医師で医療ジャーナリストの森田豊氏が8月18日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。認知症の介護ケアについて解説した。
介護施設でのレクリエーションには認知症の進行を抑制する効果がある ~懐かしい歌を歌うと脳が刺激される
飯田浩司アナウンサー)森田さんの最新刊『医者の僕が認知症の母と過ごす23年間のこと』(自由国民社刊)から、今回は認知症の介護ケアについて伺います。介護施設に入って、お母さまの様子は変わりましたか?
森田)以前の生き生きした母が戻ってきたなと思いました。今回、書籍を纏めるにあたって、介護のプロにさまざまな話を聞いてみました。
飯田)介護のプロの方に。
森田)介護施設では、カラオケや体操など、さまざまなレクリエーションがありますが、単に楽しいから、また盛り上がるから行うのではありません。「認知症の進行を食い止めるのに役立つかどうか」を含めて取り入れているとのことです。
飯田)進行を食い止めるために。
森田)カラオケでは、楽しんでストレス解消するだけではなく、好きだった懐かしい歌を歌って当時を回想することで、脳に刺激が伝わる。これは認知症の進行を妨げるという意味で、非常に重要であるということです。
施設のなかに「お気に入り」のキーパーソンを見つける
森田)ただ、最初は母もそうだったのですが、アクティビティに参加したくないという方もいます。そういう方に対しては、本人のストレスにならないように気を付けながら、いろいろと言葉を変えて誘っているようです。なかには、本当は参加したいのだけれど、「嫌だ」と言っているだけの方もいるので、1度断られても諦めず、積極的に話を引き出して、よく聞いてあげることが大事だということです。
飯田)諦めずに。
森田)施設に慣れるためには、「安心できる人がいるのだ」ということを感じていただくことが大事だそうです。まさしく母にも、著書のなかに出てくる「鈴木さん」という人がいまして、鈴木さんがさまざまな話を聞いてくださいました。「この施設には鈴木さんという人がいるから、豊、あんたはいなくても大丈夫よ」という話になりましたので、その施設のキーパーソンは大事になってくると思います。
暴れる人にはテンションを低くして接する
森田)何も話をしないという場合には、正面ではなく横に座って、介護スタッフの方からいろいろ話しかけることが大事なようです。話さない人のなかには、施設に対して何か怒っている方もいらっしゃるのですが、その不満を聞き出し、話してもらうことで施設に慣れていただくのが大事なポイントだと聞いています。
飯田)なかには、逸脱行動と言いますか、ものを壊してしまったりする方もいます。そういうところを見ると、やはり介護は大変なのだなと思いますが。
森田)その通りですね。暴れてしまって、ドアを「ガタガタ」と乱暴に動かす方もいますが、介護側としては決して感情的に接することはせず、「そんなことをしたら、ドアが壊れてしまいますよ。壊れたらケガをしてしまいますよ。警備の人が来てしまうかも知れませんよ、どうします?」というようなことを笑顔で穏やかに声掛けして、テンションをできるだけ低めにして接することもコツだそうです。
家族ではできないことを介護のプロにお任せする
飯田)家族で対応していると、できないことですよね。
森田)家族だとできないのですよ。
飯田)「何やってんだ!」となりますよね。
森田)しかし、介護のプロであればできるのです。
飯田)うちは、祖父が認知症のような逸脱行動をした際に、父親も怒鳴ってしまうし、家族も怒鳴ってしまったことがありました。そうなると、火に油のような状態になってしまいますね。
森田)家族のなかで困ってしまった際には、介護のプロにアドバイスを受けることが大事だと思います。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます