元産経新聞ロンドン支局長で在ロンドン国際ジャーナリストの木村正人と、青山学院大学客員教授でジャーナリストの峯村健司が9月20日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。日本時間9月19日に行われた英エリザベス女王の国葬について解説した。
エリザベス女王の国葬営まれる
英エリザベス2世陛下の国葬が日本時間9月19日、ロンドンで営まれた。国葬はロンドン中心部のウェストミンスター寺院で行われ、各国の要人など2000人以上が参列した。
飯田)国葬が行われましたが、現在のロンドンの街はどんな様子でしょうか?
木村)国葬では約200万人の方が、沿道で女王陛下に最後のお別れを告げました。そのあとは、「できるだけ平常通りに戻ってください」という要請がバッキンガム宮殿からありましたので、一部の方は、そのままパブなどに行かれたようです。
飯田)パブへ。
木村)終わったころに合わせて開業しているパブもあったため、そこで一杯ひっかけた方もいらっしゃったと思います。家に帰り、皆さんテレビを観られて、「もう女王に会えないのだな」という寂しさが深まってきているのではないでしょうか。
5メートルおきに警察官が警備
飯田)日本の天皇・皇后両陛下をはじめとして、各国の要人がロンドンに集まりましたが、警備はどのようなものでしたか?
木村)オバマ元大統領がノーベル平和賞を受賞した際に取材したことがあるのですが、そのときは一画が閉鎖されていました。今回も、ウェストミンスター寺院に要人の方が来られたのですが、その一画はもう入れなくなっていました。
飯田)閉鎖されて。
木村)沿道警備も、ロンドンからウィンザー城までほぼ5メートルおきに警察官が警備していました。全国から警察官が集まったのではないかと思うほどの厳戒ぶりでした。
飯田)その厳戒ぶりを、かつてのロンドンオリンピックのときと比較するような報道もありましたが、肌感覚としては今回の方が厳しいですか?
木村)今回はウェストミンスター寺院の一画が完全クローズドで警備されていました。ロンドン五輪のときは、観客を入れないといけないので、警備の対応の仕方は違ったと思います。
12時間半待ってやっと弔問できた一般市民
飯田)一般市民の方々は、10時間以上待って弔問するというような方もたくさんいらっしゃったと報道されていますが、その様子はいかがでしたか?
木村)私の妻も午前3時から並んだのですが、12時間半待って、やっと弔問できたということでした。晩は寒いので、日本円にして3000円くらいの毛布を1人ひとりに配ってくださり、毛布をかぶって寒さをしのぎながら女王陛下の棺にお別れを告げていました。
ショートカットで入ることができたのに、弔問のために13時間並んだベッカム
峯村)日本でも報道されましたが、デビッド・ベッカムさんが12時間並んだということで、要人の方も皆さん並ばれたのでしょうか? 特別枠のようなものはないのですか?
木村)ベッカムさんは13時間待ちでした。プレスや国会議員などはショートカットで入れるのです。私もそのルートで入りました。大英帝国勲章(OBE)をもらっているので、彼もショートカットで入れるのですが、ベッカムさんは「祖父なら横入りはしないはずだ」と思い、並んだということです。
峯村)なるほど。
木村)ベッカムさんは英国民から愛されるスーパースターですが、そのような庶民的な部分を残している方なのです。
峯村)そういうことだったのですね。
波乱の幕開けとなり、前途多難なトラス新首相
峯村)ジョンソン前首相のゴタゴタがあって、ようやく新首相にトラスさんが選ばれました。トラスさんとお会いになったのが、エリザベス女王の最後の仕事となりました。女王陛下の最後の責務として、政権移行をしっかり見届けたという感じがするのですが、新政権はその後、落ち着いてきているのでしょうか?
木村)まったく落ち着いていないと思います。トラス首相は、女王陛下の容態が急変しているという連絡を9月8日の午前中に受けたのですが、エネルギー危機を乗り越えるため、議会で約1500億ポンドの緊急財政措置の発表をしたあとに、「健康が懸念される状態」であることが公表されました。
飯田)緊急財政措置の発表のあとに。
木村)波乱の幕開けではないでしょうか。アメリカのバイデン大統領と会談すると言われていたのですが、結局、アメリカの方から断られています。「ニューヨークでの国連総会の際に会いましょう」ということで、仕切り直しになりました。前途多難だと思います。
今後寒さが厳しくなると国民からの不満も高まる可能性が
峯村)トラス政権も厳しい状況になってくると思いますが、トラスさんはウクライナ情勢に対して積極的で、対ロシアにも強硬路線です。今後、対ロシア政策が揺らいでくる可能性はありますか?
木村)対ロシア政策が揺らぐことはないと思いますが、冬に向けてそうとう寒くなってきています。去年(2021年)も、ヒーターを使わずに湯たんぽを抱いて寝るなどして過ごす人がいました。今後、寒さが厳しくなると、かなり不満が募るのではないでしょうか。
峯村)制裁疲れやウクライナ疲れがかなり出てくる可能性がありますね。
木村)あると思います。
エリザベス女王のあとを継ぐチャールズ国王の困難
飯田)一方で、チャールズ新国王が今後、王室のトップに立つということです。先日の木村さんのリポートでは、「少し短気」ということが話題になっていると紹介していました。その後、評判はいかがでしょうか?
木村)国葬でのチャールズ国王は悲しそうな様子で、お棺の上に「愛と献身の記憶のなかで」という彼がラテン語で書いたカードが置かれていたのですが、偉大な女王のあとを継ぐのは非常に難しいと思います。
飯田)エリザベス女王のあとを継ぐことは。
木村)チャールズ国王が警察署へ労いに来るということで取材したのですが、途中、サプライズでウィリアム皇太子が参加したのです。今回、ウィリアム皇太子がチャールズ国王を支える場面がいたるところで見られました。2人で時間を取り、国民1人ひとりと話されていました。
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