キャスターの辛坊治郎氏が11月2日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演。10月31日に京王線の電車内で発生した刺傷事件を受け、緊急事態の発生した車内から乗客が停車駅で逃げる手段・システムについて私見を述べた。
「死刑になりたい」人物に対する「再発防止」の難しさ
10月31日に東京都調布市を走行していた京王線の特急電車内で男性が胸を刺され重体、16人が怪我をした事件を受けて、斎藤国土交通大臣は11月2日、大手鉄道会社の安全統括責任者を集めて再発防止に向けた検討会議を開いた。
辛坊)「再発防止」は、言わざるを得ないし大切だから言った方がいいのだけれども、現実に防ぐのはなかなか……。この話は防犯カメラの設置などの話ですよね。
増山)そうですね。
辛坊)でもそれは、犯人がですよ、捕まらないことを想定してなくて、捕まって死刑になることを目的にというのでは、防犯カメラを付けていてもそれは抑止力にならない。逃げちゃうつもりなら防犯カメラは有効かもしれませんが、はなから捕まるつもりヤツには、まったく有効ではないので、そういう精神状態にならないようにどうやって社会にするかということを考えていくしかないので。それで今回の事件ですが、今回は「死刑になりたくて」という話でしょう。これはどうやったら防げるのというと、なかなか難しいよね。
増山)ええ。
加速できなくなる「非常用ドアコック」と、位置が合わないと開けられない「ホームドア」
辛坊)今回、服部容疑者は午後7時54分に調布駅で上りの特急電車に乗車しています。それで乗客の男性(72)に殺虫剤を噴射したあと、胸をナイフで刺しています。それから移動して、ライターのオイルを撒いて放火すると。それで電車が近くの駅に緊急停車するのですが、そのときドアが開かなかったので、ドアが開かなかったので乗客は窓から降りました、と。
増山)そうでしたね。
辛坊)なぜドアが開かなかったのかというと、鉄道会社側の説明によると、(停車した駅には)ホームドアが設置されていて、ホームドアの(扉の)設置されているところじゃないと(車両の)ドアを開けても目の前にホームがなくて降りられない状況であると。じゃあ、そのホームドアがあるところまで(車両を)移動すればいいのではという話なのですが、今回ホームドアに位置に運転手が(車両を)移動しようと思ったら、ドアを開閉する非常用のドアコックが操作されていて、こうなると、電車を加速できなくなると。
増山)ええ、そうなのですね。
辛坊)これ、ええっ!? という話で、そもそもそういうことを想定してシステムを組んでいないらしいですね。いやこれ、私知らなかったのですが。
そもそも今回のプロセスはまず乗客が非常ボタンみたいなものを押したので列車は停車する方向性だったと。これは鉄道会社が推奨している方法なのです。今回、乗客はまず非常通報装置を押したのです。非常通報装置が押されたので、乗務員は電車を減速させたと。それでホームで止まろうとしたのですけれど、ホームの手前で止まってしまったのはなぜかというと、乗客が非常通報装置に続いて、それとは別の非常用ドアコックというのも操作して。この非常用ドアコックが操作されると、運転士が電車をもういちど加速させようとしてもできなくなると。だからホームドアまでたどり着きませんでしたと。
日本のホームドアはある意味「不完全」だからまだいいという。これ、どういうことかというと、日本ってホームドアの設置が意外と遅れているのですよ。日本って何でもかんでもアジアのなかではいちばんと思っている人が多いかもしれませんが、例えばシンガポールや台湾の鉄道に比べるとはるかに遅れていて、シンガポールや台湾の鉄道って完全にホームドアがあったりしますからね。自分で体験した話ですけれども、ある国のホームドアは、列車の高さより高いのですよ。
増山)そんなに!
辛坊)完全に上まで閉鎖されている。だからドアの位置とホームドアの位置がシンクロしないと、列車のドアが開いても、巨大な壁だから出られないというケースがあるのですよ。
増山)ええ。
辛坊)日本は多くのホームドアは、全部ではないのですけれど、高さが低くて乗り越えられるものというのが割と中心ですよね。あのホームドアならホームドアがないところでも列車側のドアさえ開けば、今回のようにそれを越えて飛び降りるということができる。上のほうまである厳重なホームドアの方が通常運行のときには安全なような気がするのだけれど、じゃあ車両火災とか今回みたいに火をつけられたときに緊急で列車から降りようとしたときに、ドアを開けてもその向こうが巨大な壁ということもありうるので。
増山)どうしようもなくなっちゃいますよね。
辛坊)これはある意味恐ろしいなと。
増山)ああ、どこまで考えていればいいのか。
辛坊)結局、世の中のシステムってこういう事件を想定しているわけじゃないよね。人間は基本的に青信号で渡りましょう、赤信号になったら人は止まります、車も止まりますということを性善説に基づいて世の中のシステムが組まれているので、それを破る人間が現れたときにどうするかというところの発想までは、すべてに備えるわけにはいけないというところが難しいところがあるのですが。
増山)ケースバイケースですね。
辛坊)ただあの非常用ドアコックが操作されると電車が加速できなくなるというシステムはそれは恐らく安全を考えてそうしてあるのだと思うのだけれど、どうなのだろう、それでいいのだろうかと。
増山)いや、ちょっと悩みどころですね。
辛坊)システムの根本的に、緊急事態のときにどうするかというのを見直した方がいいだろうなと、今回の事件を受けてつくづく思いました。
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番組情報
辛坊治郎さんが政治・経済・文化・社会・芸能まで、きょう一日のニュースの中から独自の視点でズームし、いま一番気になる話題を忖度なく語るニュース解説番組です。
[アシスタント]増山さやかアナウンサー(月曜日~木曜日)、飯田浩司アナウンサー(木曜日のみ)