映画監督でジャーナリストの新田義貴氏が4月14日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。現地からウクライナ・ブチャの現状について解説した。
バイデン大統領、初めてプーチン大統領の行為を「ジェノサイド」と明言
アメリカのバイデン大統領は4月12日、中西部アイオワ州で演説し、ウクライナに侵攻したロシアのプーチン大統領が「ジェノサイド(大量虐殺)」を行っていると述べた。バイデン大統領が侵攻に関して「ジェノサイド」と明言したのは初めて。
飯田)「戦争犯罪人」という表現を使っていましたが、今回は「ジェノサイド」という言葉を使ってきました。新田さんは、4月8日にキーウ州のブチャに入られたと伺っています。現地の状況をどのように受け止められましたか?
新田)ブチャはキーウから車で30分くらいのところにある近郊のベッドタウンで、美しい閑静な住宅街なのですが、私が入ったときはウクライナ軍によって解放された直後でした。戦車の残骸があったり、家も破壊されていたりと、凄まじい破壊の爪痕がありました。町中には大きな教会があるのですが、そこが亡くなられた方の集団墓地のようになっています。
飯田)教会が。
新田)他に埋める場所がなかったのだと思います。おそらく100体以上の遺体が埋められていて、私たちが訪ねたときには、地元の警察などによる遺体の掘り起こしが行われ、十数体の遺体が袋に入れられて並べられている状態でした。
「目の前で近所の人が撃ち殺された」と話すブチャの住民 ~戦争犯罪が行われた可能性が高い
飯田)新田さんは中東やアジア、アフリカなどのさまざまな紛争地帯で、人権的に悲惨な場所についても取材されてきたと思いますが、ブチャの惨状はやはり酷いものですよね。
新田)まさに悲惨な行為が行われているときに、私たちはキーウ市街に入りました。川の向こうのイルピンやブチャ方面から煙がたくさん上がっているのは見ていたのですが、まさか住民に対してそのような行為が行われているとは想像もしていませんでした。実際にブチャの住民の方に話を聞くと、「目の前で近所の人が撃ち殺された」と言っていました。ロシアは「自作自演のプロパガンダだ、フェイクだ」と主張していますが、現地の住民から話を聞き、状況証拠を見た限り、かなりの規模の戦争犯罪が行われた可能性が高いと思います。
ここで武器を置けば、徹底的にやられてしまう ~「決して諦めない」という思いが強い
国際政治学者・細谷雄一)ウクライナ国民には、戦争が長期化するなかで、先の見通しが立たないという疲労感があると思います。また一方で、ロシアの虐殺行為に対する怒りや憎しみから、「やはり戦争を継続するべきだ」という考えもあると思います。ウクライナ国内の人々の様子はいかがですか?
新田)私の印象では、人々は最初から変わりなく士気が高いです。兵隊はもちろんですが、兵士を支える銃後の人たち、女性も含めてです。女性は子どもを連れて避難している方も多いですが、戻っている方も多いです。そうした人たちが士気高く支えています。
飯田)女性も。
新田)今回、ブチャでの惨状が明らかになったことによって、怒りの感情もありますが、「ここで諦めて武器を置いたら停戦では終わらず、徹底的にやられてしまう」という気持ちがあり、「最後まで戦うのだ」と思っている印象を受けます。住民や友人に聞いた話からは、「決して諦めない」という気持ちが強く表れていると感じました。
キーウに戻る住民がいる一方で、ドンバスからは多くの住民が避難へ
飯田)新田さんはツイッターで、「キーウに戻る避難民の方が少しずつ増えている」と書かれていました。キーウに戻るということは、士気の高さや「自分の国を何らかの形で支えたい」という気持ちが避難民の方々にもあるということでしょうか?
新田)それもありますし、自分の家に帰りたいということもあります。キーウ近郊のブチャ・イルピン辺りは地獄絵図のような状態ですが、結果的にそれが代表になった形で、キーウのなかにはロシア軍が入って来なかったですよね。
飯田)入りませんでした。
新田)そのためにキーウの町は綺麗に残っていて、以前は市街戦に備えて街中に置いてあった土嚢やバリケードなども、だいぶ減っています。市内を歩く人の数も増えて、営業している店もあります。
飯田)そうですか。
新田)ですから、いまは西の方に避難していた人たちが、キーウに戻りつつあります。逆に今朝(14日)、24時間かけてキーウからバスを乗り継いでブチャに入りましたが、そのときも避難民がたくさん乗っていました。今後、東部ドンバスの方でロシア軍が総攻撃を始めるという見込みがあるので、住民の人たちは逆に外へ出ているのです。
飯田)なるほど。
新田)地域によって戻っていく流れと、出ていく流れの両方がある状況だと思います。
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