東京都医師会会長の尾﨑治夫氏が11月10日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。新型コロナのワクチン接種体制の現状と今後について解説した。
日本の新型コロナワクチン接種率 ~欧米諸国を抜いてさらに伸びている
飯田浩司アナウンサー)新型コロナウイルスのワクチン接種体制の現状について伺いますが、数字を見るとかなり順調に進んで来たということでいいでしょうか?
尾﨑)そうですね。欧米では、接種率が1度は伸びたのですが、ある程度行ったところで急に緩やかになっている国も多くあります。日本の場合は、直線的に伸びています。イギリスやフランス、ドイツなどの先進国を抜いてしまいました。スタートは出遅れたのですが、その後は順調に進んでいるのだと思います。
いろいろな形での集団接種
飯田)個別・集団の2本立てで行いました。集団接種も企業による接種や、商工会議所と組んだものなどいろいろな形を取りました。やはり網の目のように張りめぐらすということが大事でしたか?
尾﨑)そうだと思います。個別接種において、高齢者は持病を持っていることが多いですので、かかりつけの先生のところで打つのがベストだと思いましたし、若い方は病気のない方が多いので、むしろ集団で集まって打ってもらう方がよかった。個別と集団の両方があり、しかも多方面から打つ状況をつくったということが、スムーズに接種率が広がって行った要因ではないかと思います。
日本での子どもへの接種は慎重に考えた方がいい ~アメリカとの状況の違い
飯田)この先を考えると、2つ取り沙汰されていることがあります。1つはブースター接種で、もう1つは子どもへの接種。アメリカでは子どもの接種が始まるという報道がありましたけれど、どう見たらいいですか?
尾﨑)アメリカの場合、大人の方は政治の問題、共和党と民主党での違いや宗教上の問題もあって、ワクチンの接種率が頭打ちになっています。そのため、大人のなかで免疫を持っていない人が多いということと、お子さんにもそれが拡がって、お子さんの間でも亡くなられる方が出ているため、子どもへの接種を進めるという状況になっているのだと思います。
飯田)接種する必要があると。
尾﨑)日本はどこから感染するかと言うと、お子さん同士というよりは、家庭内にお父さんやお母さんが持ち込んで感染するというケースがほとんどなのです。
飯田)そうですね。
尾﨑)ですから、お父さんやお母さんがワクチンを打って免疫を付けてもらえば、お子さんには入り込まないのです。ですので、日本の場合は環境的に、また、これまでのデータを見ても、無理して小さいお子さんに打って行くということではなく、慎重に検討した上で行った方がいいと思います。
mRNAワクチンは、3回打って1つの完成形になる
新行市佳アナウンサー)3回目の接種についてはどうお考えでしょうか?
尾﨑)当初はワクチンを2回打つと免疫ができて、95%ぐらいの割合で発症予防、重症化予防ができるというデータが出たので、2回でいいのではないかと言われていました。しかし、実際に何ヵ月も経ちますと、抗体が落ちてしまうという現実がわかって来たわけです。
飯田)海外の例からも。
尾﨑)そのため8ヵ月くらいしたら、3回目を打った方がよいのではないかというのが、各国共通の認識になっています。やはり日本でも3回目は必要なのだろうと思います。
飯田)3回目接種は必要。
尾﨑)長い目で見るとmRNAワクチンは、3回打ってようやく1つの完成形になるのだと思われた方がいいと思います。「2回打って終わりでいいのではないか」という予測だったわけですが、現実は、3回打つことが大事なのだという方向に変わって来ています。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます