「外交ボイコット」という呼び方の不思議 ~中国に正しいメッセージを伝えることが大切

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月17日放送)に外交評論家・内閣官房参与の宮家邦彦が出演。岸田総理の北京冬季五輪への不参加表明について解説した。

「外交ボイコット」という呼び方の不思議 ~中国に正しいメッセージを伝えることが大切

中国の中央人材工作会議が27日から28日まで北京で開かれ、習近平共産党総書記・国家主席・中央軍事委主席が出席し、重要演説を行った。2021年9月29日 〔新華社=中国通信〕中国通信/時事通信フォト 写真提供:時事通信社

岸田総理が北京オリンピックの不参加を表明 ~一方、ロシアのプーチン大統領は出席へ

岸田総理大臣は12月16日の参議院予算委員会のなかで、2022年2月からの北京冬季オリンピック・パラリンピックについて、「いまのところ私自身の参加は予定していない」と述べた。一方、ロシアのプーチン大統領は12月15日に行われた中国の習近平国家主席とのオンライン首脳会談で、北京オリンピックの開会式に出席することを表明した。アメリカなどが外交ボイコットを表明するなか、ロシアと中国は友好関係を強調した形となった。

飯田)岸田さんご自身は行かないとの明言がありました。

「外交ボイコット」という呼び方は正しいか

宮家)この「外交ボイコット」について、今週の「ジャパンタイムズ」に英語でコラムを書きました。

飯田)ジャパンタイムズに。

宮家)個人的な意見ですが、「外交ボイコット」とは何であるかと問うたのです。8年前になりますが、ソチオリンピックのときにオバマさんは、ミシェル夫人と当時のバイデン副大統領を派遣しませんでした。いまと同じような状況なのですが、当時それが「外交ボイコット」と呼ばれた覚えはありません。

「不快感の表明」である

宮家)「ボイコット」と呼ぶか呼ばないかは別として、要するに「不快感の表明」であることは間違いないわけです。それが1つ。

外交官は威嚇も強制もしない ~正しいメッセージを中国に伝えることが大切

宮家)2つ目に、「外交ボイコット」という言い方は、形容矛盾ではないでしょうか。「ボイコット」というのは、いろいろ威嚇したり強制したりしながら、不参加や不買などの形で不満を表明するのですが、外交官は威嚇や強制はしませんよね。

飯田)仕事として。

宮家)定義上ね。だから外交ボイコットというのは、不思議な感じがします。「外交」と呼ぶかどうか、呼ぶのだとしても、「ボイコット」と呼ぼうが呼ぶまいが、不満の表明であることに間違いはないわけだから、「正しいメッセージが向こうに伝わるかどうか」の方が大事だと思います。

飯田)「正しいメッセージが向こうに伝わるかどうか」の方が大事。

宮家)今回、アメリカが「ボイコット」という言葉を使ったのは、強い意味を込めたかったからだろうと思います。そういう定義が国際法にあるわけでも何でもないですからね。日本がどういう立場を取るにせよ、正しいメッセージをきちんと送ることが大事です。

メッセージを送ると同時に、日本はアメリカに倣うことはない

宮家)国際社会の一員として、「普遍的な価値を守って欲しい」という強いメッセージを出すことと同時に、その枠のなかで、日中関係を考える。中国と日本の関係には歴史があるし、同じ地域ですし、複雑です。簡単にアメリカが「ボイコット」と言っても、随従する必要はないと個人的には思います。

飯田)アメリカに倣うことはない。

宮家)そこで敬語のコラムでは「どう呼ぶかは別として、言うべきことは言った方がいい」というようなことを書いたわけです。きょうのニュースを見たら、総理が行くことはないらしい。そういうことですよね。それから新聞では、日本政府は「ボイコット」と呼ぶか呼ばないかについても、「そういう言葉は使わないかも知れない」というような観測記事もありましたね。

飯田)ありました。

宮家)どちらでもいいのですが、要するにメッセージの方がはるかに大事だということだと思います。

日本はどうするのか ~「欧州諸国がどのような動きをしているか」を見極めてからでも遅くない

飯田)メッセージの部分で、岸田さんはどうするのか。「国益を鑑みて判断する」とおっしゃっていますが、ここに至るまで、はっきりとした明解なメッセージは出ていないように思いますけれど。

宮家)私が「ジャパンタイムズ」に書いたのは、「何か言う前に、今は外交の季節ですよ、外交の時期ですよ」ということです。つまり中国も含めて、日本は水面下でメッセージを送る。そして、中国には態度の変更を求める。同時に、アメリカを含む同盟国、友好国が、どのような態度に出るか。ボイコットと呼ぶかどうかは別にして、最も大事なことは、国際社会が一致して強いメッセージを送ることです。欧州諸国がいま、どのような動きをしているか、日本はそれを見極めてからでも遅くないと思います。

ボイコットすべきかどうかの議論はもっとした方がいい

飯田)ここのところ、国内で安倍元総理や高市政調会長、あるいは野党では志位共産党委員長などから、「もういい加減、日本もしっかりとしたメッセージを出すべきだ」と、「ボイコットすべきだ」という声が出て来ています。

宮家)そういう議論をもっとするべきだと思います。いままで言わないで来たことも事実ですからね。

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