日本で唯一の地上戦「沖縄戦」を忘れてはならない
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神奈川大学法学部・法学研究科教授でアジアの国際政治専門の大庭三枝が6月23日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。沖縄「慰霊の日」について解説した。
沖縄慰霊の日
沖縄戦で20万人を超える方々が亡くなり、組織的な戦闘が終結したとされる日から6月23日で77年。沖縄は「慰霊の日」を迎えた。糸満市にある平和祈念公園で行われる沖縄全戦没者追悼式には、岸田総理大臣が出席した。
飯田)コロナ禍の影響もあり、総理の出席は3年ぶりということになります。去年(2021年)、一昨年(2020年)は菅前総理、安倍元総理がそれぞれビデオメッセージを寄せられました。
大庭)沖縄戦の記憶を、日本国民全員で共有することが重要だと思います。そういう意味では、沖縄全戦没者追悼式はとても大事で、そこに首相が出席することの意味も大きいものだと思います。
飯田)そうですね。
大庭)先の太平洋戦争のときに、日本の本土と言われているところでは、地上戦はなかったのですが、唯一、日本の領土のなかで沖縄だけは地上戦から逃れることができなかったわけです。ある種の身代わりになったようなところが、沖縄にはあるのです。
飯田)沖縄が。
大庭)にも関わらず、その後、沖縄がアメリカの施政下に入ったりしたこともあり、沖縄こそが日本全体の犠牲になったということについて、認識が弱いのかも知れません。世代によって違いますけれども、終戦から何十年も経つと、記憶自体が弱まっていってしまいます。日本の全国民が、この痛ましい戦争の記憶を認識するということが大事なのではないでしょうか。
日本で唯一、地上戦が行われた沖縄
飯田)戦没者追悼式が行われる摩文仁の平和祈念公園ですが、そこに亡くなられた方々の名前を刻んだ「平和の礎」という石碑があります。国籍や敵、味方は問わないということで、アメリカの方の英語の名前もあるし、朝鮮籍で戦った方のハングルの文字もあります。「戦争というのはこういうことなのだ」と可視化できるところでもあります。
大庭)地上戦というものは特別な意味があると思うのです。もちろん、日本の各都市に対する空襲も、大きな犠牲を市民に強いています。地上戦に巻き込まれた地域の民間の方々や、自らの意思に反して日本軍に動員された例もあるようですし、軍隊のなかで戦わなくても、いろいろな形で市民の方々が犠牲になったわけです。地上戦の悲惨さとともに、当時の日本の本土では行われなかったけれど、沖縄が悲惨な状況に直面したのだということは、よく心に刻んでおく必要があるのではないかと思います。
一部の米兵による事件は全国各地の問題だった ~全国各地に米軍基地があったころ
飯田)他方、現在の安全保障上の問題を考えると、台湾海峡などを目の前にする沖縄では、有事の際、どう避難してもらうかということも考えなければならないですか?
大庭)本当はそうですよね。基地が集中したというのも、最初からそうだったわけではありません。終戦後は日本各地に米軍基地があり、サンフランシスコ講和条約の発効以降も基地は残ったわけです。米軍基地の一部の人なのでしょうけれども、米軍の方々による地元へのさまざまな事件があります。そのような事件は全国各地で起こっていて、どこでも基地反対運動が激しくなるなかで、基地が次々と沖縄に収斂していったという過程があるわけです。
対中関係において地政学上、重要になる沖縄の基地
大庭)かつては基地問題も、日本国民全体の問題だったのです。それがいつの間にか沖縄の問題になってしまっていることも、日本国民としては認識する必要があると思います。一方、対中関係が悪くなり、台湾海峡の危機が叫ばれるなかでは、どうしても地政学上、沖縄の重要性が高まっていて、一概に「基地をすべてなくす」というのも難しい。非常に厳しい状況だと思います。
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