名作漫画と和菓子の関係
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「報道部畑中デスクの独り言」(第277回)
ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、名作漫画と和菓子の関係について---
新年おめでとうございます。本コラムも開始以来、5度目の正月を迎えました。今年(2022年)も恒例の「スイーツ」の話でスタートさせていただきます。
ここでクイズです。次の英語は何を指すでしょうか?
「Sweet Red Bean Paste in Pancakes」
パンケーキのなかに、甘く赤い豆のペースト=小豆あんが入っている……そう、どら焼きです。
この英語、実は見慣れた場所にあります。大手コンビニの商品には最近、日本語に加えて、このような表記がされているのです。どら焼きの他にもこんな商品があります。
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(1)Rolled Omelette with Soup stock
(2)Rice Soup with Crab
(3)Spicy Rice Crackers and Peanuts
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さあ、これらは何でしょうか? (※正解は小欄最後にあります)
コンビニに入った際は、他の商品がどう記されているかチェックをしてみるのも一興かと思います。新型コロナウイルス感染症の影響で、外国人の訪日は依然厳しい状況ではありますが、日本は「観光立国」を標榜しています。英語表記自体は定着しつつあるということでしょう。
この「どら焼き」、由来は諸説あれど、形が楽器の「銅鑼(どら)」に似ていることからついたというのが定説のようです。
何でも江戸時代からあったそうですが、いまの形になったのは大正時代のころと言われています。どら焼きは和菓子の部類に入りますが、カステラ生地のパンケーキにあんこをはさんでいるので、和洋折衷のお菓子にもみえます。
一方、私自身、幼少のころ食したどら焼きはこのような名前ではありませんでした。それは「千なり」と言いました。名古屋にある菓子司「両口屋是清」のこの商品は、表面に地元、豊臣秀吉の馬印「千なり瓢箪」模様が放射状に描かれています。上品な甘さがありがたいお菓子で、おみやげや親戚への訪問でいただいたものでした。
また、カステラでおなじみの文明堂では「三笠山」という商品名がついています。奈良県には若草山という標高340mほどのなだらかな山があり、「三笠山」の通称がありますが、どら焼きがその姿に似ているということで、関西ではこの名前で親しまれています。
「千なり」「三笠山」……各地によって呼び名はさまざまですが、私にとってパンケーキにあんこをはさんだこの菓子を「どら焼き」たらしめたのは何か……もちろんあの名作漫画のおかげです。そう、「ドラえもん」です。
外国人にはもはや「DORAYAKI」で通じるという話も聞きますが、それはドラえもんのなせる技でしょう。LINEでは「どら焼き」と打つと、スタンプ候補にどら焼きに囲まれたドラえもんが出て来ます(ちなみに有料)。
作者の藤子・F・不二雄さんは東京・新宿にある「時屋」という甘味処で、名物のどら焼きをよく食していたそうで、それがドラえもんの「どら焼き」のモデルと言われています。ドラえもんファンにとっては「聖地」の1つではないでしょうか。私も足を運んだことがありますが、ここのどら焼きはふっくらとして食べ応え十分です。
漫画ではどら焼きのシーンが何度となく出て来ますが、私にとってはこの2話が印象に残っています。
1つは「遠写かがみ」。鏡に写った「画像」を、近くのガラス窓や水たまりなど、反射するものに映し出すという道具で、のび太とドラえもんの2人は、これを客足が乏しい和菓子店を立て直す広告に使います。しかし、押しつけがましい広告に客は激怒し、逆効果に。
店仕舞いをしようとする店主が、2人に店の和菓子を振る舞います。どら焼きやきんつば、だんごを食べる2人が偶然映し出され、それを見た客が店に殺到するという話。ビジネスの視点で見ると、マーケティングの妙を感じさせる話ですが、どら焼きを頬張るドラえもんはまさに“至福”の表情です。
もう1つは「イキアタリバッタリサイキンメーカー」。さまざまな「細菌」をつくることができる機械ですが、「ドラや菌」なる、空気がある限りどら焼きが無限に大きくなる細菌が偶然生まれ、のび太の家が押し潰される危機を迎えます。その顛末は……詳しくは原作をご覧あれ!
ちなみに、どら焼きが大好物のドラえもんですが、意外や意外、第1話でドラえもんが最初に食したのはどら焼きではなく「お餅」。これも1つのトリビアですね。
第1話はお正月、餅を食べながらのんびりと過ごす、のび太の部屋の風景から始まります。その後、のび太はドラえもんから波乱万丈の未来が待っていると知らされるのですが……。
2022年は平和か、波乱万丈か、どんな年になるのでしょうか。本年も「報道部畑中デスクの独り言」を、よろしくお願いいたします。(了)
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