高齢者施設の類型によって異なる新型コロナウイルス感染症への対応
公開: 更新:
東京都医師会理事で「西田医院」理事長の西田伸一氏が4月27日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。高齢者施設でのコロナ対策について解説した。
高齢者施設の類型が多い日本
飯田浩司アナウンサー)一口に高齢者施設と言っても、さまざまな施設があります。施設によって感染対策の違いはあるのでしょうか?
西田)日本は高齢者施設の類型が多く存在しており、それぞれ入所される高齢者の方の対象が違うわけです。認知症を患っているけれど、ある程度の集団生活ができる方にはグループホームなどが、また要介護3以上の重篤な方の終の棲家として、特別養護老人ホーム(特養)が位置付けられています。いろいろな施設がありますので、感染者が発生したときも当然、対策は違ってきます。
特別養護老人ホームでの感染症対策の難しさ
飯田)特別養護老人ホームのようなところだと、自らの意志で歩くことが難しい方もいらっしゃる。
西田)そうですね。ほとんど車椅子移動の方ですから、感染したときに重篤化するリスクが高いと言えます。一方で、認知症でも足腰がしっかりした方が多いところだと、感染対策にご協力いただくことが難しい部分があります。1人の方が感染し、動き回って感染を拡げ、より大きなクラスターをつくってしまうこともあります。
高齢者施設で複数の感染者が出た場合、感染者を1つのユニットに固め、医師が往診する
新行市佳アナウンサー)病床がひっ迫しているときに施設内で治療する形があるとお聞きしましたが、その場合は、新たに施設内で治療できる場所をつくるということですか?
西田)そういうことではないのですが、感染者が複数出た場合、それ以上感染を拡げないために、感染者の方を1つのユニットに固めて管理します。そこに治療を持ち込む形です。
飯田)治療を持ち込むということは、往診のような形ですか?
西田)そうです。いま特養と老健に限ってですが、感染者が出たときには、東京都の方でそれぞれの施設の医師に補助金をつけています。
施設でクラスターが出た場合は医療支援チームを派遣
西田)また、何十人もの高齢者を抱えている特養施設でも、非常勤の先生が1人というパターンが多いので、十分に治療ができないのです。そこで、地区ごとに施設でクラスターが出たときには医療支援チームをつくっていただき、そこから往診して中和抗体療法などを行っていただくことを東京都は推進しています。
飯田)中和抗体は「抗体カクテル」という名前で報道されていますけれど、当初は「病院まで行かないと」「中等症以上でないと」など、いろいろ言われていました。いまは往診でもできるようになっているのですね。
西田)施設基準を満たした医療施設には、東京都が認可しています。まだ施設はあまり多くはありませんが。
飯田)先生も実際にそういう現場に行かれましたか?
西田)3日前に行ってきました。
飯田)現在進行形で対応しているのですね。
西田)その方は認知症があるのでなかなか動けないのですが、重症度的に入院するほどでもないので、「自宅に往診して治療してください」と保健所から依頼されて行ってきました。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます