ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月23日放送)に慶應義塾大学教授で国際政治学者の細谷雄一が出演。イギリスで行われたサッカーの試合などでの新型コロナウイルスの実証実験について解説した。
イギリス、新型コロナ実証実験
イギリス政府が6月から7月にかけて行った新型コロナウイルスの実証実験で、サッカーのヨーロッパ選手権8試合に入場した観客合計35万人のうち、およそ6400人の感染が明らかになった。
飯田)イギリス政府が8月20日に発表した報告書で明らかになっています。大規模イベントの再開に向けて実態を調べるという名目でありました。こういうことができてしまうのですね。
細谷)最初に聞いたときは驚きました。ある意味、人体実験ですよね。実際にどのくらい感染が拡大するかということを、わざと大規模なイベントで確認する。この結果を受けて、これから対策を練るということだと思うのですが、イギリスらしいという気がします。
飯田)テニスのウィンブルドン選手権でもやっていたということです。
細谷)イギリスはコロナ禍が始まったときに、ジョンソン首相が、何も対策をせずに感染拡大しても、約7割が免疫を獲得すれば止まるだろうという「集団免疫戦略」をやろうとしたのですが、医療崩壊するということで、急遽、転換しました。イギリスは常に斬新な、さまざまな方法を用いて、失敗しながら修正しているという感じがします。
イギリスやイスラエルの状況を見ながら対策をするべき
飯田)ジョンソン首相ご自身も感染して入院したということがありました。
細谷)ジョンソン首相は、当初はマスクをしないでいろいろなところに行って批判されていました。本人も重症化しかけたところで、どうにか医療の支援によって健康回復したわけですけれども、イギリスはワクチン接種においても先行しています。イギリスやイスラエルがどういう状況になっているか。日本はそのあとを追っているわけですから、それを見ながら同じ失敗を繰り返さないようにしたり、あるいはよい政策を取り入れたりすることができるのではないでしょうか。
感染者数を気にせずに、重症化率、死亡率を見て対策を練っているイギリス~その手前で前に進めない日本
飯田)イギリスでは2回ワクチン接種をした方が大半にのぼるということもあって、この実験ができるということもあったのでしょうか?
細谷)イギリスは現実主義的ですから、少なくとも、いまは感染者数をほとんど気にせずに、あくまで重症化率、致死率などを見て対策を練っていると思います。確実に言えることは、2回接種した場合は、ほとんど重症化や死者が出ていないということです。それによって、次にどういう対策を練るかと。日本はその一歩手前、とにかく感染者を拡大させないというところで止まっていますので、なかなか次のもう一歩が進めない状況だという気がします。
イギリスのサッカー欧州選手権での実証実験では準決勝と決勝での感染者がほとんど~密な状況のなかで大声で叫ぶ人が多かった
飯田)今回の実験でも、準決勝と決勝で感染した人がほとんどだったということで、密な状況、大声で叫ぶ人も多かったという分析もされているようです。逆に言うと、望むべき行動も炙り出されて来るわけですね。
細谷)そうですね。やはりマスクをつけて大声を出さない、密にならないという行動変容と、人流抑制です。これに効果がないということではないと、もうわかっているわけです。
飯田)あとはデルタ株のような感染力の強いものが入って来ると、また変わって来るということになるのでしょうか?
細谷)さらに変異が起きるだろうと言われていますから、これから苦しい対応が続いて行くのだと思います。
経済へ配慮せざるを得ないイギリス
飯田)結局、クリアカットな正解というより、常に経済とのバランスを取りながら微修正という形になって来るのですか?
細谷)そうですね。特にイギリスの場合、ちょうどEU離脱とも重なっていまして、数百年に1度の経済状況の悪化が指摘されています。そういうこともあって、日本よりもはるかに経済への配慮をせざるを得ない状況にある。経済へ配慮したときに、感染を完全に止めるのではなく、ある程度、それを許容しながら両立させる方法を模索していると思います。
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