鳥栖の名物駅弁・かしわめしが海苔巻きに! 「5個入り」の理由は?
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「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。
10周年を迎えた九州新幹線「さくら」。「さくら」は戦前から続く由緒ある列車の愛称です。九州の学校を志望する受験生のなかには、「さくら」号に乗って、試験会場を目指す方もいるかも知れませんね。全ての「さくら」号が停車する九州新幹線新鳥栖駅では、この冬初めて、受験生応援弁当が発売されました。駅弁屋さん自慢のかしわめしの海苔巻きが、5個入った食べ応えのある弁当です。
受験シーズン! アナタを応援する駅弁(第3回/全3回)
九州新幹線は令和3(2021)年、博多~鹿児島中央間の開業から10周年を迎えました。「さくら」は、この全線開業と山陽新幹線との相互直通運転とともに誕生した列車。名前のルーツは、昭和4(1929)年、日本初となる愛称が付いた特急列車までさかのぼることができます。いまは、新大阪まで乗り入れる列車はもちろん、九州新幹線内で運行されている通過駅のある列車としても活躍しています。
いまは新幹線の愛称となっている「さくら」ですが、中高年にとって「さくら」といえば、東京~長崎・佐世保間で運行されていた寝台特急「さくら」のイメージが強いかも知れません。夜行列車の晩年は、東京~鳥栖間で熊本行の寝台特急「はやぶさ」と併結。長崎まで19時間をかけていました。「はやぶさ」と分かれる鳥栖駅の停車時間、ホームで名物の「かしわうどん」をフーフーしながらすすって温まったのも、いまとなってはいい思い出です。
平成17(2005)年3月の運行終了を前に私が東京~長崎間で「さくら」に乗車した日は、山口から北部九州にかけて雪に見舞われたため、大幅な遅れで運行されました。でも、遅れた分だけ長く乗車できるとあって、九州の雪景色を存分に楽しんだと記憶しています。普段はあまり見られなかったであろう、真っ白な雪と寝台特急「さくら」のコラボレーション。まるで“春を待つさくら”のようでした。
寝台特急から新幹線の時代になっても、「さくら」と縁のある九州の交通の要衝・鳥栖。鳥栖駅・新鳥栖駅の駅弁を手掛ける「株式会社中央軒」は、明治25(1892)年創業で、今年(2022年)、創業130周年の節目を迎えます。その中央軒が、昨年の大晦日に発売したのが、その名も「合格祈願弁当」(850円)。ちょうど「さくら」の咲くころ、3月までの期間限定で、中央軒としては初めての“受験生応援弁当”だと言います。
【おしながき】
・かしわめしの海苔巻き(5個)
・チキンカツ
・ウインナー
・ソース焼きそば
・焼麦
・桜漬け
掛け紙を外して、ちょっとビックリ! 日本初の鶏めし駅弁とされる名物の「かしわめし」が、何と、海苔巻きになっていました。中央軒によると、海苔巻きにしたのも初めてとのこと。5個にしたのは、「合格」とかけたからだそうです。これにチキン「カツ」、「ウイン」ナーなど、縁起のいいおかずや、もう1つの鳥栖名物「焼麦」もしっかり入って、「桜漬け」で〆ます。なお、弁当には、合格を祈って「満願成就シール」も一緒に封入されています。
親御さんがお子さん・お孫さんのために買うことが多いという中央軒の「合格祈願弁当」。見事合格を果たした暁には、ご褒美でテーマパークへお出かけという家もあるでしょうか。鳥栖からはハウステンボスへ直行できる特急列車「ハウステンボス」も運行されています。コロナ禍でも頑張って、新作を出したり、新しい取り組みを始めている全国の駅弁屋さん。いまだけの“受験生応援駅弁”で元気をいただいて、「さくら」咲く春を迎えたいものです。
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連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/