千葉・市原の「菜の花」を守るため、注目したのは「空き家」?
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それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
高橋洋介さん・33歳。1989年、千葉県市原市の市街地エリアに生まれ、東京の美術系大学に進学しました。いまは、市原市の最も南の地域、養老渓谷の近くにある古民家を住まいとして、小湊鐵道沿線に菜の花を咲かせる活動「石神菜の花会」に参加しています。
高橋さんは、東京都内でグラフィックデザインの仕事をしながら、春になるとごく普通の観光客として小湊鐵道沿線を訪れ、その美しい景色に癒されていました。しかし、あるとき1つの「疑問」が湧きます。
「この美しい菜の花は、いったいどうやって咲かせているのだろう?」
調べてみると、地元の方による「石神菜の花会」という団体に行きつきました。毎年9月の第3土曜日に種をまき、翌年の春に花を咲かせて、5月下旬に刈り取り。一般の人でも、菜の花の種まきなどの活動に参加できることがわかりました。高橋さんは、さっそく「石神菜の花会」の種まきに参加してみることにしました。
「石神菜の花会」のメンバーは60歳代が若手で、多くは70歳代の方でした。もともと養老渓谷近くの小湊鐵道沿線で稲作を営んでいたものの、お子さんが都会に出て、後継ぎのいない田んぼを荒らしてしまうのはご先祖様に申し訳ない……。そこで、いつか誰かが耕してくれる日まで、「菜の花」を植えようと始まった活動でした。
高橋さんは、多くの人生の先輩たちと関わっていくなかで、ふるさとのために「この菜の花畑を何とかして守りたい」という気持ちが高まっていきました。そんなとき、市原市が「地域おこし協力隊」の制度を設けることが発表されます。
高橋さんはデザイナーの仕事をしながら、その初代メンバーに参加して、市原にUターンすることを決めました。
高橋さんが「菜の花畑」を守るためにまず始めたのは、「菜種油」の販売でした。
2018年から「ハルイチバンプロジェクト」と銘打ち、3月~4月の菜の花シーズンに訪れた観光客から、油の予約を受け付けます。そして、5月くらいの時期に刈り取った菜種から取った油を、花畑の紹介冊子と一緒に届け、多くの人に菜の花畑に興味を持ってもらおうという試みです。
菜の花畑の維持費を捻出したり、ゆくゆくはこの地域で暮らす人の「仕事」になれば……そんな気持ちも後押ししました。それというのも、菜の花畑の維持に取り組んでいるのは、高齢者の皆さんが中心であるからです。
「若い世代に住んでもらわないと、菜の花畑を次の世代へ引き継ぐことはできない」
そう思った高橋さんは、地域に多くあった「空き家」に注目します。そして「開宅舎(かいたくしゃ)」という、空き家と移住希望者をマッチングさせる取り組みを始めました。
折しもコロナ禍の真っ只中。これが人の多い都市部を離れて、郊外で暮らしたいという流れの追い風になりました。特に、千葉県内の他の地域から移って来る若い世代が増えているそうです。
高橋さんのUターンから今年(2022年)で5年、最近嬉しいことがありました。長年、菜の花会でお世話になっていた高齢の男性の息子さん家族が、高橋さんたちの活動に感銘を受けて、ふるさとに戻ってきてくれたのです。
ふるさとに戻ってきた人たちといま取り組んでいるのは、「ひまわり畑」づくり。菜の花の刈り取りから種まきまでの3ヵ月間、ひまわりを植えて、夏の新たな観光名所にしようとしています。
高橋さんは、増えてきた仲間たちと常に確認している言葉があります。
「若い世代だけで固まらないようにしよう。そして、この地域の続きをつくっていこう!」
千葉・房総の里山風景のなかに、いま、新しい光が差し込んでいます。
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