あけの語りびと

「16万円から」のオーダーメイド靴、お客に「あまり高くない」と言われるのはなぜ?

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それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

「16万円から」のオーダーメイド靴、お客に「あまり高くない」と言われるのはなぜ?

オーダーサンプル

JR神田駅・南口から日本銀行へと向かう「日銀通り」。居酒屋やバー、レストランなどの飲食店が軒を連ねる一角に、「Bon Voyage(ボンボヤージュ)」というお店があります。

間口は狭いのですが、奥に細長く、ガラス張りなので店内がよく見えます。お洒落な立ち飲みバーのような雰囲気ですが、棚にはずらりと紳士靴が並んでいて、どれもスタイリッシュなデザインです。

「靴屋さんなのか」と思って店内に入ってみると、どれも上等な革を使っているらしく、ツヤツヤと光ったものもあれば、いい感じに皺が寄っているものもあります。

「16万円から」のオーダーメイド靴、お客に「あまり高くない」と言われるのはなぜ?

Bon Voyageの店主・大金良太さん

「素敵だな、この靴。いくらするんだろう?」と手に取ったところ、値札がない。店員さんもいない。棚の上には「作業中のため、こちらのベルを鳴らして下さい」という紙が……。

呼び鈴を鳴らすと、奥の工房から現れた男性はスラリと背が高く、伸ばした髪を後ろで結えた若い方。「この靴、一足おいくらするんですか?」と尋ねると、「16万円からおつくりしています」という返答が。「高いな」と言って、憮然とした顔で帰って行く人もいるそうです。

話を聞けば、オーダーメイドの靴屋さんで、棚に並ぶ靴は全部サンプル。いざ靴をつくるとなると、完成までに3~4ヵ月待つこともあるそうです。せっかくなので、16万円の紳士靴をつくる職人さんはどんな方なのか、どうしてこの値段になるのか、話を伺ってみました。

「16万円から」のオーダーメイド靴、お客に「あまり高くない」と言われるのはなぜ?

Bon Voyageのパンフレット

「Bon Voyage」を営むのは、大金良太さん・35歳。横浜出身で、子どものころから洋服にこだわるお洒落な性格だったそうです。

専門学校を出ると、都内の百貨店に勤めて洋服の販売をしていました。ところが洋服よりも、扱っていた靴に魅力を感じるようになります。「見れば見るほど靴って素敵だな」と思うようになり、靴に関わる仕事をしてみたいと、いろいろと考えた末、武蔵小山の靴の修理店へ転職します。

「その店の先輩に、暇な時間を見つけて靴を手づくりしていた人がいたんです。『靴って自分でつくれるの?』と驚きましたね。自分も靴をつくってみたいという思いが、『手製靴』の世界に入るキッカケでした。でも僕、本当は不器用なんですよ」と、大金さんは苦笑いします。

その先輩から靴づくりの基礎を習い、さらに靴づくりの学校にも通って技術を磨きました。昼は靴の修理、夜はつけ麺の店でアルバイト。朝から夜まで働いて、睡眠時間は3時間ほど。将来、自分の店を開くために、こつこつと資金を貯めました。

「16万円から」のオーダーメイド靴、お客に「あまり高くない」と言われるのはなぜ?

壁には製造途中のアッパー(甲革)

コロナ禍の影響もあってオープンが遅れますが、2021年7月29日、ビジネスマンの街・神田で「Bon Voyage」を開業することができました。念願だった自分の店を開いて、お客さんの反応はどうだったのでしょうか?

「まわりに居酒屋さんが多いので、ほろ酔いのお客さんが入って来ることがありますが、16万円と聞いて酔いが覚めたような顔で帰って行きますね。でも、意外に思うかも知れませんが、お店に入って来るお客さんのほとんどは『そんなに高くないんだね』と言ってくれるんですよ」

あるお客さんは、いろいろと靴の悩みを話して「また来るね」と帰って行きました。「酔っていたのでたぶん来ないだろうな」と思っていると、何日かして、そのお客さんがお店に現れたそうです。「君に靴をつくってもらうことにしたよ。君とならコミュニケーションが取れそうだし、私にピッタリ合った靴をつくってくれると思ったからね」という言葉を、大金さんは大切にしています。

「16万円から」のオーダーメイド靴、お客に「あまり高くない」と言われるのはなぜ?

オーダーメイドの他に靴の修理も請け負っています

その16万円の紳士靴ですが、どのようにつくられるのでしょうか? まずは「採寸」です。足のサイズを測りながら、お客さんがどんな靴をつくりたいか、いろいろと話を聞いて一緒に決めて行きます。その後、「木型」を削り、それを元に「仮靴」をつくります。

仮靴ができたら再びお客さんに来てもらい、仮靴で履き心地や見た目のチェックをします。問題があれば仮靴をつくり直し、再チェックしてお客さんから「OK」が出たら、やっと本格的な靴づくりが始まります。

完成までに、お客さんには3回~4回ほど店に来てもらうことになり、靴のお渡しまでは4ヵ月くらいかかるそうです。

「16万円から」のオーダーメイド靴、お客に「あまり高くない」と言われるのはなぜ?

今後は婦人靴も展開し、紳士靴よりも安価で提供できる予定です

「人それぞれ足の形が違うし、右と左でも大きさが違うので、その人にピッタリ合った靴をつくるのは毎回苦労するところですね。靴ができたあとも、痛いところやきついところなど、しっかりアフターケアをしています。履き心地のよさが、お客さんに喜ばれています」

革は年数が経つと、また違った表情を出すので愛着が湧いて来るそうです。「一生モノ」として考えれば、16万円は高くないかも知れません。お店の名前「Bon Voyage」は、フランス語で「良い旅を」という意味です。

「僕がつくった靴で、お客さまに良い旅を、良い仕事を、そして良い人生を歩いて欲しい……そんな想いを込めてつくっています」

「16万円から」のオーダーメイド靴、お客に「あまり高くない」と言われるのはなぜ?

「Bon Voyage」外観

■「Bon Voyage」

住所:東京都中央区日本橋本石町4丁目5-11 伊藤ビル1階
電話:03-6225-2445
営業時間:平日 11:30~19:30/土日・祝 13:00~19:00
定休日:日曜日
(※オーダーメイドの他に、靴の修理も行っています)

■公式ホームページ
www.bonvoyage0727.com

■公式インスタグラム
https://www.instagram.com/bonvoyage_nihonbashi/

番組情報

上柳昌彦 あさぼらけ

月曜 5:00-6:00 火-金曜 4:30-6:00

番組HP

眠い朝、辛い朝、元気な朝、、、、それぞれの気持ちをもって朝を迎える皆さん一人一人に その日一日を10%前向きになってもらえるように心がけているトークラジオ

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