります。

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【N-NOSE at home】
検査申込から検体(尿)提出、結果受領までが自宅に居ながら完結できる新サービス。今夏にかけて対象エリアが全国47都道府県に拡大。https://エヌノーズ.com

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新行:そして この『N-NOSE』、実用化された今でも、がん探知の精度を高めるために、いろいろと挑戦が続いているそうですね?

広津:そうですね。いま「N-NOSE」の検査は検査センターで行っていますが、検査に適した線虫の選択や制度を少しでもあげる技術、それらを維持するための努力はずっと続けています。また今よりも精度の高い線虫を作ることも行っています。

新行:精度を高める線虫を作るというのは、どういうことですか?

広津:実は線虫というのは遺伝子組み換えが簡単にできるんです。もともとそうした特徴があるので研究に使われてきたんですが、遺伝子組み換えが2~3週間で出来るんです。そのため、がん検査に関係する遺伝子などを見つけることができれば、その遺伝子をたくさん働かせることによって、精度が高い線虫を作り出すことも可能なんです。

新行:そうなんですね。

広津:また、現在、「N-NOSE」は15種類のがん種のリスクを全身網羅的に見分ける検査なんですが、がん種の特定が出来ないということがあります。そのため、がん種を特定するための線虫も遺伝子組み換えで作ろうとしています。

新行:そうなると、腎臓がんを探知できる線虫、肝臓がんを探知できる線虫が誕生するということですか?

広津:そうです。第一ターゲットは膵臓がんですが、その後、乳がん、大腸がんと広がっていけば、尿を提出するだけで、がん種までわかる可能性があります。これが実現すれば、検査の後に精密検査を受けると特定のがんを見つけることができます。そういった意味では線虫にはまだまだ将来性があるんです。

新行:いまのところ、手応えはどうですか?

広津:がん種特定に関しては、膵臓がんを特定するのに向いている線虫株がいくつか出てきていて、原理は間違っていなそうだということがわかってきています。すでにN-NOSEが早期すい臓がんに反応するという証明は出来てきていますので、がん種も特定できれば、早期に膵臓がんがわかるようになります。できれば来年中には実用化したいと思っています。実用化できれば世界で初めてのことになるので、「N-NOSE」のスクリーニングとは別の意味ですごく注目されています。

新行:2016年8月の創業から5年、「HIROTSUバイオサイエンス」の注目度は年々増していて、時価総額が1000億円を超えたという話も聴きました。

広津:そうですね。ありがたいことに高く評価されていることと、実用化が進んできたことで企業価値が高まっています。1000億円を超えると「ユニコーン企業」という言われ方をよくするんですが、日本においてヘルスケア領域の「ユニコーン」はおそらく初めてではないかと思います。

HIROTSUバイオサイエンスの研究所がある湘南R&Dセンター

HIROTSUバイオサイエンスの研究所がある湘南R&Dセンター

新行:海外からもかなり注目が集まっているんじゃないですか?

広津:そうですね。海外にも全身網羅的ながんリスクのスクリーニング検査や、生物を使ったがん検査はありません。そのため、オーストラリアやアメリカで「N-NOSE」について説明すると、日本以上の驚きがって、早く実用化して下さいと言われます。今は海外に出掛けるのは難しく、少し止まっていますが、今後は海外展開もしていきたいと思っています。

新行:海外でも実際に「N-NOSE」を使ってみたいと言う声があるんですね。

広津:日本よりも大きいです。

新行:海外では日本以上にがんの検診を受ける人たちの割合が大きいので、もともと関心が高いんでしょうね。

広津:そうですね。海外の方は若い頃からそういう教育を受けているのかな、啓発活動が盛んなのかなと予想しますが、がんに対する注目度は日本人よりも高いです。そういう意味では、がん検診を受ける割合が低い日本人の方が自宅で気軽にがん検査ができる「N-NOSE」の技術が活かされるかもしれませんね。

新行:自分が健康な状態で仕事も楽しく出来ていたりすると「検診を受けるのは後回しでいいかな」とか、検診のお知らせが来ても「そのうち受けようかな」と思いがちですよね。知らないうちにずるずると後回しになってしまって、結局、検診を受けないということもありますよね?

広津:そうですよね。がんが怖いのは、症状が出てから病院に行っても手遅れになる場合があることです。何も症状が出ていないときにがん検査を受けなくてはいけないんですね。でも、健康なときに面倒なのに検査を受けに行くかといえば、なかなか難しいと思います。だからこそ「N-NOSE」のような尿を提出するだけでいい、気軽に受けられるがん検査があれば、健康なときでも、毎年、半年に1回でも
受ける気になるんじゃないかと思っています。「N-NOSE」はそのために作ったものでもありますから。

新行:そう考えると、「N-NOSE」が、がん検診を受けるきっかけにもなりそうですね?

広津:そうですね。日本の場合は、がん検診を受けていない方が過半数を超えているわけですからね。やはり興味がないという人や、嫌だという方が多いと思うんですが、簡便に受けられるものがあるということを伝えることによって、がん検査を受ける人が増えることを願っています。

新行:最後に広津さんから、「がん検査」「がん検診」について、お聴きの皆さんにメッセージをお願いします。

広津:がんというのは、健康なうちから検査を受けなくてはならない病気です。これまで面倒な検査が多かったこともあり、受診率がなかなか上がらなかったんですが、今は尿を提出するだけで検査ができる「N-NOSE」があります。しかも7月からは自宅だけで完結する「N-NOSE at home」というサービスを47都道府県すべてで受けることができるようになりました。是非皆さん受けていただきたいと思います。


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