民間企業なら経営者全員クビ 誰も責任とらぬ五輪組織委の構造的問題

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ジャーナリストの鈴木哲夫が8月11日、ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』に出演。東京オリンピック・パラリンピックが残したレガシーと疑惑について指摘した。

民間企業なら経営者全員クビ 誰も責任とらぬ五輪組織委の構造的問題

「東京2020 1周年記念セレモニー」で開会宣言する東京都の小池百合子都知事=2022年7月23日午後、東京都新宿区の国立競技場 写真提供:産経新聞社

開催から8月8日で1年となった東京オリンピック・パラリンピック。すでに大会組織委員会は解散となったが、組織委員会の元理事の受託収賄容疑や、巨額の公費の使用など、当初掲げた大会後に残るレガシーよりも、疑惑ばかりが残る結果となっている。2030年には札幌冬季オリンピック、冬のオリンピックの招致を控えるなか、今後のオリンピックの在り方とは。

飯田)ここのところ、元理事の受託収賄という話が。

鈴木)疑惑が出ていますよね。(東京オリパラの)スポンサーの1つからのお金、これは、その(スポンサー選出の)目的にお金をもらったわけではないのですけれど。

飯田)一応、コンサル契約が間に入っていて。個人の事務所に。

鈴木)別の為の契約でお金のやり取りがあって。それが結果的には、最後の口利きにつながったのではないか。こういう理屈で、いま捜査を東京地検特捜はやっているわけです。まだ「疑惑が」という表現なのですけれども。この事件が表面化して、私の第一印象は「ああ、起こるべくして起きたな」と。「まさかそんなことが」ではないです。これはもう「当然起きるな」と。結局、今回の取り調べを受けている元理事といった人たちの個人の問題ではなくて、もう、組織委員会という組織の立て付けといいますか、組織委員会そのものにやはり問題があると私は思っていたのですね。

それはなぜそう思ったかというと、オリンピックに関係する音楽の事業で「こういうことをオリンピックでできないか。その相談したい。どこを窓口にすればいいか」と、友人が多いもので、私自身が相談を受けたわけです。それで、私はオリンピックを2004年から取材していますし、都庁の関係者もよく知っていましたし、組織委員会の理事の方も結構知っている人が多いので、「じゃあ聞いてみるよ」と言って、「事業を提案したい。どこが窓口なの」と聞いて、「ここです」と言われて紹介したわけですよ。そうして半年くらいして、その友人から連絡があって、「全然前に進まない」と。いろいろ聞いたら、組織委員会は基本的に出向の人たちが多いと。だから原隊があるわけですよね。みんな背負ってきているわけです。

飯田)みんなそれぞれ、企業だったりとか、都庁だったりだとか。

鈴木)そうです。事業によっては、例えば代理店などもそうかもしれない。けれど、みんなそれぞれを背負っているから、話を聞きながらどうしても引っかかるわけですね。例えば、自分の原隊に関係するところがやっているような事業と同じ話を持ち込まれても、少しためらったりではないけれど、引っかかるようなことがあったり。それから、出向者が多いということは、やはりみんなそれぞれを背負っているから、物事を決めるときに、いまひとつ「責任を持って」というよりは……

飯田)「よしやろう」にならない。

鈴木)逆に気を使ったりだとか。「自分はいいと思うけど、あのもう1つ上の局長はどうかな」とか。そういうので、けっこう、なかなかぐずぐず決まらない。そして、最終的には理事会みたいなところに上がっていくのだけれども、またこの理事会が出向者ばかりでしょう。つまり、プロパーがいないのです。組織委員会という会社があるわけではないから、みんな出向だから、それがまたみんな背負ってきているわけですよ。自分の原隊を。その本籍地を背負ってきている。それはなかなか決まらないと。

飯田)いわゆる寄合所帯という。

鈴木)そうです。だから、ある現場のその責任者が、その私の友人に「理事でどなたか知っている人はいませんか」と。音楽業界に関係のある理事ですね。「その方にも頼まれた方がいいですよ」というアドバイスを受けているわけです。これはよかれと思っての発言だろうけれど、俯瞰してみると、「結局それで決まるのか」という話ですよね。

飯田)そうですね。その企画の良し悪しのコンペみたいなものではなくて。

鈴木)コンペをやって、きちんとみんなで審査して、ピラミッドみたいにして決定というのが普通のやり方だけど、そうじゃないわけです。それでさらに言うと、そこで理事会でさらに揉めると最後はやはり、当時の会長だった森さんですよ。圧倒的な力を持っていたから、「なるほど。森さんに最後、判断を仰ぎましょうか」という話になる。何が言いたいかというと、結局、出向者が多くていろいろなものを背負ってきているから、やはり、そういう人たちが理事にもたくさんいれば「じゃあ、理事に頼もう」と。普通にコンペに出してではなくて、理事に頼もうという空気はあるわけです。だから、そこにお金の流れみたいなものが、例えば関係してくるようなことは十分あるだろうと。ちなみに、私がその窓口を紹介したその事業は結局通りませんでした。

飯田)ああ、そうですか。

鈴木)いったいどう議論されたのかもわからない。

民間企業なら経営者全員クビ 誰も責任とらぬ五輪組織委の構造的問題

自宅を出るために車に乗り込む東京五輪パラ組織委・高橋治之元理事=2022年7月27日午前、東京都世田谷区 写真提供:産経新聞社

飯田)とにかく返事がなくてうやむやになった。

鈴木)そういうことです。だから、「この組織委員会では、こういうことあるだろうな」というのが、この事件や疑惑が出てきたときの実感なのです。そして、2030年の札幌の冬季オリンピックですよね。ここに向けてやはり、組織委員会というものの立て付けなり、あり方を変えないと。一応、みなし公務員ですからね。

飯田)そうですね。

鈴木)私たちの税金のところをこの人たちは触るわけで。そもそも組織委員会っていろいろなことがあったでしょう。

飯田)ありました。

鈴木)エンブレムの問題から、開会式の演出問題からいろいろとあったでしょう。森会長(の女性蔑視発言問題)もあったでしょう。でも、エンブレム問題など、その現場で起きているそういう問題、誰がどう責任を取ったのでしたっけ。

飯田)ああ。そう言えば。

鈴木)それから、決算を見てください。最初の予算7,000億くらいあったのが、結局その倍。これは「コロナがあったから」などと言うけれども、すでにおととしの12月に会計検査院が「もう1兆円超えてるよ」と。そしたら組織委員会は「いやいや」と。これは要するに、予算をうまく名称を変えて計上、うまくコントロールして、「お金はあまり増えていませんよ」とをやっていたわけですけど、そこを会計検査院すら指摘している。結果的に予算の倍になってしまった。民間企業なら許されますか。経営者全員クビでしょう。だけど、「いやレガシー残りました」と言って、普通に解散して、誰も責任を取っていないですよ。

だから、こういう組織委員会の立て付けだったら、これもまた札幌でも同じことを繰り返すのではないですか。私は、ここは単なる受託収賄というひとつの事件ではなくて、組織委員会のあり方といいますか、人選から、組織をどういうふうにやるかという議論まで、絶対にやらなければだめだと思います。同じことをまた繰り返します。それは誰の役目かとなると、まさに主催した、例えば東京都とか。それから政府ですよね。JOCが、というのはなかなか無理かもしれないけども、そういう政治行政のところで、そういうものは1回議論するべきだと私は思います。

飯田)たしかに、この東京オリンピック、パラリンピック招致の段階からいろいろなお金の流れも含めてあって。今回、この取り沙汰されている方、高橋治之元理事。今回はAOKIとの関係でというところでしたけれども、そう言えば、世界陸連の会長にお金を渡すとか何だみたいな話でも取り沙汰されたこともありましたし、「そのお金ってどうやって用意したんだろう」ということを考えると、この話というのも、いろいろつながっていくのだなという。

鈴木)私は、構造的な問題だと思うのですね。だから、その構造の中心にいるのは組織委員会ですから。この組織委員会の組織そのものは、果たしてどうなのかという。これはもうあからさまに議論しないと、私はまた札幌でも繰り返すと思いますね。

飯田)たしかにね。この招致の仕方というのは、それこそ長野の冬季のときも取り沙汰されたしという。

鈴木)でも、終わってしまえばよかったと。「感動を与えてくれてありがとう」と、これ全部終わってしまうのですね。だって組織がないのだから。責任を取らないまま。民間企業はそうはいきませんよ。全員経営者退陣ではないですか。だって、倍ですよ、予算。

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