方向性がわからない 岸田首相の施政方針演説

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月18日放送)にジャーナリストの有本香が出演。通常国会で行われた岸田総理の施政方針演説について解説した。

2022年1月17日、衆議院本会議で施政方針演説を行う岸田総理~出典:首相官邸HP(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202201/17shiseihoshin.html)

通常国会召集、岸田総理大臣が施政方針演説

1月17日、通常国会が召集され、岸田総理大臣が施政方針演説を行った。岸田総理は感染が拡大するオミクロン株など、新型コロナウイルスへの対応が最優先の課題と強調した。

飯田)「まずは新型コロナに打ち克つことに全身全霊で取り組んで参ります。皆で協力しながら挑戦し、コロナ後の新しい日本をつくり上げて行こうではありませんか」と強調したということです。コロナのみならず、いろいろな課題が出て来ています。

有本)いま読んでいただいた「新型コロナに打ち克つことに全身全霊で取り組んで参ります」という言葉もそうなのですが、全般的に耳に残らないのです。岸田さんの演説は、不思議なのですが、聞いたことのあるような言葉がちりばめられていて、内容的にもかなり総花的で、耳に残る言葉が本当に少ないという印象です。

方向性がわからない施政方針演説だった

有本)「新型コロナに打ち克つことに全身全霊で取り組む」というのは、「ウィズコロナ」ではないのです。総理のなかにイメージをお持ちなのだろうかと、疑問に思います。何となく聞こえがよさそうな言葉を並べているように感じます。都道府県知事の「まん延防止」要請についても、簡単に受け入れていて、「中途半端なコロナ撲滅に向かっているのか」と思ってしまいます。

飯田)「ゼロコロナ」的なものですか。

有本)全体的に、方向性がわからない施政方針演説でした。

岸田総理が中国に苦言を呈したことは1度もない

有本)とりわけ気になるのは、この国際情勢ですから、外交・安全保障というところです。「新時代リアリズム外交」に関してはまったくわかりません。

飯田)新時代リアリズム外交。

有本)アメリカとの関係は「バイデン大統領と早期に会談する」と。私たちは「さっさとやってくださいよ」と思っているのですが。中国には「言うべきことは言うのだ」という話です。しかし、既に言うべきことを言っていないのです。岸田政権が発足して、もう3ヵ月以上が経ち、北京オリンピックの開催まで1ヵ月を切るなかで、「総理ご自身の言葉で、はっきりと、1度でも苦言を呈したのか?」ということです。そんなもの、聞いたことがありません。

飯田)「外交ボイコット」とも言わないし、その発表も官房長官の会見のなかでありました。

あいさつする中国の習近平国家副主席(当時、右)と、バイデン米副大統領(当時)=2011年8月19日、北京市内(共同) 写真提供:共同通信社

アメリカが外交ボイコットを示唆するなかでの林外務大臣の空気を読めない発言

有本)先日、『夕刊フジ』の政治部長である矢野さんが、私の個人チャンネルに来てくださって、面白い資料を持って来てくれました。総選挙が終わって、岸田政権が本格的にスタートして以来の、林外務大臣を含めて岸田政権が発信したことをすべてまとめてくれたのです。それとアメリカ側の発信を重ね合わせると、アメリカが同盟国との方向性を示した際に、日本がそれを打ち消すような発信をしているのです。

飯田)足並みを揃えるのではなく。

有本)時系列に並べて見ると、足並みを揃えたがっていないことが確かめられます。例えば、日米外相の電話会談では、曖昧にはなりますが、「一緒に頑張って行きましょう。中国に対しても、いろいろな対応をして行きましょう」と言っています。その翌日ぐらいから、アメリカは外交ボイコットを示唆し始めます。観測気球も投げて、向こうの主要メディアがそのことを報じ始める。

飯田)そうでした。

有本)そのタイミングで日中外相会談がありましたが、その会談の直後に、林さんがテレビ番組で「王毅外相から訪中を打診されたので、前向きに」ということを言ってしまった。この空気の読めなさというのは、アメリカからしたら「イラッ」としますよね。

飯田)林大臣は衆議院選挙後の就任なので、11月、ちょうどアメリカでは政府筋からの話が出て来ている時期でした。

有本)そうです。外交ボイコットの話がホットになって来たときに……。

飯田)12月6日ごろに発表するから、それまでの下地づくりを1ヵ月くらいかけてやっていた時期でした。

未だに岸田総理の訪米の調整ができない

有本)そこに冷や水を浴びせるような、「日本は同調しないの?」という感じですよね。そういう流れがあったためか、最初の日米外相会談で「岸田総理の訪米を調整する方向で合意して行こう」ということになったのですが、未だに調整がついていません。

飯田)結局、対面というのはなくなったのか、どうなのか……。

有本)そうですね。オンラインで、という。

飯田)「21日にオンラインで」という話になっています。

有本)訪米して会おうと思えば、会えるはずですよ。

飯田)それこそ10月に就任された直後、臨時国会の前後、年明けにかけて、ずっと「模索」と言っています。

有本)そうです。行くとおっしゃっていましたよね。

飯田)通常国会がいよいよ迫って来たら、2月の連休でという話もあったのですが。

前回はあったのに、今回の「日米2プラス2」では、ブルーリボンバッジを外したアメリカ ~日米関係が冷え込んでいるのでは

有本)それも進んでいない。はっきり申し上げて、少し嫌われていると思います。ある種の信頼関係が崩れて行くのはあっという間なのです。アメリカは、そこははっきりしていますし、特に民主党政権は伝統的に、日本に対しての当たりが厳しいときは厳しいのです。

飯田)クリントン元大統領の「ジャパン・バッシング」もありました。

有本)ただ、いまは中国の脅威が当時とは格段に違うので、アメリカは日本と協調して行かなければならないでしょう。気になるのは、1月7日に行われた「日米2プラス2」のことです。

飯田)オンラインでやりました。

有本)オンラインだったせいもあると思いますが、2021年3月に「2プラス2」をリアルでやったときは、ブリンケンさんは日本に滞在中もそうだったのですけれど、アメリカ側の外交責任者は2人ともブルーリボンバッジを付けていたのです。これはリアルだったからとも思うのですが、「連帯してやって行くよ」という日本側に対する1つのアピールです。

飯田)拉致問題も。

有本)オンラインだったこともあるのでしょうが、今回は(バッジが)なかったのです。やはり、少し冷え込んでいる感じがします。実務上ではいろいろと連携はされているでしょう。しかし、世界に対するメッセージというものがあります。自分の国のことではなくて、仮に韓国がもしこういう状況であれば、「韓国はアメリカとのトップ会談もできないのか」と言います。そういう状況がいま日本にあるという事実は、懸念材料として考えなければいけないのかなと思います。

飯田)これだけ周りの情勢が緊迫しているなかで、東アジアのキーとなるはずの日本がおかしなことになっている。

有本)そうです。そして日本にとっては、好むと好まざるとに関わらず、唯一の同盟国です。こんな状況でいいのかと思います。

政協全国委、新年茶話会を開催(北京=新華社記者/鞠鵬)= 2020(令和2)年12月31日 新華社/共同通信イメージズ

クアッドのなかからも、外されかけている日本

有本)冒頭に戻りますが、岸田さんのイメージや方向性を感じにくい言葉は、外交上でもそうです。「この人にも言うべきことは言って行きますよ」、「この人とも仲よくしますよ」ということを言っているのですが、これだけ情勢が難しくなっているなかで、「日本がどのように存立を確保して行くのか」というイメージが見えません。クアッドは安倍さんが考えた日本発の構想ですが、クアッドのなかからも、外されかけている。

飯田)オーストラリアとの関係は「オーカス」、アメリカ・イギリス・オーストラリアなど、そちらに軸足が移っているのかなという感じがします。

有本)期待度が低くなっていると感じます。他のG7外相がイランへの対応を話し合うときにも、日本の林外務大臣は外されています。もちろん、中東に対するスタンスは欧米諸国と日本では違うのですが、かなり気になる現象です。

飯田)しかも当事国のなかで、日本やアメリカなどと対峙する中国などから見ると、「日米にすきま風が吹いているのなら、チャンスではないのか」ということになりますよね。

有本)当然、そうなります。

飯田)そうなると、かえって不安定化の要因になる。

有本)そう思います。北朝鮮は連日のようにミサイルを撃って来ています。「自ら危険を呼び込む状況になっていないか」と心配しています。「心配しすぎだ」と言われるかも知れませんが、北京オリンピック後に何が起こるかわかりませんから。

飯田)せっかく国会が開いているのですから、その辺りを質問する野党の議員も。

有本)そうですね。質問して、このことを熱く議論して欲しいです。

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