北陸新幹線敦賀開業まで2年! 老舗駅弁業者の胸中とは?

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【ライター望月の駅弁膝栗毛】
「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。

今回の敦賀取材、驚いたのは思うように宿泊先が確保できなかったこと。それもそのはず、敦賀では北陸新幹線や周辺の工事が2年後の開業に向けて進行中。駅周辺でも工事関係者の皆さんの姿を、大変多く見かけました。いったい、敦賀の駅やまちはどのように変貌していくのか? そして、老舗駅弁屋さんは新幹線開業に向け、どのような取り組みを行っていくのかを探りました。

W7系新幹線電車「はくたか」、北陸新幹線・新高岡~金沢間

「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第32弾・塩荘編(第6回/全6回)

東京~金沢間を最速2時間27分で結んでいる北陸新幹線。2年後の2024年春には、敦賀まで延伸される予定です。途中、小松、加賀温泉、芦原温泉、福井、越前たけふの各駅が開業。金沢~敦賀間は最速43分と見込まれています。現在工事中の敦賀駅は、新北陸トンネルの高低差の関係もあって、新幹線がおよそ7階の高さ。その下の階に、新幹線と接続して運行される、大阪・名古屋発着の在来線特急が乗り入れる予定です。

(参考)JR西日本ホームページほか

株式会社塩荘・刀根荘兵衛代表取締役

北陸新幹線敦賀開業に伴って、現在の北陸本線・敦賀~金沢間は、並行在来線として第3セクターの鉄道に分離されます。北陸新幹線も詳細時期は未定ながら、小浜・京都ルートで大阪方面へ建設されていくことが決まっています。明治の初め、日本海側初の鉄道が通ってから、最大の交通体系の変化が始まっている福井・敦賀。敦賀駅弁・塩荘の刀根荘兵衛代表取締役インタビューの完結編、まずは新幹線の話題から伺いました。

683系電車・特急「サンダーバード」、北陸本線・敦賀~新疋田間

●「お客さまに下りてもらえる」駅に……敦賀の魅力を駅弁で発信したい!

―2024年春には北陸新幹線が敦賀まで開業します。駅弁にはどのような変化が生まれると考えていますか?

刀根:まだ、どのような人の流れになるか、どんな形で駅弁を販売できるか不透明です。そのなかで1人でも多くの方に特急と新幹線を乗り換えるだけでなく、敦賀で降りていただけるかがカギになってくると思います。北陸新幹線が敦賀まで開業しますと東京までは、金沢経由で最速の列車でも3時間を超えると考えられています。多少なりとも“終着駅”効果はあると思いますので、(駅弁の需要に)期待したいと思います。

―いまから新幹線開業に向けて、取り組まれていることはありますか?

刀根:いまは敦賀で下りられたお客さまが、敦賀のまちに求められるであろう「魚介類が美味しい店」として、「塩荘」を選んでいただけるような取り組みを進めていきたいと思っています。駅弁としては、いまの“土産シフト”を、より進めていくことになるのかなと感じています。今後、どのように展開していくのが、(お客様にとって)最もいいのかを考えた上で、(駅弁作りを)進めていきたいです。

683系電車・特急「サンダーバード」、北陸本線・敦賀~新疋田間

●敦賀の海を眺めて「塩荘」の駅弁を!

―「塩荘」にとって、駅弁作りで最も大切なことは何ですか?

刀根:味と安全です。美味しいのはもちろんですが、最近は衛生面もより厳しさが求められるようになっています。昔から、駅弁ではできるだけ地産地消を進めてきました。今後も「敦賀に来たらコレ!」と言っていただける駅弁作りを進めていかなくてはと思います。

長いトンネルが続くループ線の途中で、顔をのぞかせた特急「サンダーバード」(上り)

―刀根社長お薦め、塩荘の駅弁を“美味しくいただくことができる”車窓は?

刀根:敦賀の駅弁は、海を見ながらいただくのがいちばん美味しいです。いま「塩荘」の駅弁をいただくなら、大阪・名古屋方面の「サンダーバード」や「しらさぎ」に乗っていただくと、程なく、鳩原のループ線に差し掛かります。すると一瞬、進行左手に敦賀の街並みと海をご覧いただけます。この景色を目に焼き付けて、敦賀の味を召し上がっていただくのが、いちばん美味しいのかなと思います。

鯛の舞

敦賀の名物駅弁「元祖鯛鮨」。その発売当初の味を再現すべく開発されたのが「鯛の舞」(1600円)です。もともと、敦賀湾や若狭湾で獲れたレンコダイを使っていましたが、漁獲量の減少、価格の高騰に伴って、輸入のサクラダイに頼るようになりました。しかし、昭和50(1975)年ごろ、やはり昔のままの日本近海で獲れた小鯛を使った鯛鮨を復活させようと、何とか仕入れ先を確保。従来品と区別するため「鯛の舞」という名前になったと言います。

【おしながき】
・鯛鮨(酢飯:福井県産コシヒカリ+ハナエチゼン、レンコダイ)
・ガリ
・醤油

箱を開けると、高級感あふれる木箱が登場。杉のいい香りがする蓋を開ければ、今度は酢の甘酸っぱい香りとともに、薄塩で〆られた小鯛がキラキラと輝いて現れ、心踊ります。「鯛の舞」とは、まるでこの駅弁を手にした人の心を見透かしたような、上手いネーミング。日本海で獲れた小鯛ならではの皮の柔らかさと、その調理、味に自信を持って送り出していることが伺えます。車内でいただけば贅沢な旅の思い出、土産なら間違いなく、家族や仲間に喜ばれることでしょう。

鯛の舞

●どんな形でも「駅弁文化」を守りたい!

―これから、ニッポンの駅弁をどんな形で盛り上げていきたいですか?

刀根:駅弁は文化だと思います。旅行の形態がどう変化していくかはわかりません。でも、これまで100年以上続いてきた駅弁を次の世代へどんな形でも残していくのが、私たちの大事な役目だと考えています。昔のように駅弁がバンバン売れた時代が、また来ることはないと思っています。いま、敦賀駅の店では1日に売れる駅弁が数十個の日もあります。でも、どんな形でも、「駅弁」がなくならないように、努力は続けていきたいと思います。

681系電車・特急「しらさぎ」、225系電車「新快速」、北陸本線・敦賀~新疋田間

塩荘・刀根社長にお話を伺ったあと、敦賀のまちを見下ろせる高台へと足を運びました。真新しい高架橋と新幹線車両基地が整備されるなか、特急「しらさぎ」と新快速電車がすれ違っていきます。明治の早い段階で鉄道が敷かれ、敦賀の港からは大陸へ向けて、日本と世界を結ぶ1枚のキップを握りしめた多くの人が旅立っていきました。時代を経て、かつて運行された欧亜国際連絡列車とは異なるルートで、東京からの直通列車が再び敦賀にやって来ます。「鯛の舞」のパッケージには、こんな言葉が書いてありました。

「いつの時代も正直なまっすぐさがいちばんのおいしさです」

新幹線時代になっても、ずっとこの味を応援したいと思わせてくれる、鉄道草創期からのピュアなスピリットを持った伝統の駅弁が、敦賀にはあります。

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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