絵本作家・田島征三 木の実を集めてつくった唯一無二の絵本
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黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(11月11日放送)に絵本作家の田島征三が出演。木の実を使った作品について語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。11月8日(月)~11月12日(金)のゲストは絵本作家の田島征三。4日目は、木の実を使った作品について---
黒木)流木や木の実を使った空間アートのようなこともなさっている田島さんですけれども、『ガオ』という絵本を見せていただいたのですが、絵と木の実が合体した見たことのない絵本ですね。
田島)世界中探してもこういうものはないと思います。
黒木)この木の実を1つ1つつくられたのですか?
田島)シロダモという赤い実のなる木ですけれども、その木が僕を呼んでいるという感じで行ってみるといっぱい落ちていて、「これは拾って行こう」と思って拾って並べたのです。どんどん色が変わるので、ダメになるとまた次の年ということで、3年かかってつくったのです。それを見て都会のお母さんたちは「気持ち悪い」と言うのです。
黒木)どうして?
田島)ごちょごちょといっぱいあるから。そういう人がいるのですよ。
黒木)そうなのですか?
田島)でもそういうものを子どもは大好きなのですよ。
黒木)すごく面白いですよ。
田島)面白いでしょう。校正刷りを新幹線のなかで見ていたら、後ろにいた子がいつの間にか足元にいて、最後にはぶんどって自分の席へ持って行ってしまったのですよ。「もう離せない」というようになってしまったのですね。
黒木)子どもは好きですよね。木の実をすぐ拾いますし。
田島)この絵本は出版されて20年近くになりますが、いまでも「すごい」と言ってくれる子どもたちも大人もいるので、いまもっとすごいものを木の実でつくっている最中です。
黒木)3年かかったというのは、根気もいりますね。
田島)いまやっているものは既に15年くらい経っているのですけれども、絵本シリーズの「こどものとも」が2022年11月号で800号になるのです。その800号の作品として『木の実の冒険』という絵本をつくっているのです。これは描いているのではなくて、つくって立体になったものをいろいろなカメラマンが写真に撮って、それをトリミングして本にしているのです。これが、なかなか思った通りの写真が撮れなくて、これからも時間がかかりそうです。
黒木)これはすごく大変だろうなと思いますし、もちろん絵で描いた方が早いのかも知れませんけれども、この発想がまたすごいですね。
田島)木の実もたくさん集まると迫力があるのです。亡くなられた宮迫千鶴さんというエッセイストで画家の方に言われたのが、木の実はもともと生きているものだったので、こうやって並べられても「1つ1つの木の実が生きていたときの記憶を持っていて、それが迫力を持って人々に感動を与えるのだ」ということを言ってくれました。やはり木の実たちの持っている力というのはすごいと思います。
田島征三(たしま・せいぞう)/ 絵本作家
■1940年・大阪府生まれ。幼少期を高知県で過ごす。
■多摩美術大学図案科卒業。東京日の出町で、ヤギやチャボを飼い、畑を耕す生活をしながら絵画、版画、絵本などを創作。
■1965年、初めての絵本『ふるやのもり』を出版。
■1969年、『ちからたろう』で第2回ブラチスラバ世界絵本原画展・金のりんご賞を受賞。後に同展国際審査委員を務めるなど日本を代表する絵本作家として活動。絵画・絵本・イラストレーション・エッセイ・造形作品等を発表し続けている。
■1998年より静岡県伊豆高原に移住し、木の実との新しい出会いもあり、近年、木の実など自然の素材を使ったアートを本格的に展開している。
■2009年、新潟県十日町市の廃校になった小学校を丸ごと絵本にした『空間絵本』を制作。廃校となった小学校の校舎を再利用し「絵本と木の実の美術館」を開館した。
■2011~2018年、日中韓平和絵本プロジェクトに尽力。
■2013~2019年、香川県大島のハンセン病元患者の療養所で、『青空水族館』『森の小径』『Nさんの人生・大島七十年』を制作。
■傘寿を迎えた2020年、少年時の原体験をモチーフにした絵本『つかまえた』で、生きものの命と向き合った生々しい感触を躍動的に再現するなど、デビュー以来、半世紀以上にわたって常に斬新で意欲的な挑戦をし続けている。
■2021年「第56回ENEOS児童文化賞」を受賞。
番組情報
毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳