朝食は「タンパク質」「炭水化物」がいい理由 “時間栄養学”から見た正しい食事とタイミングとは

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「時間栄養学」の第一人者・柴田重信さんが、上柳昌彦アナウンサーがパーソナリティを務める、ラジオ番組「上柳昌彦 あさぼらけ」内コーナー『食は生きる力 今朝も元気にいただきます』(ニッポン放送 毎週月・金曜 朝5時25分頃)にゲスト出演。食事の正しい回数、断食のメリット、朝ごはんを食べるメリット、おすすめの朝食などについて解説した。

朝食は「タンパク質」「炭水化物」がいい理由 “時間栄養学”から見た正しい食事とタイミングとは

柴田先生は九州大学、早稲田大学での教授などを経て、2003年から現在に至るまで早稲田大学理工学術院教授を務める。薬学博士であり、時間栄養学を専門とし、自身の研究室では体内時計について研究している。健康と体内時計の関係やそこから発展した機能性食品の開発などを手掛けており、日本時間栄養学会の会長も務めている。

■食事は1日3食ではなく「1日2~4食」がいい。

上柳:生命体にはみんな体内時計があって、脳の中や内臓に時計を持って暮らしているそうですね。それに合わせて人間は1日3食、食べているのですか?

柴田:それには文化的、社会的なことが含まれていて、よく言われていますが以前は2食だったと。

上柳:江戸時代は2食だったと聞きますよね。

柴田:電灯ができて夜も時間が使えるようになったとか、いろいろなことが重なり、そうするとエネルギーをもう少し取ろうということで、3食取る方が合理的、となったのではないかといわれています。

上柳:3食の方が、人間の体には合っているということですか?

柴田:それにはいろいろな研究があり、必ずしも3食がいいわけではないです。論文やレビュー誌によると「健康のためには、食事は1日に2~4食がいい」と書いてあることが多いです。

上柳:人によって違うということですね?

柴田:少食で1回の食べる量が少ない人は、どうしても足りないので、4食取った方がいいです。特に子どもやお年寄りになると、1回あたりの食べる量が少ないので、そういう方には間食が有効です。

■断食をするなら「夜」

上柳:例えば、タレントのタモリさんは1日2食で、朝はちゃんと食べて、昼はそこそこ食べる、夜はほとんど食べないそうです。

柴田:それはそれで、いい食べ方だと言われています。朝を主体に食べて、昼はちょっと遅めに食べて、夜は食べない。いわゆる「断食」の考えですね。

上柳:断食?

柴田:つまり、昼間の活動的なところで食事をして、夜は早めに終え、「絶食」を長く保つ。夜に長く絶食すると「オートファジー」が起こります。

上柳:オートファジーとは?

柴田:オートファジーとは、ノーベル医学生理学賞を受賞した日本人・大隅良典先生が唱えたことですが、「細胞をもう一回再活性化させる」「いらないものを捨てる」という仕組みのことをいいます。ただ、オートファジーが昼間に起こるのは、あまり良くない。

上柳:昼は活動的に動いていますからね。

柴田:ですから、夕方から夜、寝ている時に断食するのがいいです。「break fast」という言葉がありますよね?

上柳:「朝食」ですね。

柴田:「ブレイク=やぶる」「ファースト=絶食」なので、“絶食を破る最初の食事”が朝食ということです。だから、絶食をしていないと朝食になりません。

上柳:夜遅くまでダラダラ食べていたらダメなのですね。きっちりと食べない時間が何時間かあって、朝ご飯を食べるのがいいのですね。

柴田:そういうことです。

上柳:食事の中でも、やはり朝ごはんが一番大事なのですか?

柴田:そういうことになります。皆さん、忙しくて朝食を食べない方は多いと思いますが、いろいろな疫学調査や研究からも、朝食を抜くのはいい、と言っているものはほとんどありません。やはり、「朝はちゃんと食べましょう」ということです。我々は昼間に活動する生き物なので、やはりエネルギーの補給も大事だし、朝食で“朝ですよ”と体に教えるためにも大事なものです。

■「食を取らない時間」を作ることが体にいい理由

上柳:朝の7時に朝食を食べ、夜の7時に食べ終わり、残りの時間は「絶食」という状態にすることが、体に非常にいいそうですね。「食を取らない時間」を作ることは、なぜ体にいいのですか?

柴田:胃腸系は、寝ている時に休んで修復したいわけです。食べ物が入ってくると、胃や腸は傷がついたりするので。ですから、そういった断食をして「修復期間」をきちんと設け、できれば長く絶食する方がいいです。

上柳:なるほど。

柴田:また、絶食していると「オートファジー」が起こりやすくなり、いわゆる、細胞とかがもう一回活性化するような状況になります。

■「朝の光」「朝ごはん」の大切さ

上柳:柴田先生の著書『脂肪を落としたければ、食べる時間を変えなさい』(講談社+α新書)の中に、朝食の大切さについてかなり書かれていますね。

柴田:まず、我々の体は24時間よりちょっと長めなんです。

上柳:24時間より長い?

柴田:はい。ですので、24時間に合わせないと、どんどん遅れてしまうわけです。

上柳:人間にとって、24時間はちょっと長いと?

柴田:そうなんです。それを合わせる仕組みを、リセットと呼ぶのですが、方法が2つあります。(1)朝の光、(2)朝ごはん。(1)もよく言われていますが、朝に光をちゃんと浴びましょうということです。

上柳:自律神経の専門家の先生の本などを読むと、必ず「朝は光を浴びて起きてください」ということが書かれていますよね。やはり大事なんですね?

柴田:そして、(2)の朝ごはんは、肝臓とか膵臓といったエネルギー代謝に関係するような場所のリセットに関わります。朝ごはんを食べることで、肝臓や膵臓が“朝が来た!”と活動するわけです。

上柳:なるほど。

柴田:朝ごはんを抜いて、光だけを浴びた研究がありまして。実際にそういう方はいますよね? 朝起きたけど、時間がないから朝食を抜いて学校に行くような。

上柳:はい。

柴田:研究で、わざと朝ごはんを食べない日を作ってみたところ、体内時計が1.5時間ぐらい遅れてしまいました。これをどう解釈するかというと、朝起きてしっかり光を浴びたとしても、ご飯を食べないで学校へ行くと、2時間目にならないと起きた感じにならないのです。体が寝たまま、学校や会社に行っているということです。

朝食は「タンパク質」「炭水化物」がいい理由 “時間栄養学”から見た正しい食事とタイミングとは

■朝食は「タンパク質」「炭水化物」がおすすめ

上柳:朝におすすめの食べ物は何かありますか?

柴田:研究で、マウスにいろいろな種類の食事を与え、体内時計がどうなっているか見てみると、朝は「炭水化物」、いわゆるブドウ糖系がいいことが分かりました。

上柳:炭水化物ということは、広い意味では糖質ということでしょうか?

柴田:そう、糖質です。

上柳:糖質は体内に入って最終的にはブドウ糖に変わり、血液に吸収されますよね。

柴田:ただ、その研究によると、ブドウ糖が体内時計を合わせるのではなく、その時に出てくる「インスリン」なんです。

上柳:インスリンといえば、血糖値が上がるのを抑えるものですよね。

柴田:このインスリンの働きをうまく利用し、朝だということを伝えるんです。ところが、そのインスリンが出にくい人がいますよね?

上柳:例えば、糖尿病の方ですよね?

柴田:はい。じゃあ、その人たちはどうやって調整しているか? これも私たちの研究で分かったことですが、“インスリンによく似たもの”を出すことができるんですね。それが「タンパク質」です。

上柳:タンパク質が?

柴田:タンパク質を取ると“インスリンによく似たもの”が出てくるんです。だから普通に、朝食にご飯と納豆とか、ご飯と魚とかを食べればいいわけです。洋食でも、パンと牛乳とか、卵とか。ごく普通に皆さんが取っている食事で、私たちの体内時計は合わせられているんです。

上柳:普通のよくある朝食が、実はものすごく理にかなっていて、体にとって良いことだったのですね。

「何を食べるか」だけでなく、「いつ食べるか」や「食べない時間」にも注意すれば、体内時計が整ってパフォーマンスも向上する。とはいえ、生活習慣はすぐに直せないものだが、いつも朝は眠い、だるい、エンジンのかかりが遅くて悩んでいる人は、食事の時間を意識してみては。

日本時間栄養学会の会長・柴田重信さんと、上柳昌彦アナウンサーの詳しいトーク内容は、「食は生きる力今朝も元気にいただきます」特設コーナーHPから、いつでも聞くことが可能だ。

番組情報

食は生きる力 今朝も元気にいただきます

毎週月曜・金曜 5:25頃

番組HP

「上柳昌彦 あさぼらけ」内で放送中。“食”の重要性を再認識し、「食でつくる健康」を追求し、食が持つ意味を考え、人生を楽しむためのより良い「食べもの」や「食事」の在り方を毎月それらに関わるエキスパートの方をお招きしお話をお伺い致します。
食の研究会HP:https://food.fordays.jp/

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