日本共産党・山下芳生筆頭副委員長が7月1日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。参議院選挙における日本共産党の公約について語った。
参議院選挙、ここまでの手応え
6月22日に公示された参議院選挙は、7月10日に投開票を迎える。同番組では、選挙期間中各党の代表や党首、幹部に党の公約や参院選の戦い方などを訊く。今回は日本共産党の山下芳生筆頭副委員長。
飯田)18日間の長い選挙戦が折り返しに入ったところです。前半戦を振り返ってみて、手応えはいかがですか?
山下)国民の皆さんの意識がとても変化しているのを感じます。「軍事費を2倍にしよう」ということが自民党さんから出たではないですか。
飯田)GDP比の2%。
山下)ウクライナの問題がありましたが、「それでいいのかな、その財源をどうするのか」という空気が出ています。あとは物価高騰ですね。これが合わさっている感じがします。
飯田)やはり「生活が苦しくなっている」という声があがってきますか?
山下)もともと苦しかったところに物価が上がり、より苦しくなったという感じではないですか。
熱中症対策にゴーヤジュースを用意
飯田)この暑さもあります。これは選挙戦に影響しますか?
山下)かなりきついです。昨日(6月30日)、愛知に行ったのですが、豊田市は39.2度でした。
飯田)山下さんのツイッター等々を見ますと、料理をつくりながら話されていることもあります。熱中症対策に自分で何かつくったりはしていますか?
山下)ゴーヤジュースです。これは効きます。
飯田)ゴーヤをミックスジュースか何かにするのですか?
山下)ゴーヤと、バナナとレモン。これは夏の参議院選挙のときは必ず、定番です。
飯田)この時期の選挙の定番。
山下)妻に協力してもらって。
政治の役割は「戦争を起こさない」こと ~軍拡競争では日本を守れない
飯田)安全保障についての話がありましたが、世論調査を見ると、ウクライナの危機を見て、国民の皆さんも肌感覚として「東アジアにもくるのではないか」と思っている方も多いようです。共産党としては、どのようにこの国を守ろうというイメージがありますか?
山下)軍拡競争に入ってしまったら、日本は守れないと思います。こちらが軍事で構えれば相手も軍拡を加速していくわけですから、「軍事対軍事」の悪循環になっていきます。これがいちばん危ないことだと思います。
飯田)「軍事対軍事」の悪循環に。
山下)そもそも軍事で構えている相手に、こちらも軍事で対抗するというのは、私は幻想だと思います。そういうことによって軍事的な緊張が高まり、一触即発の危険が高まるのです。そういう道では日本は守れないと思います。政治の役割は、戦争を起こさないこと。戦争を起こさないための外交に知恵と力を尽くすべきです。
「もめごとは話し合いで解決して、武力の行使は絶対に禁止」という「東南アジア友好協力条約」のルールが守られているASEAN
飯田)外交というと、基本的にはまず話し合うということですか?
山下)1対1で話し合うよりも、地域のすべての国を包み込むような集団安全保障というものを構想する。国連も、2回の世界大戦を通じて、集団安全保障というものを基本にした平和の国際秩序を構想しているわけです。私たちが外交ビジョンとして提案しているのは、東南アジア諸国連合(ASEAN)です。
飯田)ASEAN。
山下)かつてベトナム戦争で隣の国同士が殺しあったASEANでは、「2度とこんな悲劇を繰り返してはならない」ということで、1970年代に平和のルールをつくったわけです。それは、互いの違いを認め合って独立を尊重し合おうということです。「紛争、もめごとは話し合いで解決して、武力の行使は絶対に禁止」という東南アジア友好協力条約のルールがあります。
ASEANと協力して東アジアに平和のための枠組みをつくることが日本に求められている役割
山下)調べてみると、このルールを守りますということで、ASEANに加盟した10ヵ国の間では1回も戦争が起こっていないのです。かつて戦争と紛争が絶えなかった地域が、いま対話と協力の地域に生まれ変わった。いまASEANは、この平和の枠組みを東南アジアだけではなく、日本や中国を含む東アジア全体の規模で広げようと、「東アジアサミット」という会議を主催しています。
飯田)東アジアサミット。
山下)そこには日本もアメリカも参加していますし、ロシアも中国も参加しているわけです。ゆくゆくは東アジア規模の友好協力条約をつくろうということをASEANは展望しているのです。私たちはASEANと協力して、東アジアに平和のための枠組みをつくる。憲法9条を生かした外交の力で。それを促進していくことが、日本に求められている道だと思っています。
「集団的自衛権」という概念ではなく、「話し合いで解決して、武力の行使は絶対に禁止」というルールで成功しているASEANの枠組みを東アジアに拡げる
飯田)集団安全保障という言葉も出ましたが、もともと国連の理想とするところはそういう部分であった。その裏打ちとして、5大国の軍事力などもあった。結局、集団安全保障というものがなかなか機能しないから、地域的あるいは有志国で集まり、とりあえずは戦争を仕掛けられた場合には対抗するという形で「集団的自衛権」という概念も生まれたわけですが、そこではない道を模索するということですか?
山下)その集団的自衛権というのは、軍事ブロックですよね。軍事ブロックの仲間の外に仮想敵を設けるという排他的な枠組みでいきますと、やはり軍事対軍事になるわけです。そうではなくて、国連もそうなのですが、先ほど紹介したASEANがやっていることは、地域のすべての国を包み込む。
外交・安全保障政策の基本は「戦争を始めさせないこと」
山下)「包摂的な枠組み」とよく言われますけれども、そういう形で「戦争、紛争の絶えなかった地域が対話と協力の地域に変わっている」というお手本になると思うのです。ASEANのそういう枠組みがあり、それを東アジアに広げようという努力がされているわけですから、0から始めるのではなく、それを活用し発展させて、平和の地域をつくるということです。
飯田)ASEANの枠組みを活用して。
山下)そうでなければ、「一旦戦争が始まったら止められない」というのが、ウクライナ戦争の教訓でもあると思うのです。外交・安全保障政策の基本は「戦争を始めさせないこと」ではないでしょうか。
排他的な力対力ではなく、東アジア全体の友好協力条約をつくる ~「ウクライナの失敗」は力対力に陥ってしまった外交の失敗
山下)ウクライナでの教訓は、やはり外交の失敗だと思います。ヨーロッパではソ連の崩壊以後、欧州安全保障協力機構(OSCE)、ロシアとすべてのヨーロッパの国々を含めた包摂的な枠組みがつくられて、これを紛争の平和的解決の主要な機関にしようという構想があったわけです。
飯田)すべてのヨーロッパを含めた。
山下)しかし、これが機能しなかった。NATO諸国側もロシアの方も、軍事力によって相手の攻撃を抑止するという戦略を双方が進めた結果、力対力に陥って、ああいう失敗になったわけです。ウクライナ侵略の責任は、国連憲章を蹂躙したロシアにあると思いますよ。その上で言うならば、紛争という悲惨な結果になった背景には、そういう外交の失敗があったということです。これを教訓にして、この失敗を東アジアで繰り返してはいけないと私たちは考えています。だから排他的な力対力ではなく、すべての国を包み込むような包摂的な地域の安全保障。それはASEANの努力であり、東アジア全体の平和の枠組み、友好協力条約をつくろうという私たちの外交ビジョンです。
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